春先にまとめたものなので、記事の参照は古く、記事も不完全だが備忘録として。
世間の転がる意味不明:地域交通の問題点:ライドシェア問題を考える原点(論点の所在の整理をすること)
テーマ:問題を混ぜるな
「ライドシェア」は様々な交通問題を考える上での一つの要素にしか過ぎない。
あたかも救世主のような扱いには戸惑うことが多い。
少し整理してみたい。
■運転手がいないという問題
いわゆる2024年問題とは、一言で言えば労働時間の規制強化のことである。これにより長時間労働ができなくなり、運送業などを中心に人手不足問題がクローズアップされている。しかし、これはおかしな話である。
一つ目は、この規制は今年いきなり出てきた問題ではなく、働き方改革の一環としてすでに数年前から規制強化は決まっており、その準備期間はあったはずである。それを怠ってきたのはなにあろう運輸交通業界の経営者である。少子化がすでに決まっているのに対応を行なってこなかった大学と同じである。間抜けとしかいいようがない、
二つ目は、長時間労働をしなければ十分な報酬が得られないとう労働環境の問題である。劣悪な労働環境を変えろという現場の働く人たちの声を無視してきた経営者の責任を問う声が聞こえないのは不思議である。たしかに、労働者の単価を上げる動きはあるが十分とは言えない。
○トラック標準運賃、8%引き上げ 斉藤国交相が表明
2024年3月22日
斉藤鉄夫国土交通相は22日の記者会見で、物流トラックの車種や距離別の1回の運行あたりの料金を示す「標準的な運賃」を平均8%引き上げたと発表した。荷主との価格交渉を促し、適正な運賃の設定をめざす。4月からの時間外労働の上限規制で、運転手不足が懸念される物流の「2024年問題」に対応する。
同日、貨物自動車運送事業法に基づく告示を出した。荷物の積み込みや積み下ろしの対価も新たに明記した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223PY0S4A320C2000000/
三つ目は現状を疑問視していないことである。例えば、運転手が不足するなら運転手が必要ない仕組みや局所的な集中を分散させる仕組みがあるはずである。こうしたことを業界がこぞって行なうという話は聞いたことがない。むしろ「ウーバー」の参入を嫌う声しか聞こえない。
こうした解決すべき問題が焦点化されないことが問題であると考える。
■経営が成り立たないという問題
運転手不足でタクシー会社が苦境に陥っている、あるいはバスの運転手がいないために減便せざるを得ないというニュースを聞く。
○過去10年でタクシー業の倒産が最多。ライドシェアの一部解禁は業界にとって「ライバルか共存共栄か」
2024年04月03日
帝国データバンクによると、2023年度にタクシーの倒産が33件あったと発表しました。過去10年で最多といいます。
倒産の背景には、燃料高やドライバー不足がある。毎日タクシーグループ(名古屋市)が1月に事業継続を断念したのは記憶に新しい。
ライドシェアを巡っては、国土交通省が実施地域として東京、神奈川、愛知、京都の4都府県の一部を指定。さらに札幌、仙台、さいたま、千葉、大阪、神戸、広島、福岡の都市部を中心とする8区域を認めると明らかにした。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_660cd4b5e4b078af1446a89f
しかし、私が聞く限り「十分な報酬」が得られないからタクシー運転手にならないと云うことが背景にあると理解している。すなわち、保有しているタクシーの台数に見合った乗客がいなければ経営は成り立たないだろうし、また生活に足る報酬をタクシーの運転手に支払いができないなら運転手は集まってこない。
これは、いわゆる地方都市でのバスの運行の減便についても同様である。
公共交通機関はもっと深刻であろう。朝夕の混雑時にはバスが足りないとしてもそれ以外の時間では“空気”を運ぶ時間帯が発生し、一日の乗客数が採算ラインを下回ることは日常茶飯事である。
地方の鉄道が維持できない状況は他人事ではない。
○「ローカル線見直し急務」 新型コロナで赤字穴埋めの構図崩れ
2024/3/26
この区間は2019年度の輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)が48人で、JR西の赤字ローカル線の中でも特に利用が少ない。1日の運行本数も上下20本程度にとどまり、冬は雪の影響で運休になることが少なくない。
https://mainichi.jp/articles/20240326/k00/00m/040/271000c
■呉越同舟にはならない
2024年問題、運転手不足、これに絡めてオーバーツーリズムの問題、過疎化問題、少子化の問題など社会問題も関わってくる。
これらは、運送業者やバスの運行会社、タクシー会社、ウーバーなどの第三勢力、行政機関などが役者として登場してくるが呉越同舟の訳がない。また、その思惑も同じ土俵には上がらない。
京都でのオーバーツーリズムでの交通問題は、地元に暮らす人々にとっては混雑により生活が脅かされるとして歓迎できない側面があるだろうし、タクシー会社はせっかくのビジネスチャンスが運転手不足で掌中の珠を逃す焦りがあるだろう。だからといって行政が推進するライドシェアで「ウーバー」などの第三者に奪われるのは我慢ができないというさもしさがうかがえる。
そうした動きの恩恵にあずかれない人々は「ライドシェア」には興味をいだかないだろう。
○京都のホテル稼働率69.9%
2024年4月3日
京都市観光協会では、各ホテルの人手不足は深刻だとして、今後の客室稼働率についても2019年を下回る水準が続くと予想しています。
https://www.kbs-kyoto.co.jp/news/2024/04/n20240403_134495.htm
彼らからすれば、運転手よりもホテルの従業員の方が重要である。
2024年問題はタクシー運転手だけの問題では無い。
就業者人口がそもそも減っていることも忘れてはならない。
呉越同舟すらなれない。
(2024/04/05)