ターナー展

昨日、新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館という長ったらしい美術館にターナー展を見に行った。

昨年から、気になっていた一連のテーマ、「19世紀の絵画」「風景画」の最後の仕上げ的な観覧になった。

春先には「ホキ美術館」を訪れ、精密画としての風景画を鑑賞した。
残念ながら、すごいと思うものの、それほどの感動はなかった。

ターナーの風景画は、中央にランドマークとなる建物が小さく描かれ、そこに向かって人や動物、自然の樹木などが配置されており、目の動線を意識したものとなっている。
その技法は、吉田博に影響されているといわれており、確かに以前みた彼の絵の技法に表れている。

風景画は、旅行案内的な意味合いも含んでいたようで、それとわかるものであり、どこともわからない風景を描くものではない。

作品は「水彩画」が多い。絵具は透明なものではなく顔料を含んでおり塗り重ねができるようだ。そのため「油彩」かと見間違うほどの重厚感があり驚かされる。

かれの作品には、詩の挿絵として銅版画なども数多くあり、その精緻さには驚かされる。
展示は、水彩とそれを版にしたものが併設されており、水彩画の雰囲気を損なうことなく版画にしているその技術に驚かされる。

正直、日本の画家が描く風景画が雑なものに感じてしまう。
彼の作品の精緻さを見ると、いかに細部にまでこだわっているのかを感じさせる。

帆船を主題にした絵も多く残されている。
有名なところでは「ミノタウルス号の難破」だろうか。

彼の生きた1800年前後は、フランスとの戦争の真っただ中でフランス革命、ナポレオンの台頭で、海洋での軍事的なぶつかりがあった時代だろう。
題材もドーバー海峡を背景にしたもの、戦艦を題材にしたものなど、海洋国家イギリスを象徴させる作品が多い。

歴史的には、ロマン主義といわれる作風の時代であり、印象派などにつながるはざかい期にあったのかと思う。

先日見た、ルーブル美術館展では、ルネサンス以前の宗教画からの画風の流れを感じたが、ターナーの絵画は、それとは異なり、おそらくはその時代の最先端の技法を模索していたのではないだろうか。

絵を見ただけで、「これはターナーの作品」とわかるように技術を磨き上げていたのかと思う。

秋口にはまたすぐれた作品を見る機会もあるだろう。
それまで少し休憩。

 

 

 

 

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