世間に転がる意味不明:安寧が約束されない大樹(VWの労働協定の破棄)


世間に転がる意味不明:安寧が約束されない大樹(VWの労働協定の破棄)

■突然の解雇

40年以上前であるが、事業が立ちゆかなくなり、あるいは想定した利益が創出できないために部門そのものが廃止されるのを機に退職を強要された事例を知っている。また、少しとがった社員を昇給を遅らせることで退職に追い込むと云うことをしていた企業も知っている。

多くの人は安寧の中で企業に勤め、全体としては安定したいる大企業は寄らば大樹の陰という言葉がふさわしいものであった。

しかし、企業は一人一人の社員を守ろうとすることはないので、勢い労働組合などの集団での力に頼ることになる。

とはいえ、下記の様な記事を見ると、約束事を保護する企業態勢はいかがなものかと考え込んでしまう。

○独VW、30年来の雇用保障協定を破棄へ-コスト削減の一環で
2024年9月10日

 ドイツの高い技術力の代名詞とも評される同社での雇用保障打ち切りは、欧州最大の経済大国である同国の競争力がいかに失われているかを浮き彫りにする。VWは先週、これまでのコスト削減策が失敗に終わったことを受け、創業後初となる国内工場閉鎖を検討していることも明らかにしていた。

VWの人事担当責任者グンナー・キリアン氏は発表文で「ドイツ国内のコストを競争力のあるレベルまで引き下げる」ことが各措置の目的だと説明した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-10/SJLPQ5T0AFB400

■業績不振の責

1990年代、バブル崩壊以降、企業は簡単に整理解雇あるいは早期退職などの人員整理を行なうようになった。当然、賃金コストの負担軽減なども簡単に達成できるので手を染めやすくなったこともあるだろう。

しかし、業績悪化は誰あろう経営陣の責任であろうし、市場の見誤りはいつでも発生しうる、その調整弁を社員の解雇で行なうのは、いくら経営陣が正当性を唱えようと納得できない。

下記の記事も言い訳としか思えない。

○独VW、雇用保障盛り込んだ労働協約を破棄 来年から解雇か
2024年9月11日

VWの人事責任者を務めるグンナー・キリアン氏は声明で「国内でのコストを競争力のある水準に引き下げ、自前の資源で新技術や新製品に投資できるようにする必要がある」と訴え、労働協約の破棄にあたって賃金交渉を前倒しで進める方針を示した。

https://jp.reuters.com/business/QPQ6QKCXNNLFNA35K2C7ZLNPJI-2024-09-10/

しかし、これは海外だけの話ではなく、国内でも数年前から盛んに退職を促す政策が取られている、最近は沈静化したかと思ったがそうでもないようだ。

○リコー、2000人規模の希望退職者を募集 理由は「収益性の改善ため」
2024年09月12日

同社は、株主や投資家、アナリストとの対話や市場分析を重ねた結果「最大の課題は収益性の改善にある」と結論を出した。「デジタルサービスの会社として成長を実現するためには、各事業のビジネスモデルに適合した収益構造の実現が必要であることから、抜本的な収益構造変革を推し進める」

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2409/12/news170.html

早期退職制度の労働法上の問題としては、次のようなことが考えられる。
・強迫による退職の取り消し可能性
・過度な退職勧奨による不法行為の成立可能性
・希望退職の効力の発生
・優遇制度の適用に関する問題

早期退職制度は、労働者に早期退職の申込みを促す措置にすぎないため、使用者が退職を強要したり、執拗に退職を迫ったりすると、トラブルに発展する可能性がある。それでもこの手段に訴える企業は後を絶たないだろう。

■時流の不安定さ

電気自動車にこぞって参加を促していたEUのどうこうも怪しい。

○ボルボ 2030年までに販売車をすべてEVにする計画を撤回
2024年9月5日

スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ・カー」は、2030年までに販売する車をすべてEV=電気自動車にすると発表していましたが、この計画を撤回すると明らかにしました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240905/k10014572641000.html

今までの優等生も手のひらを返している。

○独フォルクスワーゲンの国内工場閉鎖が示唆するドイツの産業空洞化、果たして日本の二の舞になるのか?
2024.9.13

ドイツ最大手の自動車企業であるフォルクスワーゲン(VW)社はドイツ国内の工場閉鎖を検討する方針を発表した。

今回は製造業大国ドイツの象徴でもあるVW社が国内工場を閉鎖するという動きであり、87年に及ぶ同社の歴史では初の意思決定となる。そのショックはショルツ政権にとどまらず、中長期的に見たドイツ経済の展望に関わるだろう。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/83139

大企業が約束を守るなどと云う幻想は捨てた方が良い。

2024/09/18