未来への手がかり:共同事業という選択肢(障害者雇用の難しさ)


■中途半端な障害者雇用の義務化

障害者雇用率が法律で定められている。
厚生労働省のサイトを見ると以下のように記述されている。

民間企業の法定雇用率は2.5%です。従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。

なお、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしています(特例子会社制度)。
また、企業グループ算定特例、事業協同組合等算定特例といった制度があります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html

障害者と云っても様々であり、車椅子や義足で歩行だけに障害がある人には比較的対応はしやすいだろうが、いわゆる知的障害と言われている人々への就労環境の整備は、そのノウハウがなければ難しい。100人程度の会社に一人二人の障害者が雇用されると云っても、彼らが抱え得ている気持ちを救うことは難しい。

彼らが社会参加ができやすい環境を作らなければ、企業だけに押しつけても解決しない。もちろん、こうした義務化は、経営者に対して啓蒙を促すという意味では重要である事は認める。

■集団で活躍するという選択肢

今から20年以上前になるだろうか。ある企業との取引が発生し訪問したことがある。その企業は、グループ会社の中の一企業であり、30名ほどの企業であった。驚いたのは全員が「障害者」であった。もっともほとんどは四肢のハンディキャップであり、一部視覚障害・聴覚障害の人もいたようだが数は多くなかった。

当然、バリアフリーであり、机などの配置などにも気を配っていた。
聞くと、前者での障害者と言われる人を一堂に集めて会社にしたとのこと。
いわゆるコストセンターではなくプロフィットセンターで、当時はリサーチを生業としていた。

経営者に聞くと、「将来は、こうしたバリアフリーのコンサルタントもしたい」とおっしゃっていた記憶がある。

残念ながら、それっきりの付き合いなのでその後のことは分からない。

こうした特例は「同一企業内であれば」と言うことであり、これを無視して「代行ビジネス」で、自社の障害者雇用の抜け道にしていることは褒められたことではない。

しかし、社内の少数派である彼らの価値創造が難しいのであれば、外にその目を向けてもよいのではと思うこともある。それを考えさせられる記事がある。

○障害者雇用「代行ビジネス」と批判、農園就労の今
本人が納得して選び、やりがいを得ているのか
2024/09/03

「一般企業の中にも社会貢献やCSRに関わる部署で働く人がいる。彼らは売り上げを立てないが、無意味な仕事とは思えない。最も大切なのは障害当事者の気持ち。本人が納得して農園を選び、やりがいを得ているのであれば、そこに価値を見いだせるはずだ」

https://toyokeizai.net/articles/-/818574

一人きりで何かをさせるのではなく、共同で何かをすると云うことは彼らにとってもモチベーションの向上につながるという意味では有益だと感じている。

■法律としての支援の可能性

上記の記事の問題点は、そもそも農作業は、派遣している企業の定款に含まれているかと云うことであろう。自社のビジネスと全く関係の無い「作業」を紹介したからと云うことは、「福祉への貢献」では自己満足になるかもしれないが、企業活動としてはいびつな印象を持つ。

こうした「代行ビジネス」への依存は安易すぎる。
ではどうするかと云えば、「事業組合」の設立を他社と一緒に構築すると言う方法が考えられる。それは、バリューチェーンの一翼を担わせ、まっとうな報酬を支払うと云うことである。

バリューチェーンとしては、企画、営業、調達、サポートなどの基幹プロセス、システムの維持管理、購買支援、調査研究などの支援プロセスがあり、もし、他社と共同で障害者の受け皿となる組織が構築できれば良いのではないかと感じる。

もちろん今の法律での枠組みでは制約条件もあるだろう。しかし、実績を作ることで法整備が追いつくこともある。一考を望む。

2024/09/08