戦略人事:雑感・20240227(ブラザー工業 「役割等級制度」)


■アウトソース

人事に関して戦略的であれという背景には、既存の人事部の仕事がオペレーションに力点が置かれ、その業務にマンパワーが割かれるからである。これを解消する手段としてDXやAIなどが活用されるべき、テレビなどでも盛んに商品の宣伝がされている。
しかし、こうした人事の仕事(採用、教育、配置、評価)、それにまつわる給与の計算、福利厚生、法令への対応は専門家に任せることも可能であり、実際にそうしているだろう。であれば、こうしたことをアウトソースを考えるべきであろう。実際、採用はヘッドハンティングの会社や採用を代行する企業もあるし、福利厚生を管理する会社、教育研修の専門の会社がある。単に業務を発注するのではなく、自社の課題を共有して価値を提供する会社をビジネスパートナーとして取り込むことで人事部門が戦略策定に割ける時間が増える。
もし、自部門のプライドだけでアウトソースをしない理由を探しているのであれば、その人事部門は解体した方が良い。

■先義後利

人事部門は誰の為の部門であるのか。こうしたことを議論していないのではないか。
経済記事などで見る多くの記事、特に昨年話題となった「ジョブ型雇用」などは働くヒトの都合ではなく企業側の都合の人事制度である。
ハイテック企業のリストラなども企業の都合での働くヒトの取捨選択である。
人事部は、企業の都合だけを優先し、それに合わせた人事制度を考えれば良い存在なのだろうか。
人間は部品ではない。
人事部門が、働く人に寄り添わないとしたらそこから得られる利益には彼らからの賞賛は含まれない。もしそれが大事だというならば、まずは「働くヒト」のための人事戦略を考えるべきである。報酬はその後に来る。
単に「仕事」をして「給料」をもらう存在であるならば、それは他の人でもできる。
あなた整理解雇の対象となり得ることを理解しよう。

■全体最適

経営活動とは何かと問われれば、「経営資源の再生産と極大化」と答えるようにしている。ここでいう経営資源とは「ヒト・モノ・カネ」を基軸として「知的財産・信用・情報システムなどのインフラ」などを指す。人事部門は、そのうち「ヒト」を中心に施策を展開する。しかし、ヒトはそこにいれば良い存在ではない。経営資源全体の最適化の中で考えなければならない。
それを忘れてはいないだろうか。
AIの時代、DX化の時代と言われる中で業務プロセスが大きく変わることが想定される。その時には今までのない職種が発生する。そうしたことを想定して人の採用を考えているだろうか。単に部門の不足分を補うことをタスクとしていないだろうか。
昨今の不正事件の根底には、自覚と云うことも一つの要因にある。新人教育は入社時に一回すれば良いと思っていないだろうか。何を目指した教育なのか、それはどの程度・頻度で行なえば効果的なのか。こうしたことを配慮せずに決まりだからといって処理していないだろうか。
一つ一つの施策は全体の中での意味づけがある。それを忘れてはならない。

■時代遅れ

VUCAの時代にふさわしく、企業を取り巻く環境は激変して、事業の再編は日常茶飯事になっている。これに伴いリストラも常態化し、人材の流動化が前提となっている。もちろん全ての企業がそうでないにしても、それに備えなければならない。

人事部門もそれにふさわしい制度設計が求められる。その時に旧態依然とした考え方に囚われていれば時代に対応でき無い。

○ブラザー工業 「役割等級制度」を導入 年功序列から”脱皮” 従業員の自律と挑戦促す
2024/02/24

ブラザー工業(本社名古屋市)は、役割に応じて賃金を支払う「役割等級制度」を導入する。経験年数が上がると賃金も上がる年功序列の給与体系から”脱皮”し、従業員の成果や貢献に報いることを目指す。2023年4月から新制度に基づき、成果などを評価。今年4月から、評価に基づき賃金に全面的反映する。従業員の自律と挑戦を促し、企業の競争力向上につなげる。

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既存社員だけであればこれで良いだろう。しかし、事業再編に伴う人の異動を前提とすると旧式の人事制度をいくら組み替えようが十分とは思えない。

新たな発想が求められる。

閑話休題