■今を変えようとしない人々
目の前の問題を解決するために、今のビジネススキームを変えようとせずに立ち向かっても解決が難しい問題もある。
たとえばバスの運転手不足を2024年問題に帰着させようとすると人手不足だけが焦点化される。それは本当なのだろうか。
○宮城交通の路線バス 減便や一部路線廃止へ
2024年02月07日
仙台市に本社があるバス会社「宮城交通」は、収支の悪化とドライバー不足で、4月から一部の路線で減便することになりました。
宮城交通の路線バスは、利用者が新型コロナウイルスの流行前の8割にとどまり、今年度は5億5千万円の赤字を見込んでいるほか、ことし4月以降はバスドライバーの労働時間が規制されるいわゆる「2024年問題」の対応でドライバー不足も深刻な問題となっています。
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20240207/6000026528.html
表面的には「ドライバー不足」というが、別に視点で見ると
・需要(バス利用者)と供給(運行本数)がバランスがとれていない。
わかりやすく云えば、「空気」を運んでいることが多い。
・残業時間を前提とした労務管理をしている
当たり前の勤務時間で食べてゆけない賃金体系を強いている可能性もある。
・効率化を進めていない
例えば、厳禁支払いを廃止し、全てIC系で統一する、あるいは半自動運転で専門技能者でなくとも運行できるようにしていない。
などが挙げられるだろう。
こうした取り組みをしていなければ下記の様な表層的な問題だけが浮かび上がってくる。
○利用者困惑…路線バスが完全「日曜運休」 必要な運転手99人に対し現状74人 立ちはだかる“2024年問題”
2024年1月29日
長野営業所で必要な運転手は99人だが、今は74人。貸し切りや高速バスの運転手も充てているものの、外国人客が増える冬場は対応しきれず、日曜運休を決めた。
https://www.fnn.jp/articles/NBS/648010
○「部活に行くのに困る」長野市の一部路線バス日曜運休21日から 背景に深刻な運転士不足 バス会社が市議会に窮状訴え【長野】
2024/01/19
「日曜日に運休になっちゃうと学校に行くのにちょっと困るなあって/班(部)活とかで行く時があるので、使えないと(親に)車で送ってもらうしかなくなるので困るなあって」
https://nordot.app/1121019138884846510
■低賃金という問題は一つの側面ではあるが全てではない
少子高齢化は20年以上前から予測されており、現在騒がれている諸々のことはいわでもがなである。何を今更という感が抜けない。
○2030年の人手不足、9県で約50万人の深刻な予測 九州経済白書
2024年1月28日
九州・山口・沖縄9県で2030年、約50万人の労働力不足に――。民間シンクタンクの九州経済調査協会(九経調)は、26日に公表した2024年版の九州経済白書で、深刻な人手不足の加速を予測する推計結果を明らかにした。
職業別では、商品販売5万1千人▽ドライバー(輸送・機械運転・運搬)4万7千人▽建設3万1千人▽保健医療専門職3万人と続くと試算された。
https://www.asahi.com/articles/ASS1X4S98S1TULFA02L.html
これに拍車を変えるのが労働時間を規制する2024年問題だと云うが、これは間違っている。
根本は、「残業しなければ生活できない」ほどの低賃金で働かせる企業側の姿勢である。
○全国地方鉄道の半数が「運転士不足」、低賃金など背景に 国交省調査
2024年2月2日
地方鉄道140事業者のうち、運転士が不足している事業者が半数の70事業者に上ることが、国土交通省の調査でわかった。背景にあるのは不規則な働き方や低賃金とされる。同省は2日、全国の鉄道事業者らを集め、初めての緊急対策会議を開いた。
全国の地方鉄道では運転士不足による減便が相次いでおり、鉄道各社は待遇改善やベースアップなどに力を入れている。
https://www.asahi.com/articles/ASS2252KZS22UTIL00Z.html
これが無理だと感じている政府は安い「外国人労働者」に頼ろうとする。
そうした文脈で下記の記事を見ると、別の評価もできよう。
