労働法入門

◇ 水町勇一郎「労働法入門」新版 岩波新書

本屋に行く楽しみの一つとして出会いがある。
棚を眺めながら、その時々に関心のあることを理解するための本を見つけることがある。

「労働法入門」もそのうちの一つだ。

直接の関心ごとは「育休後の転勤問題は適法なのか」という、某化学系の会社カ●カの話題だ。専門家ではないので正解かどうかはわからないが、転勤が何かしらの従業員に対しての負担になるのであれば、
①従業員との間での契約上の合意事項はあるのか
②事前に十分な合意形成があったのか
③手続きとして適正か
ということが問題になるだろうということは想像できる。

上記の、カ●カの対応は記事を見る限り「アウト!」に近い気がする。

さて、こうしたことは法律上どうだったのだろうかと想い読んでみた。
結論から言えば、よくわからない。最終的には裁判所に行った方がよさそうだという身もふたもない結論だ。

それでも、多くの示唆に富んだ内容だったので、マネジメントにかかわるは目を通しておいて損はない

この本の出だしは、「旅行が趣味で長期旅行を計画していたが直前になって、業務が佳境なので休暇の中止を言われた社員」と「仕事が生きがいなのにプロジェクトが中止になり自宅待機を命じられた社員」を題材に「働くとは何か」「それは法律上どうなのか」といった問題意識から、いろいろな国での考え方を交えて描かれている。

法律上は、労働基準法、労働契約法、労働組合法を中心に書かれており、それぞれ労働者の定義が異なることを示しており、それぞれ働くことに対しての保護の在り方が異なることを知った。

専門書ではないので、全体の俯瞰ができる程度ではあるが、それでもいろいろな判例が示されており、いくつかの疑問に答えてくれる。

印象的であったのは、最後の章では「労働紛争」について取り上げていることだ。
・労働法があるにもかかわらず、実際の職場では、労働の強制やハラスメントなど見逃すことができない多くの事柄が起きている
・こうした紛争解決には様々な相談窓口(最終的には裁判所)があるが、欧米に比べて日本ではほとんど活用されていない
・長期雇用などや家族主義などの文化感が背景にあり紛争を好まない心理的なものもあるかもしれない
・しかし、こうしたことを放置することは、他の人へのハラスメントなどにも目をつむることになり、個々人の自由を脅かし、会社にとっても社会にとっても好ましくない
としている。

詳細は、本書にゆだねるが、思いのほか読みやすかった。
上記の背景には、「無知」も含まれている。
マネジメントにかかる人には読んでほしい。

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