社会的責任としての雇用の継続

昨日、「経営品質協議会 会員月例研究会 2018年11月」として、藤本隆宏先生の講演を聴いてきた。

題目は「良い設計の良い流れとしての経営品質 強い現場と強い本社の成立を」ということで、経験が豊かな先生らしく多くの話が出ていた。

話は多岐にわたるのだが、その中で「現場の多面性」として
・産業との関わりでは付加価値の創出
・企業にとっては利益貢献
・地域にとっては雇用維持
ということを取り上げていた。

生産性向上を隠れ蓑にリストラを行えば社会的信用を失うという文脈になる。

そういった中で、最近の人員削減の記事は気になると同時に対照的な内容になっていると感じるものがあった。

○ ソフトランディングとしての人員削減

東芝、7千人削減へ 希望退職も、固定費を圧縮
https://www.sankei.com/economy/news/181108/ecn1811080013-n1.html

この数字だけ見ると、少しセンセーショナルに見えるが、企業規模からすると無理ではない数字かと思う。実際に記事の中にも以下のくだりがある。

人員削減は、8日午後に公表する中期経営計画に盛り込む。東芝のグループ従業員数は今年6月末時点で約13万2千人。今後は、毎年1千人前後の退職者が出る見通しとなっている。

仮に定年を60歳として、59歳の人員構成比率を1%と見ても、毎年千人程度自然減になるし、中途退職比率も、2%前後を見れば、この数字は無理のない数字になる。
新卒採用計画も東芝のニュースリリース
https://www.toshiba.co.jp/about/press/2018_03/pr_j2301.htm
でも2018年度に2000人程度であるので、これを半分程度に抑えることで目標は達成されるだろう。

人材の投入場所の工夫は必要だが通常の人材マネジメントの戦略の範囲であり、特段にニュースにするものでもないだろう。

○ 誤解を招きそうな富士通の削減

以前、取り上げたことがあるが、富士通の下記のニュースは気になる。

富士通、事務部門スリムに 5千人異動、営業などに転換
https://www.asahi.com/articles/ASLBV4FXBLBVULFA01Q.html

経験的には、専門能力の必要な部門配置は再教育が必要になり、教育コストが馬鹿にならないことが多い。
例えば、総務を製造現場に配置換えする、経理を研究開発の部門にというのは無理がある。
経験のないものをシステム部門に配置させて自殺者を出した例もきく。

同じIT技術者でも、レガシー技術者をオープン系に配置換えできないのでリストラすることもあった。

さて、上記の記事は、退職の話ではなく再配置の問題だ。
純粋に再配置ならば良いのだが、適性を無視して再配置して、結果として「辞めてくれれば御の字」と言った発想であれば、かつての「追い出し部屋」と変わらない。

社会的責任としての「雇用の維持」どころではない。
犯罪行為になりかねないので注意が必要だ。

何年かたって、配置換えされた人たちに訴訟されないか気にしておこう。

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