■脇の甘さが目立つ「大阪万博」
大学時代、社会問題を工学+社会学というコンセプトで向き合う学科に所属しており、その中で政策の事後評価も課題の一つであったため、行政が行なう施策の方向性は興味の対象となっている。
多くの政策がそうであるように、事後評価はまずされない。
それは、最初に「成功したと確信できる指標や水準」が示されないからである。
東京オリンピックであろうと大阪万博であろうと、当初予算を大幅に超過したからと言って「足りないものは仕方ない」とばかり、撤退するでもなく強行する。
それでも開催前からこれだけいろいろ言われる大阪万博はさすがというか、脇が甘くておどろくというか、とにかく話題に事欠かないようだ。
東京圏に住んでいることから興味も無いし行くこともないだろうが、やはり備忘録的には懸念事項を記録しておこう。
■皮肉な万博の理念
いきなり「チケットをコンビニで売る」とか「来ることを前提としたアンケート」とか思いつきの政策は傘下の自治体にも影響を及ぼすようで、以下のような記事は真偽はともかく吉村知事の信頼のなさを物語る。
○万博の子ども無料招待事業に反対 保護者らが署名活動 大阪・豊中
2024/7/8
2025年大阪・関西万博に子どもを無料招待する大阪府の事業を巡り、豊中市立小中学校に通う児童生徒の保護者でつくる「万博校外学習を心配する親子の会」が8日、市内で記者会見し、事業に反対する署名への協力を呼び掛けた。
https://mainichi.jp/articles/20240708/k00/00m/040/234000c
これは単純には「こどものいのち」が担保されないからだと聞く。
しかし、これは大阪万博のテーマが「いにち」だと聞くと皮肉以外の何者にも聞こえない。
○大阪・関西万博の理念とテーマ事業の考え方
これらのテーマ事業から得られる体験は、人びとにいのちを考えるきっかけを与え、創造的な行動を促すものとなるに違いない。他者のため、地球のために、一人ひとりが少しの努力をすることをはじめる。その重なり合い、響きあいが、人を笑顔にし、ともに「いのち輝く未来社会をデザインすること」につながっていく。
世界の人びとと、「いのちの賛歌」を歌い上げ、大阪・関西万博を「いのち輝く未来をデザインする」場としたい。
これは、いのちを起点に、世界の人びとと未来を共創する挑戦にほかならない。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
https://www.expo2025.or.jp/overview/philosophy/
■直接命に関わりそうな懸念
夢州は埋め立て地であり、産業廃棄物の上に立っていることを考えれば化学物質が充満し、有毒ガス、可燃ガスが発生するリスクは以前から指摘されている。それ以外にも、生物学的リスクまであるというのは驚く。
○強毒ヒアリ、万博会場の夢洲で発見…不安の声 「次から次へと問題が」「肝試し会場かな」
2024年6月29日
大阪府と大阪市が28日、大阪・関西万博の会場となる夢洲で強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」約550匹が見つかったと発表した。ヒアリは、刺されると死亡することもあるため「殺人アリ」とも呼ばれるだけに、ネット上には「怖くていけない」「もう中止したら」といった声が挙がった。
万博会場をめぐっては、作業員を退避させる基準以上のメタンガスが、76回検知されていたと報じられたばかり。またも来場者が不安になるような報道に、X(旧ツイッター)には、「次から次へと問題が…」「万博呪われてるなあ…」「万博関係で、もう良いニュース何も聞かない…」との声が挙がった。
https://www.chunichi.co.jp/article/920375
これ以外に何が出てくるのだろう。
出てきてからでないと分からないという状況が続くのであれば父母が安心できないというのも納得できる。
■労働災害
「いのち」をテーマにしているという事が悪い冗談だとしか思えないのは、働く人の配慮不足も含まれるだろう。
○万博展示館の施工会社を書類送検 労基法違反疑い、時間外労働巡り
2024/07/02
園部労働基準監督署(京都府南丹市)は2日、労使協定(三六協定)の上限を超える時間外労働などを従業員にさせたとして労働基準法違反の疑いで、ドーム型施設の屋根などを手がける太陽工業(大阪市)と男性元工場長を書類送検した。同社は2025年大阪・関西万博で関西パビリオンの設計・施工に携わる。
書類送検容疑は22年11、12月、京都府京丹波町にある工場の従業員1人に、三六協定を超える時間外労働や休日労働をさせた疑い。
https://nordot.app/1180760966782238815
東京オリンピックでは、その無茶な工期のせいで労働災害死が発生したと聞く。それを防ぐために2024年問題でしてされている様に残業規制があり、これが遵守されるように求めているはずなのに、相変わらずである。
こうした無理な働かせ形は事故を誘発させるリスクも高くなる。
○大阪万博の海外パビリオン建設現場で鋼材落下、けが人なし…安全確認まで工事中止
2024/07/05
2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)は5日、人工島・ 夢洲ゆめしま (大阪市此花区)の海外パビリオンの建設現場で、作業員が車両から鋼材(長さ約10メートル、厚さ約5ミリ)をつり上げて運び出す際、誤って地面に落下させる事故があったと発表した。けが人はいなかった。
https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20240705-OYT1T50129/
さて、これから猛暑の季節である。「いのち」がテーマなら考えてほしい。
「プライドよりいのち」である。
2024/07/09