○深刻化する運転士不足 外国人労働者の特定技能、4分野の追加を検討
2024年1月27日
政府が、人手不足の分野で外国人労働者を受け入れる在留資格「特定技能」の対象に、自動車運送業や鉄道、林業、木材産業の4分野を加えることを検討していることがわかった。
https://www.asahi.com/articles/ASS1W5HVTS1VOXIE04K.html
○特定技能対象に4分野追加を検討 自動車運送、鉄道や林業
2024/01/28
政府が、外国人労働者を中長期的に受け入れる特定技能制度の対象に、自動車運送、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加する方向で検討していることが28日、関係者への取材で分かった。「即戦力人材」として最長5年滞在できる特定技能1号の対象分野が、現在の12分野から16分野になる。2019年の制度創設以来、追加は初めて。本年度内の決定を視野に関係省庁が協議する。
https://nordot.app/1124240233065152798
しかし、彼らを搾取するという外国人への処遇を改善しない限り彼らからも見捨てられるだろう。
○外国人だから妊娠しちゃダメ?…技能実習生への避妊勧奨問題 登録支援機関の関係者は「日本人と同じ対応を」
2024/02/05
外国人技能実習生らが国内外の関係機関から妊娠しないよう指導されていた問題で、鹿児島県内の関係者は、「日本人の労働者と同じ対応をすべきだ」と、人権保護を訴える。
https://373news.com/_news/storyid/189641/
■ダイナミックプライスは愚策か
こうしたゆがんだ状況を放置すべきではない。
それは、組織の不善を助長しかねない。
○荷待ち削減計画の策定義務化、下請け管理簿作成も…トラック運転手の長時間労働・低賃金を改善
2024/01/31
トラック運転手の人手不足で輸送力の低下が懸念される物流の「2024年問題」に対応するため、政府が検討する物流関連2法の改正案の概要が30日わかった。積み下ろしの順番を待つ荷待ちを減らす具体的な計画の策定を荷主に義務づける。多重下請け構造を可視化し、低賃金を改善させる。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240130-OYT1T50211
しかしどうすれば良いのか。
問題の前提条件を疑い、それを変えてゆくというアプローチは色々考えられる。
(1)ダイナミックプライス
ビジネスホテルを利用している人であればダイレクトに影響を受けるのが、このダイナミックプライスだ。わかりやすく云えば、お客さんがたくさんいる時期は高くして、いない時期は安くすると云うものだ。記憶ではアパホテルが始めたと記憶しているが今ではどのホテルでも採用している。
バス会社も営利会社であるなら、運行時間毎に料金を変えてはどうか。
現在の料金を基準に、お客が多い時間帯は1.5倍に、以内時間帯は0.5程度に抑えることにより、混雑の緩和や利用時間帯の拡充につながるかもしれない。
(2)ITによるワンオペの負担軽減
現金は使わないようにさせる。すべてICTカードで済ませる。車内にチャージの機械を置いても良い。現金を扱わないことで乗降がスムーズにゆき運転手の負担を減らすことができるかもしれない。
(3)連結型小型バスの開発
今のバスよりも一廻り小さいバスで連結型の車両を開発する。乗客が多いときには連結し、少ないときには単独で運行する。乗降をICカードで管理すればワンマンでの運行管理も可能であろう。後ろの車両で無人で乗降できるようにすれば良い。もっとも3連は操作が難しいか?
(4)LRTとの連結
ハブアンドポークスと言った理念で運行ルートを効率化する。長距離運行はLRT、ルートが決まっている箇所については軌道を使った自動運転、形状が複雑な箇所については従来型バスなど、トラフィックミックスを考える。
こうしたことに対して反論をして欲しい。
ただし、できない理由を探すのは辞めて欲しい。
そんなことは幼稚園児でもできる。
もし実現しようとすればどのようなブレークスルーが必要なのか?
それを示さずに反論するのは無責任である。
幼稚で無責任な発言は何も生まない。
あっ、今の政治家がそうだとは云っていないよ。念のため。
(2024/02/10)