未来への手がかり:AIは知恵の神となりうるのか(どうでも良い仕事からの開放)
■自分の仕事が脅かされる人々
2024年のAIに関しての議論として、「AIにより奪われる仕事」「生成AIにより知的権利の侵害」などがあるだろうか。アメリカの映画界で脚本にAIを使うことに抵抗した活動があったことや日本でも声優が危機感をあらわにしたニュースがあったことは記憶にある。
関わるヒトの仕事が多ければ多いほど抵抗も大きく「ラッダイト運動」を彷彿させるような行動をとる人々もいるだろう。
しかしAIでなくとも技術の進歩は既存の職業を奪ってゆく。
自分の生きてきた時代であっても、バスの車掌はいなくなり、改札で切符を切っていた人々もいなくなっている。電話交換手はいなくなり、IT業界では「パンチャー」という職業はすでに無い。
単純労働は「どうでも良い仕事」の筆頭であり、技術の進歩はこれらの仕事を駆逐する。
何も手足を使うことだけが単純労働ではない。「編集者による原稿の校正」「法務部の契約内容のチェック」だって、「既存の知識」を使うだけの仕事であれば、技術に取って代わられる。
気がついていないかもしれないが、すでに調べ物で「百科事典」を使うことはない。Googleで検索するのがどれほど多いかを考えてみると分かる。
技術の進歩を止めることはできないし、技術で代替できる職業は規模を縮小せざるを得ない。
■突き進むAIの応用範囲の拡大
技術は、アウトプットまでの時間を短縮するし生産性も向上させる。
それは、今までの常識を覆す。
○AIを活用した出版プラットフォームSpinesが650万ドルを調達し、数百年続く出版業界に変革をもたらす
2024/04/10
Boox Publishing Technologies Inc.と呼ばれるSpinesは、著者向けのAIを活用した出版プラットフォームを開発し、出版から物理的な書籍の流通までをワンストップで自動化するサービスを提供しています。
Spinesは、編集、校正、フォーマット、表紙デザインなどの重要なタスクをAIで自動化するさまざまなアルゴリズムを開発しています。
これに対し出版に関わるスタッフが減ることに対しての抵抗は当然のことのようにあると言う記事がある。
「こうしたサービスに、人の手で出版作業を行うことを仕事にしている人々が反発しています。作家、イラストレーター、翻訳者のための労働組合を代表するアンナ・ガンリー氏は「著者が期待するものを実現できる可能性は非常に低く、出版への最善の道だという保証もほとんどありません。AIに依存するシステムの場合は、サービスの独創性と品質の欠如が懸念されます」と指摘し、契約を締結する前に十分慎重に検討するよう警告しています。」
■残る職業の特性
AIが過去の、あるいは既存の情報を収集し“学習”した結果をロボットなどの媒体を使って顕現化してゆくとしたら、ヒトなどのように振る舞うべきなのだろうか。彼らを使いこなすというなら、正しく使う為の知性が必要であろう。
ドラッガーが指摘したような知識はすでに武器にならない。知恵あるいは知性が、その人となりが特別な存在にしてくれるはずである。
それは、一つの仕事に大量の人材が必要な時代ではない。一つ一つの仕事に特別性を持たせなければならない。それは、特別なものを作れる職人だったりするかもしれない。
大量生産ではない。多品種変量生産の時代であろう。
もっともそれすら怪しい。AIがアテナのように知恵を授けてくれるとしたら、ヒトは「考えない」存在に落ちるかもしれない。
その徴候はすでに見えている。
2024/12/13