世間に転がる意味不明:地域交通の問題点(PDCAサイクルの曖昧さ:三浦市の例)
真面目にPDCAを考えて欲しい。
■道路運送法第78条第2号(自家用有償旅客運送)
法第78条第2号(自家用有償旅客運送) 自家用有償旅客運送とは?? バス、タクシー等が運行されていない、過疎地域等において、住民の日常生活における 移動手段を確保するため、国土交通大臣または地方公共団体の長の登録を受けた市町 村、NPO等が自家用自動車を使用して有償で運送する仕組み。
https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/hrt54/com_policy/pdf/H29startup-ryokaku1.pdf
とあるように、すでに一定条件を満たせば自家用車をタクシーのように使うことが認められており、ライドシェアの議論の中で適用の緩和が進んでいる。これを受けて、日本版ライドシェアと呼ばれる取り組みが始まった。
○動き始めた「日本型ライドシェア」と「自治体ライドシェア」
2024.04.19
道路運送法第78条第2号による「自家用有償旅客運送」を活用したライドシェア(自治体ライドシェア)の導入が進んでいる。
この制度は自治体、NPO、一般社団法人などが運行主体となって、公共交通が十分に提供されていない地域(交通空白地)でのみ認められる。2023年12月28日の国土交通省の通達により、2024年1月から規制が緩和される方向での解釈が示された。「交通サービスが限られる時間帯」が生じる場合も交通空白地として認められたこと、運賃の目安が従来のタクシー運賃の5割から8割程度まで引き上げられたことなどから、導入を検討する自治体が広がった。
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/041600395/?P=2
■三浦市を考える
こうした背景で実証事件を開始した自治体の一つに三浦市がある。
○来月実証実験 三浦市ライドシェア 到着地は市外もOK 初乗り500円 運行区域、運賃など国に申請
2024年3月27日
地域住民のほか、観光で三浦市を訪れる人の利用を想定する。
運賃は初乗り(1・091キロまで)を500円、午後10時以降の深夜割り増しを2割増などと設定した。三崎港から三崎口駅まで乗る場合、利用者の支払額は3200円、深夜時間帯なら4340円と見込む。市によるドライバー募集に25人の応募があったことも報告された。
実証実験に当たっては、国が交通の便の悪い地域に例外として認める「自家用有償旅客運送」制度を活用する。同会議は26日付で、関東運輸局に制度利用を申請した。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/317581
実証実験であるならば、仮説と計画、実施と成果の評価が求められる。
仮説としては
・ライドシェアの導入によりタクシー利用率が上がる
がある。
従って、指標として必要なデータは
・潜在利用者数(地域住民と観光客数及び利用希望者数)
・利用台数もしくは稼働率
・見込み収益額と実際の収益額
が必要になる。
上記には、「ドライバー募集に25人の応募があった」とあるが、この文脈からは、ドライバー不足のことしか読み取れない。
これについては
○ライドシェア実証実験 ドライバー求む 集まるか、20人の協力者
2024年3月1日
一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」の実証実験を始める三浦市は、3月13日(水)までドライバーを募集中だ。
募集人数は20人程度。対象は市内在住・在勤、今年4月1日時点で20歳以上70歳未満、普通自動車第一種運転免許取得後1年以上経過し、過去2年以内に免許停止処分がない、週2日以上、運行業務に携われる人など。実施期間は新年度早々から約8カ月で、午後7時から午前1時のうち、都合の良い時間帯に協力。報酬は歩合給(売上の5割ほど)、運賃はタクシー同程度で、市との業務委託契約を締結予定。
https://www.townnews.co.jp/0502/2024/03/01/722482.html
とあることから、思惑通りに募集者はいることはうかがえる。
■裏付けの数字がない
しかし、元々は「過疎地での交通手段の確保」であり、地域のニーズに応えることができたかどうかが重要なのだが、醜聞かもしれないが芳しくない。
○ライドシェア、三浦で17日から運行 運転手の辞退相次ぐも台数は予定通り
2024年4月5日
ライドシェアの愛称は「かなライド」と名付けた。運行開始に向け、市はドライバーを20人程度募集。25人が応募したが、辞退者が相次いだため採用は31歳~65歳の13人にとどまった。ただ、スタート時点では当初の予定通り1日5台程度の稼働を見込んでいる。
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1068772.html
○三浦のライドシェア、依然低調 54日で132件 市長「周知に努める」2024/06/12
一般ドライバーが自家用車を使い有償で客を運ぶ「ライドシェア」の実証実験をしている三浦市は12日、開始から今月9日まで54日間の利用実績が132件だったことを明らかにした。 配車アプリの改良などで利用頻度は伸びつつあるものの、当初見込んでいた1日5件の水準には達していない。
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1085195.html
ライドシェアについては、地域性の問題や時間帯の問題などの外乱要因の他に、ドライバー側の思惑(得られる報酬や時間帯の自由)、アプリの整備状況などいろいろな要素がからむので、体系的なあるいはシステム的な計測が行なわれないとエピソード的な情報で判断しかねないのが懸念材料である。
相反するような記事を見ても判断がむずかしい。
○ライドシェア議論再始動 東京で月追うごとに運行1・5倍増、運転代行業者など参入も検討
2024/7/29 19:19
特別区・武三交通圏(東京23区など)では運行回数が月を追うごとに約1・4~1・5倍のペースで増加するなど、順調に伸びていることが分かった。一方、配車アプリを通じた客からの依頼にどれだけ応じられたかの「マッチング率」では、地域により制度導入後も7割台にとどまる時間帯があるなど、改善の必要性も浮かんだ。
https://www.sankei.com/article/20240729-ICKJOBTKC5PXPEZSP52GYPYWVQ/
運行回数の伸びと言うが、元々のタクシーの台数に対するライドシェアの台数が分からない。10台前後の台数が15台になったからと云って何か改善されるわけではない。
○日本版ライドシェアサービス「利用したくない」が8割 犯罪やトラブル発生時の対応に懸念──MM総研調査
2024/07/30
日本版ライドシェアを「利用したい」と回答した人は、18.3%にとどまった。移動手段の確保が難しい「交通空白地」の解消を目的として、国も普及に向けて動きを強めているが、8割以上の人が「利用したくない」とする厳しい結果となった。
https://bizzine.jp/article/detail/10730
何をどう解決してゆくのかの議論がなければ、単にライドシェア導入が目的となってしまい、何が何でも推進という議論になりかねない。
○神奈川版ライドシェア実証実験のドライバー3次募集について
2024年07月25日
普通自動車(5人乗り以上)を使用車両としていましたが、軽自動車(4人乗り)も使用可能となりました。ぜひご応募ください。
令和6年4月17日から、夜間にタクシーが不足している市内全域において、神奈川県や市内タクシー会社と連携して、神奈川版ライドシェアの実証実験(かなライド@みうら)を開始しています。
ご自身の車と空いている時間を有効に使い、三浦の地域課題の解決に向けて、積極的に協力していただけるドライバーを募集します。
こうした施策も
・思った以上にドライバーが集まらないのか
・利用したいという声が大きいので拡充するのか
といった情報が無いと判断できない。
行政側が、データを収集しこれを公表するというメカニズムが見えない。
いつか、「かなライド」は忘れられてゆくのだろうか。
2024/08/03