世間に転がる意味不明:「今時の若者は」といつもいわれにない非難をされる(3年内離職率は変わらない)


■今時の若者と言う言葉の虚妄

○なぜ、すぐに「辞めます!」という新入社員が増えているのか
2024年04月12日

いつの時代も新入社員は「こんなはずじゃなかった!」「こんなの聞いてないよ!」と入社早々衝撃を受けてきました。これは「リアリティショック」と呼ばれる現象で、「組織に実際に所属する前の自分の期待」と「現実に経験したことのギャップ」から生じています。

そして今、転職の切符が手に入りやすくなった上に、退職代行サービスという業種が誕生したことで、会社を辞めるハードルが下がり、辞めるまでの期間も短縮しました。心が悲鳴を上げる前に「ストレスを感じる場所から逃げる」対処が可能になったわけです。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2404/12/news022.html

○退職代行を頼る新卒社員 入社後すぐ辞める若手のリアルな声
2024年04月13日

 注目すべきは今年2位と昨年4位だ。順位が入れ替わっており、谷本氏は「『事前の会社説明で言われていた内容と実態が違った』という理由が昨年より多く挙げられている印象があります」と指摘する。

新入社員による入社直後の退職について、谷本氏は今後さらに増加すると予想している。大きな要因の1つがSNSだ。SNSが普及したことで、自身の仕事の不満や愚痴に対する、他人からのリアクションを目にすることができるようになった。その結果、自身の労働環境がおかしいことに気付きやすくなっているのだという。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2404/13/news045.html

こうした記事のレトリックは使い古されている。

今から40年以上前に新入社員であった頃から「今時の」という形容詞は常に新入社員に向けられていた。IT業界と言うこともあるかもしれないが、私の会社でも離職者は一定程度いた。他社に就職した私の友人なども何人かは入社後にすぐに転職に踏み切ったものもいた。

入社後すぐに辞める新入社員が増えているという統計データを私は見たことがない。
マクロのデータを見れば3年内離職率はほとんど変わらない。
「入社後にすぐに辞める」新入社員はいつの時代でもおり、その増減が急激に変化することはない。

■話が違う

二つの意味がある。

22歳程度の大卒の若者が社会を知っているはずもない。知っているとしても部分であるし、ほとんどの若者は無知のまま会社に入る。それは想像していたものとは異なるだろう。わくわくすることもあるだろうがガッカリすることもある。常にギャップが発生し「こんなはずでは」という思いで早々とレールを乗り換えることは当然である。

会社が募集要項で示すことはごく一部である。まれに入社後に運用を変えることがある。
転勤はないはずなのに転勤を命じられる、女性と言うことで給与体系が不利になる、残業代は見なしなので支払われない、福利厚生には条件があるのに事前に説明がない、など自身の経験でも枚挙にいとまが無い。

こうした、悪質な事態はニュースに取り上げられるので衆目を集めるが、多かれ少なかれ多いのかもしれない。

●いなば食品、入社辞退者が憤る内定後の『一般職採用です』告知「ボロ家」よりも許せなかったこと「待遇わからず」「想定していた働き方と全然違う」
2024.04.17

『週刊文春』の報道によると、静岡県内で勤務する予定だった一般職の女性たちが相次いで入社を辞退し、その割合は9割に達したという。「募集要項に給与が22万6000円とあったが、入社の段階になって、『給与は決まっていません』と言われ、あらためて問い合わせると、19万6450円と告げられた」や「静岡の社宅は雨漏りするボロ家」など、いなば食品の労働環境について報じられていた。

https://www.news-postseven.com/archives/20240417_1956977.htm

最初の記事の中に、すぐに辞める新入社員を後押しするかのように「退職代行」の記事があるが、これは結果であり原因ではない。

元々辞める人たちの総数は変わらず、それが楽になるようにしたのが退職代行である。退職代行を生業とする人たちが退職をそそのかしているのではない。

論理のすり替えに注意しよう。

(2024/04/22)