■言い訳としての2024年問題
2024年問題は一言で言えば「残業規制」である。
規定時間内に終わらないのであれば、マンパワーを増やすか生産性向上を図るしかない。
それをどちらも怠れば、何かしらの問題は発生する。
単なるオペレーションであれば、極端な話をすれば賃金の手当である程度はなんとかなる。それでも争奪戦にはなるだろうが。問題は専門技術が必要な人々であろう。特にIT技術者/DX人材は、魔法のように育つわけもなく技術者教育が必要であろうし時間もかかる。
そうした人材もっとも必要とするのは専業のIT企業であるが、その状況は深刻のようである。
○IT業界も人ごとでない「人手不足倒産」、ユーザー企業のDX停滞の懸念も
2024.08.09
人手不足による企業経営への影響が、一段と深刻度を増している。帝国データバンクによると、2024年上半期(1~6月)の「人手不足倒産数」は過去最多のペースという。今のところ情報サービス業の人手不足倒産は少ないが、楽観視できる状況ではない。倒産数が徐々に増えつつあるのと、人手不足への対処法によりIT業界の企業が今後「2極化」していく可能性があるためだ。IT企業の人手不足倒産が増加すれば、ユーザー企業のDX(デジタル変革)需要に応えきれず産業界全体に影響を及ぼすことも懸念される。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00989/080100156/
こうした問題は2024年問題とは関係ない。IT人材の不足は50年ほど前から何も変わっておらず、当時の通産省のプログラマー不足の警告や2000年問題におけるレガシー技術の技術者不足、複雑化するシステムへの対応のできる人財の育成などは常に問題である。
社会全体として云えば、人材の供給システム・育成システムが整備されておらず、野放図にしているツケが出ているだけである。2024年問題は関係ない。
■野良ソフトの恐怖と効率化
一方で、システム開発の障壁は下がってきており、専門家しかアクセスできなかった開発環境は一般ユーザーにも開放されている。Excelのマクロなどはその代表格であろうし、Kintoneなのノーコード環境はユーザーにとっては福音であろう。
EUC(※)などは、プロでもなくできるという環境を作り出せる。
※EUC(エンドユーザーコンピューティング)とは、企業や組織における情報システムを利用する従業員や部門が、自らシステムやソフトウェアの開発・構築や運用・管理に携わることを指します。
一方で、EUCは企業のシステム部門としては頭の痛いテーマである。いわゆる野良ソフトが横行し、ガバナンスが変更になったときに対応していないソフトが野放しになり、最悪セキュリティ上の問題を生じかねない。
問題の一つしてあげられるのは、システム部門の担当者の忙しさであり、これの生産性向上を図る必要がある。そのためには、どうしても“人手”で行なっている部分の自動化が課題である。
そうした中で興味深い記事を見た。
○顧客の要望から要件定義、システム生成まで自動化する「Babel」 OSSの「Zoltraak」がコア
2024年08月31日
Babelは一行の要望から要望一覧、要件定義まで一気通貫で記載する。「要件定義プログラミング」により、自然言語からコードへの直接変換を実現。顧客の要望やビジョンを入力するだけで、Babelが詳細な要件定義のYAMLファイルを自動生成する。その上で生成された要件定義に基づき、Babelが独自にシステムを設計、開発。技術的な詳細を指定することなく、望む機能やふるまいを記述するだけでシステムが構築される。
https://ascii.jp/elem/000/004/218/4218870/
システム開発の上流工程は、そこでの不備があれば下流工程でいくら頑張っても不良品を作りだしてしまう。従って、底での効率化ができるとしたら、その福音は大きい。
まだ、その性能は分からないが、こうしたことでシステム部門の生産性が高まれば、野良ソフトの巡回の時間を作れるだろうし、現場に対するコンサルティングもできるだろう。
■発想の切り替え
IT人材がいないと云うことに着目すべきではない。IT人材の仕事が効率化されないことに着目すべきである。
2024/09/03