世間に転がる意味不明:論点がずれる危険性(いなば食品の恫喝メールと自動車の不正問題)


■論理的思考の弱点

論理的思考はロジカルシンキングとも呼ばれ、生成AIに聞くと以下のように答える。

ロジカルシンキング(論理的思考法)とは、物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法です。直感や感覚的に物事を捉えるのではなく、結論と根拠に分け、その論理的なつながりを捉えながら物事を理解します。

しかし、論理的な繋がりを自分の都合のよいように解釈すると、ことさら結果への懸念を騒ぎ立てる「バタフライ効果」や無理やり関連性をつなげる「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論拠がまかり通る。

さらに、こうした論理的思考の弱点として「そもそもの論点がずれている」と話にならなくなる。

■ビッグモーターよ再び

○〈弊社の事実誤認〉と謝罪 「マイナビに聞いた」いなば食品社長が転職希望者に送った“恫喝メール”の内容《マイナビ側はメールの内容を完全否定》
2024/06/04

缶詰製造大手「いなば食品」の稲葉敦央社長(70)が昨年9月24日、全社員に向けて〈マイナビ社より内々に当社社員3名が登録していることが判明した、との話があったそうです〉などと転職希望者を恫喝するような内容のメールを送信していたことが「週刊文春」の取材で分かった。

〈この度、一部報道において、株式会社マイナビ様から情報を入手したかのように記載された社内メールが弊社内にて送信されたとの報道がございました。しかしながら、弊社が株式会社マイナビ様から情報を入手した事実はなく、ひとえに弊社の事実誤認であることが判明いたしました。株式会社マイナビ様及び社内外の皆様に、ご迷惑とご不快をお掛けいたしましたこと、誠に申し訳なく謹んで心よりお詫び申し上げます〉

https://bunshun.jp/articles/-/71196

一部報道のお詫びは https://www.inaba-foods.jp/topics/detail/1073 デモ確認できる。

週刊誌の記事なので、実際に社員に送ったメールの内容は分からないが、問題は事実誤認のことではなく、“社員に恫喝めいたメールを送った”事である。謝る先は社員に対してである。

こうした思考で原因分析と再発防止を考えると
・ろくに情報源を精査しないやつがいけない(クビにしろ)
・情報源の精査をする部隊を強化する(管理をギチギチする)
と言う結論になる。

しかし、焦点を「恫喝メール」に当てると話が違ってくる。突然、組織文化やリーダーシップの話になる。いなば食品といえば、最初の雇用条件をないがしろにして退職者が続発した事件でも有名であり、誠実さが欠落しているというそしりも免れない。

社員に対しての高圧的な社長のメールが有無を言わさぬ風土を作った側面を考えるといなば食品がいつか社会常識を逸脱する行動を取る気がするのは杞憂なのだろうか。

ビッグモーターを思い出す。

■根拠が示されていない

○トヨタ豊田章男会長「認証の根底揺るがす行為」 不正巡り
自動車認証不正
2024年6月3日

発覚した認証不正は主に6種に分類される。「クラウン」や「アイシス」では、エアバッグがタイマーで作動するよう不正に加工していた。また「シエンタ」では、規定と異なる重量で衝突試験を実施していた。レクサス「RX」では、エンジン出力試験において、狙った出力が得られるようにデータを改ざんしていたという。

豊田会長は今回不適切な行為が指摘された車種について「法規に定められた基準はクリアしている」としながらも「こうした行為は認証制度の根底を揺るがす行為で、自動車メーカーとしては絶対にやってはいけない」と述べた。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC035AY0T00C24A6000000/

数年前から記録の改竄のニュースが流れている。昨年末のダイハツからはじまり自動車業界全体に波及するデータ偽装は産業自体の信頼を揺るがしかねない事案であり、国際社会からの信用を失いかねない。

そうした中での上記のような発言は危険である。

一昨年のダイハツの不正問題もそうだが、根本的には『正しいデータが無い』と言うことである。いくら”安全です”といわれても、それを裏付けるデータが無い。そこを論点にすべきである。

したがって、早急に「正しいデータ」を取得する活動も行わなければならない。そこに言及がない以上、論点がずれる。

2024/06/05