事例研究:キューピーの事業リスク 【サプライチェーンまでリスクに入れられるか】

キユーピー、缶詰ソース販売終了 西日本豪雨で缶製造できず

https://mainichi.jp/articles/20190109/k00/00m/020/153000c

と言う記事を見た。下記の内容になる。

キユーピーは9日、昨年7月の西日本豪雨の被災により、缶が製造できなくなったとして販売を休止していた「ミートソース」など缶詰ソース5品目の販売を終了すると発表した。缶の製造を委託している資材メーカーの復旧の見込みが立たないことや缶詰市場が縮小傾向にあることを考慮し、販売終了を決めたという。

缶詰の缶などどこでも同じだろうと思ったら、そうでもないらしい。

さて、まずはいろいろ確認。

(1)販売終了は特別なのか

キューピーのホームページでは製造・販売の終了のお知らせを掲載している。これによれば、2019年春には25品目の製造・販売を終了している。

この中に上記の製品が含まれているが、必ずしも特別なことではなく、いろいろな理由で商品見直しを行っているのだろう。

これ自体は特別なことではないだろう。ただし、製品の終了を知らせているサイトは珍しい気がする。

上記で「缶の製造を委託している資材メーカーの復旧の見込みが立たないことや缶詰市場が縮小傾向にあることを考慮」とあるように、どうしても出し続けたい製品であればなんとかするであろうから、あえて新しい委託先を見つけるには値しないと判断したと考えるべきだろう。

その意味で、大きく取り上げるべき内容ではない。

(2)ビジネスパートナーはどう考えるべきだろう

ただし上記にある「缶詰市場が縮小傾向」についてはもう少し考えておく必要があるだろう。

製缶を生業としている事業者にとってはあまりうれしいニュースではない。

特に、キューピーから製造委託を受けている企業にとっては死活問題であり、復興の望みを絶たれたに等しい。そのほかの企業にとっても対岸の火事ではない。

現在、「特殊な缶」で事業を進めていたとしても、缶詰の需要が減って行くなら事業縮小は余儀なくさせられる。

保存という面で見ても、紙などの素材でも十分な機能を実現できている。代替製品も数多く出てくるだろう。環境問題の面から、資源を多く使う缶詰は逆風が吹くかもしれない。

新しいニーズを探るか、金属としての缶詰でなければいけない(堅くて変形しにくい)特性を前面に出し、新しい使い方を提案しなければならなくなる。

(3)具体的なリスク対応を考えられるだろうか

さて、リスクに対しては重要であること、対応することを求める規範は多い。

例えば、「日本経営品質賞 アセスメント基準書」では以下のような記述がある。

(戦略計画)

事業に関するリスクをどのように組織全体の戦略計画に反映させていますか。以下の点を考慮して示してください。

・リスク要因の把握方法

・想定したリスクへの対応方法

また、ISO9001:2015では、以下の要求事項になっている。

6 計画

6.1 リスク及び機会への取り組み

品質マネジメントシステムの計画を策定するとき、組織は「4.1 組織及びその状況の理解」に規定する課題及び「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」に規定する要求事項を考慮し、次の事項のために取り組む必要のあるリスク及び機会を決定しなければならない。

a)品質マネジメントシステムが、その意図した結果を達成できるという確信を与える

b)望ましい影響を増大する

c)望ましくない影響を防止又は低減する

d)改善を達成する

当然、企業もこうした要求があるかどうかは関係なく配慮している。

たとえば、キューピーなどでも、事業リスクとして以下の記載がある。

(4) 事業展開地域の災害や疾病など社会的混乱

当社グループは日本国内や、中国・米国・東南アジアなどの海外においても事業展開を進めていますが、次のような災害や疾病など、想定を上回る社会的な混乱が発生し、製造や物流設備などの破損、原資材やエネルギーの調達困難、操業に必要な人員の確保困難、などが生じた場合には、生産・販売能力の低下につながり、当社グループの業績および財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

  • 大型地震や集中豪雨などの大規模な自然災害
  • 強毒型の感染性疾病の大流行
  • 継続的な広範囲における停電など、自然災害を起因としない大規模な事故
  • テロや紛争など政治的問題

明確に「製造や物流設備などの破損、原資材やエネルギーの調達困難」と記載がある。

しかし、昨年7月の西日本豪雨の直後に、缶詰製品の出荷ができなかったことや製品終了の発表までに半年程度かかっていることを考えると、必ずしも個別事業所のリスクを考えて、代替手段を考えるところまで入っていないのだろう。

リスクを抽象的に捉えることはどの会社でもできるだろう。しかし、具体的にリスクを数値化していなければその対応もできない。リスクの数値化とは、例えば「調達先の提供能力を、50%になったとき、0%まで落ちたときなどの生産数量などへの影響」と言った視点で考えることだ。

例えば、同じ事業リスクには下記の記載がある。

(1)サラダ調味料の市場動向など

キユーピーグループにとって、サラダ調味料(マヨネーズやドレッシング)は売上高・利益の両面において貢献度が最も高い商品カテゴリーになります。

従って、サラダ調味料の需要減退などにより市場が縮小した場合、また市場競争の結果として当社製品の市場占有率が大きく下落した場合には、当・・・

したがって、市場でのサラダ調味料の需要の監視、市場占有率の計測が前提となり、これがスコアカードとしてみるべきだろう。

はたしてそこまでの検討はしているのだろうか。

今までの経験ではリスクの数値化まで具体化している例は見たことがない。

もっとも、自社の詳細な業務プロセスを公開するようなものだ。他人に見せるものではないのは当たり前か。

 

(追記)

上記のベースとした資料を含めたものを参考資料として提供します。

一般に公開されている資料になりますが著作権などについては配慮をお願いいたします。

➡ リスクの認識の仕方

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