未来への手がかり:規制緩和の先にあるもの(白タクの合法化)


発想を変えよ。
白タクを違法とせず合法となるように管理する。

■世界観を作る

企業の中で施策の展開をする際には、それが指し示すものは何かという文脈、そしてそれが描く世界観がないと、社員の共感が得られず、場合に寄っては施策の執行が阻害されかねない。
政府の施策についても同様に世界観がないと共感は得られない。

現在、ライドシェアが2024年問題とともに俎上に登る。もちろん何を解決するかは短期・長期の狙いはあるだろうが、その道筋は同一線上になければならない。

現在、通信技術が発達しデジタル化が進み、自動車の自動運転も進んでいる。車のアシスト機能としては、すでにカーナビ、ドライブレコーダー、インサイトのような衝突防止、タクシー車内の防犯用のカメラなどはコモディティ商品として普及している。

こうした、「誰でも」という視線の先には「免許」のいらない世界があり、そこでは「運搬」という仕事に対する門戸を広げるという可能性がある。すでにカーシェアは市場として活況かどうかはともかく一定のサービスが確立されている。ドライブシェアと組み合わせると新たなサービスも作れるかもしれない。

そこには、「運転できる」が重要であって「二種免許を保有する」は重要ではない世界があるかもしれない、そうした世界観が必要である。

しかし、目先のことに終始していると、こ施策の目的を見失うことになる。

■業界優先の弊害

世界観が不全であると、目的(2024年問題への対応)が、いつの間にか手段(ライドシェア)に取って代わられ、不完全な施策に展開される。

○「ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗
2023年12月20日

一般ドライバーが有償で顧客を送迎する「ライドシェア」が2024年4月に条件付きで利用できるようになる。タクシー会社が運行管理し、車両不足が深刻な地域や時間帯に絞って限定解禁する。

新たなサービスはタクシー配車アプリの対応車両が70%を超える都市部や観光地が対象となる見込みだ。運賃はタクシーと同じとし、需給に応じて料金が変動する「ダイナミックプライシング」は採用しない。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA18C7U0Y3A211C2000000/

時間帯を限り、運賃もタクシーと同じであり、管理をタクシー会社が行なうと言うフレームにどんな意味があるのだろうか?

時間を拘束されたくない一般の人々が、自分でコントロールできない環境下で、しかも大して収入も見込めない仕事に参入するとは思えない。仮に浸透したとしても、既存の市場を奪うだけである。ウーバーイーツが新たに「出前」というサービスを拡充させたのとはわけがちがう。

そもそも、タクシーなどの運転手不足は、労働環境の未整備、賃金の安さが背景にあると考えている。もしそうであれば、上記の施策で人が集まるぐらいなら、もともとの運転手不足は発生しないだろう。貧困にあえぐ労働者を増やすだけである。

■モグラたたきになる「白タク」問題

「ダイナミックプライシング」は採用しないという。しかし需要と供給の中で運賃が決まるダイナミズムは競争原理が働く。また、ライドシェアの運転手が、複数の乗車希望者からルートを提示して「相乗り」を認めれば、交通問題のいくつかは解決できる。

問題は「白タク」自体ではなく、不明瞭な運賃、事故時の保証、など管理できない状況が問題である。これはIT技術でどうにでもなる。それに目をつむり白タクの摘発に精を出してもモグラたたきになりかねない。

○白タク行為、仲介事業者を本格取り締まり 規制改革会議が方針
2023/12/26

 政府の規制改革推進会議は26日、中間答申を取りまとめた。タクシーやバスなど客を運ぶ車の運転に必要な「2種免許」を持たず有償で客を乗せるいわゆる「白タク」行為について、仲介を担うアプリ事業者に対して初めて本格的な取り締まりに乗り出す方針を示した。違法な仲介行為をやめるよう行政指導をするほか、より悪質な場合は、新たな法制度での対応を検討していく。

https://mainichi.jp/articles/20231226/k00/00m/010/256000c

■健全な「白タク」の育成

規制緩和が進んでいると聞く。

政府は2023年12月タクシー運転手の不足を補うための規制緩和策を固めました。新たなライドシェア制度は、タクシー不足の解決策として、普通免許のドライバーが自家用車で有償運送を行うことを可能にします。この制度は、第3回デジタル行財政改革会議で中間とりまとめ案として承認されました。
https://expact.jp/taxi-rideshare/

2種の免許がなくとも有償運送ができる構図は「ウーバーイーツ」と同じである。従って、配慮しなけばならないのは、「労働者」としての彼らの権利と、乗客の安全、税金の徴収である。

政府にとっては「税金」が問題になるだろう。これは、ウーバーのように配車アプリを必須として、それ以外は違法サイトを取り締まることになる。

これは今の構図と変わらない。

○白タク容疑で中国籍の男を逮捕 「友達」と説明、客は「知らない」
2023年12月14日

 男のスマートフォンを解析したところ、中国版LINE「微信」(ウィーチャット)で中国の旅行会社とやりとりした履歴が残っていた。旅行会社経由で報酬が支払われていたといい、男は「昨年末から半年間で100万円くらい稼いだ」と話しているという。

https://www.asahi.com/articles/ASRDG4CM9RDGUTIL00L.html

また、旅行仲介サイトも見張らなければならないだろう。

○アゴダ、「白タク」配車斡旋を事実上認める
2023年12月27日

アゴダは、これまでに「白タク」の配車斡旋の事実を認めた外資系オンライン旅行会社(OTA)と同様に、旅行プラットフォームであることを強調した上で、「最近、一部の提携会社を通じて提供されている日本の空港送迎サービスが、公共交通機関として認可されていない「白タク」と呼ばれるサービスを提供している可能性があることがわかりました。(中略)私たちの提携会社は運行業者が必要な許認可および資格証明書を持っていることを厳しく確認しており、遵守していないことが判明した運行業者はすでに削除しています」とコメントした。

https://www.traicy.com/posts/20231227286683/

結局のところ「ウーバー」が最適解になる気がする。
この仕組みであれば管理された状態での運送なので、タクシー業界が云う安全性への懸念はなくなるだろう。

早く免許のない人でも参入できるようにして欲しい。
日本の政策の執行の遅さにびっくりすると同時にグランドデザインの不備を憂う。
業界保護だけを見据えていては何も変わらない。

(2023/12/30)