戦略人事:金の切れ目が縁の切れ目(さっさと見切りを付けよう)
社員に見捨てられる時代が来るかもしれない。
■年功賃金
日本型雇用の特徴として「終身雇用」が挙げられ、その中核となる制度に「年功賃金」がある。退職金制度もこれに追随する。企業は、ジョブ型雇用という逃げ道でこれを解消しようと思っているかもしれないが、多くの企業は給与を一律に管理する給与テーブルで運用しようとする。
こうした給与テーブルは
・その人のジョブで決定するのではなくヒトの属性(年齢、勤続)などで決定され
・昇給昇格は事後の評価で決定されるが納得性は薄く
・昇給幅も全体で数%の範囲内に御染まるようにしている
と言う特徴があり、年功型は抜け出せていない。
○給与テーブルを策定している企業は約9割 課題は「年功的な運用から脱却できていな2024/11/19
給与テーブルを策定している企業は約9割で、ほとんどの企業が基本となる給与額や昇給額を定めて運用している
給与制度運用の課題については、管理職では「年功的な運用から脱却できていない」が最も高く、被評価者の職位や勤続期間によって制度の見直しに時間がかかっている可能性があるという
最高評価査定時の昇給幅は「2%未満」が5割超で、「5%以上」は2割超。
https://bizzine.jp/article/detail/11029
■長く務めるヒトの切り捨て
何らかの年功型賃金は企業の労務コストを圧迫するので高齢者はどんどん切り捨てたいという思惑がうかがわれる記事も見る。
○第一生命HDが早期退職支援制度に1000人募集-50歳以上対象
2024年11月14日
発表資料によると、同社では人材の多様化とスキルアップを目指してきたが、社員の柔軟なキャリア選択を可能とする仕組みを提供することにした。知識やスキルを社外で生かすことをサポートする。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-14/SMXESAT0AFB400
この会社の是非はともかく、論理的におかしいと思う。
なぜならば、「人材の多様化とスキルアップ」や「社員の柔軟なキャリア選択」は30歳代、40歳代でも必要である。むしろ50歳代は、会社都合での能力開発を受け入れてきたそうであるので、基本は再配置で対応すべきである。
■早く辞めるが勝ちなのか
年功的な要素が強いもう一つの金銭的報酬が退職金である。
もっともこれも雲行きが怪しい。もともと、算定基礎に利率を欠けるスタイルからポイント制退職金に移行する企業が話題になったのは10年ほど前であり、多少は年功制が弱まったが相変わらずであろう。
知られていないが、税制でも優位性があったが怪しくなってきた。
○政府税制調査会 退職金所得税を議論 課税の仕組みに指摘相次ぐ
2024年11月15日
退職金にかかる所得税は、同じ企業で働く期間が長くなるほど軽減され、終身雇用を前提とした仕組みになっています。
政府の税制調査会は15日、専門家会合で議論し、委員からは、転職する人が増える今の実態にあわないことや、勤労意欲に悪影響を与えない制度が望ましいといった指摘が相次ぎました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241115/k10014639781000.html
■さっさと見切りを付ける
企業側は、とにかく事業構造を変えなければ生き残れない上に再教育をする余裕もない。勢いリストラに頼らざるを得ない。
○2024年の「早期・希望退職」募集1万人が目前 上場企業53社、人数非公開の大型募集相次ぐ
2024/11/19
このペースで推移すると2021年以来、3年ぶりに1万人を超えることがほぼ確実になった。国内外で9,000人を募集する日産自動車、人数の上限を設定しない武田薬品工業、募集人数は未公表だが200億円の費用計上を発表した富士通、50歳以上の社員を対象に1,000人を募集する第一生命ホールディングスなど、年末を迎えて人数非公開の大型募集が相次いでいる。
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1199062_1527.html
今どんな企業にいてもリストラされることは避けられないなら、早めに事業請負人よろしくフリーのビジネスマンを目指すのも良い。
40歳までにポータビリティの高い技術を身につけ、成果を出すことにコミットする週間と実績の言語化をすることを薦める。下記の様な仕組みがあるなら利用した方が良い。
○新報酬制度「エンゲージメントストック」導入へ…努力を評価する第三の報酬 企業成長と従業員のモチベーション向上目指す
2024年11月18日
エンゲージメントストックとは、普段の給料やボーナスとは違った、いわば「第三の報酬」のこと。
会社は、任意に決めた仮想の株式、ポイントのようなものを従業員に付与し、もらった従業員は、業績アップなど決められた条件を満たすと、それを現金化できるという仕組みだ。
https://www.fnn.jp/articles/FNN/788202
ある種のストックオプションであろう。
30歳代でも良い。会社が早期退職を求めているなら積極的に手を挙げることを進める。
金の切れ目が縁の切れ目と割り切ること。
社員を平気で切り捨てる企業にしがみつくのは危険だ。
信頼関係を築けない人事部も考えた方が良い。
2024/11/20