ダイソンのEV撤退でみる「I have a dream」はそう簡単ではないと言う事実

ダイソンがEVから撤退せざるをえなかった理由 テスラが築いた「高くて構わない」はもう飽和(https://toyokeizai.net/articles/-/309908)

と言う記事は、その2週間ほど前に出た下記の記事に対する評価だろう。

英ダイソン、EV開発を中止 採算のメド立たず
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50874780R11C19A0000000/
2019/10/11 4:34

この記事の中で、

採算が取れる見通しが立たないと判断し、取締役会で事業の終了を決めた。家電で培ったモーターや電池などの技術を生かし、2021年の発売を目標に独自のEV開発を進めてきたが、撤退に追い込まれた。

と記載があり、財務的な問題がうかがえる。

最初に取り上げた記事は

創業者のジェームズ・ダイソン氏はEV開発プロジェクトで開発中の車両がすばらしいものであったことを強調するが、現実的に事業の採算見通しが立たず、事業の売却にも買い手がつかなかったという。

しかし、その話は矛盾する。すばらしい製品だが採算が合わず、かつ事業の引き受け手もいないという条件は不自然である。

おそらく、ダイソンはEVのマーケット構造変化についていけなかったものと考えられる。

で始まり、うまくいかなかった背景をEVの販売戦略をからめテスラの成功要因などを解説している。

この記事自体に間違いがあるかどうかはともかく、資金調達をはじめとした財務戦略が間に合わなかったことはマーケティン戦略が間違っていいることを示しているわけではなく,戦略の組合わせの問題だろう。

以前に、戦略に正解も不正解もなく,単に選択があるだけで、成功するも失敗するもこれを実施する環境に左右されるので、もしうまく行かなければ再度戦略の選択を変えればすむ話だ。

ダイソンの記事として注目してほしいものに以下の記事がある。

ダイソンが見たEV大競争 2018年1月12日(金)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/15/special/010900887/

この中で、とトップインタビューとして「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する」を表題に以下のように語っている。

ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい。

英国の大学キングス・カレッジ・ロンドンによると、大気汚染を理由に命を落とす人は、ロンドン市内だけで毎年9500人近くに上ります。世界で見ると犠牲者の数はさらに増え、世界保健機関(WHO)は、2012年に世界中で約700万人が死亡したと報告しました。大気汚染は、今では世界最大の環境リスクと言って過言ではありません。ここに解決策を示すことが、今のダイソンの使命だと考えています。

会社として何をすべきかの明確な未来像があり、おそらくこれに賛同しない人はいないだろうと思う。

魅力的であり、今の技術課題のいくつかを解決すれば実現可能であり、関係者を鼓舞することができる。ムーンショットとしても優れていると評価できる。

一方で、今回のEV撤退の報道は、ロードマップを描けても経済的な問題で実現することが難しいことを示している。
障害となるのは経済的な問題だけではない。技術的な問題や規制などの政治的な問題などもある。

しかし、だからといって「目指すべき世界観」を捨てても良い理由にはならない。
いつかまた、ダイソン氏が理想を実現するために再参入してくれることを期待したい。

経済的な問題しか興味のない彼らに負けてほしくない。

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