戦略人事の課題:AI技術活用の可能性(アイデアを出すべき存在としての人事部門の資質)


■受け身の姿勢になっていないか

昨年あるいは一昨年あたりから「DX(デジタルトランスフォーム)」が話題になっている。平たく云えば、「人の手で行なうことが非効率であり、それをデジタル技術で改善できるならそうしよう」という考え方である。

人の手で行なうことが全て悪ではなく、「本来その人がすべきことが非効率性のためにできないと云うことを解決する」ことが目的である。

したがって、「その人がすべきことはなにか」「阻害されている非効率性のある仕事は何か」を明らかにしなければならない。それは現場の人間にしかできない。システム部門はそれを手助けするだけである。

にもかかわらず、システム部門が何かしてくれると勘違いしていないだろうか。

■人事部門の妄想

採用やそれに伴う面接、教育研修や評価と昇給昇格の判断、制度設計などをAIが自動でやってくれないだろうかというのは気持ちは分かる。実際に選考の一部をAIで補助するなどの取り組みは起こっているし、出退勤・出社後の動線管理などもIT技術の活用は進んでいる。

しかし、何を解決しなければならないのか、それのための手段は適切なのかといった、責任ある行動にAIは利用できない。なぜならばAIはアウトプットの中身にまで善悪の判断はしないからだ。

したがって、「AIが自分の判断を伴う仕事までやってほしい」というのは妄想だ。採用にしても最終的な責任は選んだあなたにある。

■支援システムの色々

●ChatGTP
自社にカスタマイズした「ChatGTP」は可能である。すでにSierがクラウド上に展開するサービスを用意している。商品の紹介ではないが参考までにサイトを示す。

○Watsonとは
IBM Watsonは、ビジネスでの活用に特化したAIサービスの製品群です。顧客サービスのセルフサービス化、コンタクトセンターのオペレーター支援、知識労働者のためのナレッジ検索効率化など、言語でのやりとりが大量に発生する業務で活用されています。AIと自動化によってより良い意思決定を行い、迅速に成果につなげることで、個人やチームの生産性を新たなレベルに引き上げます。
https://www.ibm.com/jp-ja/watson

○Azure OpenAI Service とは
Azure OpenAI Service は、GPT-4、GPT-3.5-Turbo、埋め込みモデル シリーズなど OpenAI の強力な言語モデルに、REST API でのアクセスを提供します。 また、新しい GPT-4 と GPT-3.5-Turbo モデルシリーズは一般提供になりました。 これらのモデルは、特定のタスクに合わせて簡単に調整できます。たとえば、コンテンツの生成、まとめ、セマンティック検索、自然言語からコードへの翻訳などです。 ユーザーは、REST API、Python SDK、または Azure OpenAI Studio の Web ベースのインターフェイスを介してサービスにアクセスできます。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/ai-services/openai/overview

●チャットポッド

チャットボット(Chatbot)とは、チャット(会話)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、ユーザーからの質問に自動で返答してくれるプログラム(自動会話プログラム)のことを指します。 チャットボットをビジネスに利用することで、これまで人間が対応するしかなかったお問い合わせ対応やカスタマーサポートを自動化できます。
https://ds-b.jp/media/what-is-chatbot/

もっともチャットポッドという名前の製品はなく、また歴史的にも進化を遂げているなど簡単にまとめることはできない。それでも、人間ではない何かに答えさせるというのは1990年代からあり、その流れの中にChatGTPもある。

自動案内というコンセプトでは今後も深化し続けるであろう。この分野の製品群も多く、試しに検索してもらいたい。

(参考)
WordPress対応のチャットボットのプラグイン4選|導入時の注意点も解説
https://www.satfaq.jp/column/introduction/7601

●サイト内検索システム

さて、情報の活用と言う側面で見るいくつかのフェーズが考えられる。

まずは自分はどんな情報を持っているのだろうか。あるいは自社のアーカイブ(書庫)にはどんな情報が眠っているのだろうか。こうしたことに応えるために「全文検索システム」が提供されている。かつては「NAMAZU」などが有名で、イントラネットに実装されている会社もあるかもしれない。

自社のデータベースとの連携が必要なためにやはり専門知識が必要になる。これに対し、現在私自身が注目しているのが、サイト内検索システムの進化である。私自身のサイトはワードプレスで作成しているが、まだキーワード検索であり、検索対象もテキストベースの投稿になる。

これが対象をPDFに拡大する無料のプラグインがある。

(参考)
WordPressのPDF内全文テキスト検索する仕組み
https://wp-customize.net/wordpress/7758.html

■創造的な仕事への期待

事務的な仕事の支援を先に解決されて行くだろう。それは、単に検索から、困り事かを解決する為の案内に拡張されて行く。それはまずは「人の判断業務」を支援する為のメカニズムが実装されることになり、すでにはじまっている。

その先は、個人がいくら考えても応えが見つからない業務にまで拡張されるかもしれない。しかし、そのためには「学習データ」が必要である。学習のためには、そのコンテンツの5W1Hがセットにならなければならない。

何を作ったかだけでは十分ではない。
「なぜそれを作ると判断したのか」
「何を解決したいと思ったのか」
「それを感が出したときの制約条件は何か」
「代替案には何があったのか」

プロセス情報をセットにしなければ学習のしようが無い。
こうした意識で施策を見ることが求められる。

人事部門の人間自身が学習をしなければAIでは助けようがない。

さて、どうだろう。
自問して欲しい。

それを怠って「AI君お願いね」は無理である。

(2023/12/08)