■Exit-Voice理論
グローバル経済に関する書籍を読んでいたところ、ものの移動、人の異動、お金ノ移動の速度差が金融経済などの政策の効果の打ち消しなどを誘発して、従来の経済理論が通用しなくなっているとか言う話が、面白く書かれていた。
その中で聞き慣れない言葉「Exit-Voice理論」が出てきて興味を引いた。
Google検索での生成AIの回答では以下のように説明される。
EXIT VOICE Entry 理論は、政治経済学者のハーシュマン(Hirschman)が1970年に提唱した理論で、個人が不満を解消する手段として「離脱(Exit)」と「発言(Voice)」の2種類があることを主張しています。
政治経済学者のHirschman(1970)は、個人が不満を解消する手段には、離脱(Exit)と発言(Voice=ボイス)の2種類があり、離脱によって不満のある状況から脱出する方法と、発言によって事態の改善を促す方法は、忠誠(Loyalty)によってさまざまな形態をとりうると主張しました。 この枠組みをFreeman and Medoff(1984)が労働条件の分析に用い、今日では “Exit Voice”理論は労働研究でも広く知られています。
離脱とは、顧客が商品を辞めたり、組織のメンバーが組織を脱退したりすることです。発言とは、顧客や組織のメンバーが組織に対して不満を表明したり、改善を促す意見を言ったりすることです。ハーシュマンは、この2つの手段は「忠誠(Loyalty)」によってさまざまな形態をとりうると主張しています。
これを自分なりに解釈すると、
・社員が不満を言っている間にその声を真摯に受け止めること
・さもないと、いきなり辞められる下地を作ることになる。
・何も文句を言わないからと安心しないこと。
・声に出さない不満はいくらでもある。
・自分の会社は「よい会社」などと油断すれば、突然の退職者の急増で慌てることになる
と言ったところだろうか。
■リストラの加速と転職
2024年の春は賃上げ狂想曲とも言えるような騒動だったが覚えているだろうか。また、その影に隠れているが「ジョブ型雇用」やこれに伴う「リストラ・早期退職」のニュースも盛んに流れていた。
企業の総労働人件費のコストを上げることができない以上リストラは進むというのは納得ができるし、そう動いているのだろう。
○上場企業27社が「早期・希望退職」を募集 3年ぶりに1万人超えの可能性
2024年05月24日
上場企業の人員削減が加速している。東京商工リサーチ(東京都千代田区)によると、5月16日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は27社で、対象は4474人に達しており、すでに2023年(3161人)の年間実績を超えた。不採算事業などの見直しに伴うもので、この傾向が強まると2021年(1万5892人)以来、3年ぶりに1万人を超える可能性が出てきた。
国内外の早期・希望退職募集に対する特別損失の計上額が判明した上場企業は、コニカミノルタの200億円、資生堂の180億円、TOPPANホールディングスの61億円が上位を占めた。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2405/24/news086.html
しかし、企業は自ら自分の首を絞めている可能性があることにも気がつくべきである。
”マイナビ、「転職動向調査2024年版(2023年実績)」を発表”を参照すると
●2023年の正社員の転職率は7.5%で過去最高水準が続く。転職者のうち、約半数は30~50代のミドル世代男性【図1、2】
●転職理由は男性が「給与」、女性は「職場の人間関係」が最多。重視するポイントに男女で違いが出る結果に【図3】
●約4割が転職して年収が上がったと回答。転職後の平均年収額は489.6万円で転職前の472.5万円から17.1万円増加【図4、5】
●リスキリング経験がある人の転職後の平均年収額は559.3万円。経験のない人は419.5万円で、139.8万円の差【図6】
とあり、転職率7.5%は数年前からの二倍程度であり、その転職環境はより容易になっていることがうかがえる。
早期退職と称して、会社に不要な人員を整理するという反面、社員から見捨てられるリスクも高くなっている。
■社員との対話
もし社員からの信頼を得て、安定した人財のストックを維持したいと願うのであれば、彼らからの信頼を勝ち取らなければならない。命令だけしておいて言うことを聞くからと言って安心していてはいざというときに我先に逃げ出すことになるだろう。
実のところ彼らの信頼を獲得することはむずかしくはない。彼らを信頼すればよい。
あなた(経営者)は胸襟を開いているだろうか。
経営に関すること、人事マネジメントの戦略や未来像を彼らに開示しているだろうか。
彼らに提供できるものを探索しているだろうか。
そうしたことの上にたつ対話を行なっているだろうか。
それがない中で、人材の安定化を求めてはならない。「くそオヤジ」といわれる管理層に未来はない。
2024/07/01