戦略人事:職種の再定義が必要な管理職の業務(ジョブ型雇用の向き合い方)
■いつか来ると感じていたこと
少し衝撃的な記事を見た。
○2026年末までに中間管理職の半数廃止か──Gartner調査
2024/10/31
2024年10月29日、ガートナージャパン(以下、Gartner)は、2025年以降の戦略的展望のトップ10を発表した。
〈9〉2026年末までに、組織の20%はAIを活用して組織構造をフラット化し、現在の中間管理職の半数以上を廃止する
AIを導入して人間の中間管理職を廃止する組織は、短期的には労働コストの削減という形で、長期的には福利厚生コストの節約という形で、メリットを得られるという。
https://enterprisezine.jp/news/detail/20727
管理職という職種の職務定義を検索すると以下のようになる。
・部下やチーム、売上や予算などの管理
・組織や事業の目標設定、業務計画立案、事業運営上の管理
・組織力向上のための施策や人材育成計画等の立案
・経営層や人事と連携
(Search Labs | AI による概要)
もちろん、どこかで人間が介在しなくては困る側面もあるが、おそらくはAIで代替できる職務になろう。
ジョブ型雇用は、どのような仕事に対してどれぐらいの価値を見いだすのかと言うことが発想の原点にあると思っている。こうした管理職業務はいつかは価値がなくなるだろうと感じていたのは転職市場で「部長ができる」は歯牙にもかけられない記事をよく見ていたからである。
単なるパイプ役としての管理職が要らないというのは時代の趨勢であろう。
現実的にも、こうした管理職層のリストラが進んでいる記事も見る。
○富士通、早期希望退職を募集 費用200億円計上も人数は非公表
2024年10月31日
富士通は31日、国内の間接部門の幹部社員を対象に、早期希望退職を募ったと明らかにした。
デジタル化を支援するIT事業への転換を進めるなかで、人材の配置を見直した。事業の再編や関係会社の統合などで、間接部門に余剰が生まれていたという。
https://www.asahi.com/articles/ASSB03DZPSB0ULFA02PM.html
■お互いの納得できる評価基準の必要性
富士通などはジョブ型雇用などの先進的なフレームワークを好んで使う企業であり、おそらくはすでに導入しているだろう。そうした中で、不要となるジョブが発生するというのは設計上の何かに問題があるのではないかと感じてしまう。
そもそもジョブ型雇用が話題になったのは昨年あたりであり、すでに多くの企業がこれに取り組んでいると聞く。しかし、これにより卓越した成果を出しているという事例は聞かない。逆にジョブ型雇用に対する否定的な記事を見る。
○なぜ「ジョブ型雇用」は機能しないのか? 弱点を補う術は
2024年10月11日
ジョブ型導入への困惑の声、ジョブ型のデメリットなどを指摘する声が多く聞かれます。
例えば、次のような意見です。・自分の職務範囲に集中した方が得だと考え、周囲と連携や協調が弱くなった
・自分のスキルアップへの関心は高まったが、チームメイトに対して関心が薄くなった
・会社のビジョンや方向性などへの関心が薄れ、目の前の仕事に過度に集中してしまう
・ジョブ型の制度が導入されたが、みんなの仕事のし方は変わっていない。何のための制度変更なのか分からない
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2410/11/news074.html
こうしたデメリットに対し、同記事は以下のように類型を湿す。
・多様性を認め合い、尊重し合う
・個人と組織が対等な関係(パートナー)。エンゲージメントで結びつく
・パーパスやビジョンを一緒に追求する仲間。フラットな関係
・自立した個人。個性を伸ばす。キャリア自己選択
しかし、これを担うヒトはだれなのだろうか。いわゆる中間管理職なのだろうか。もしそうであるならば、こうしたジョブは具体的には何を指し、どのように報酬に反映させるのかを決めなければならない。
それを曖昧にしてジョブ型雇用を進めてもトラブルの素である。
必要なのは、このジョブを担う人々と会社側が納得の行く評価基準を握ることである。
さもないと目標管理制度の導入で失った評価者への信頼は取り戻せない。
いっそのこと、こうしたジョブもAIにさせればよい。そうすれば管理職はいらなくなる。
2024/11/02