戦略人事:AIを使いこなす必要性(カンニングをとがめるのは正解か)
■気になった記事
○ 45.5%が就活のWebテストで「カンニング」 – そのうち内定を得た割合は? 2024/11/21
45.5%にあたる269人が自宅などで受験したオンライン試験で「何らかのカンニング」を実行したと回答した。一方、カンニングを行わなかったのは54.5%(322人)にとどまった。
特に生成AIを利用した不正行為が従来の「替え玉受験」を上回っており、生成AIの普及により不正行為がより手軽になった可能性が示されているという。
https://news.mynavi.jp/article/20241121-3068617/
気になった点は「AIを使って情報を獲得することは不正なのか」という点である。
WEBテストにおいて、座右に関連資料をおいてはいけないという制約があるのであれば不正であるが、それは禁止されているのだろうか。
禁止されていないとしたらそれは不正ではないだろう。仮に不正であるとしても、実社会のことを考えると少し考え込んでしまう。
■AIを使いこなす技術
企業が成長を継続するためには組織の能力を遺憾なく発揮してもらうように人材にその行動を求めるであろう。会議や意見交換の場で、即座に回答しなければならない状況下では、その人が持つ知識や技術、そこから適切な回答を導き出すセンス(資質)が求められる。知識や技術も持ち合わせていなければ適切な回答はできないだろう。
しかし、人が保有する知識や技術は量的な制約がある。これを補うことのためにAIを使うことが今後求められる資質ではないだろうか。
従って、企業が人を採用するときの試験においては「知識があること」を確認したいのか、「情報活用能力」を測りたいのかを明確にしなければならず、「情報活用能力」であればAIの活用を認めなければならない。
また、「知識があること」を前提とした試験も、あらかじめ優良回答が設定されるような従来型の試験ではなく、知識をどう活用するのかを問う試験にしなければならない。従来型のSPI試験では不十分である。こうした試験に頼らざるを得ないのであれば人事部が無能だと言うことである。
■AI活用を前提とした試験
では、AI活用を前提とした試験とはどのようなものであろうか。一つは問題文を課題発見型に変えることである。例えば、
当社は、自動車の前面パネルのプラスティック部分の製造と販売をしている企業である。顧客は特定の企業になっている。しかし、近年自動車生産台数は低下傾向にあり売上高が低下している。そのため、新市場の開拓が必要であるが、その探索は容易ではない。また、プラスティックは環境負荷が高いと言うことで環境対応型樹脂が求められている。すでに技術的な課題は解決しているが試乗への認知度が低く、どのように普及するかが課題である。このような状況下で事業を進めるに当たってのリスクとその対応について述べよ。
と言ったもの考えられる。
そうしたときに、AIを使っても良いが下記の制約を設けるべきである。
•「AIを使っても良いが、どう使ったか説明せよ」
情報収集のプロセスを記述させる(どの情報源を使い、どう活用したか)
•「AIの回答をそのまま提出せず、自分なりに編集せよ」
AIの出力を検証・編集させる(そのままではなく、誤りの指摘や補足をさせる)
•「AIの回答に誤りがないか検証せよ」
AIの限界を考察させる(どこまで信用できるか、どのようなバイアスがあるか)
もっとも、こうした回答を採点するのであれば、どのような基準で採点するかを公開しなければならない。採点する側の技量も求められる。
■双方の情報活用力
結局のところ、AIを使うのは「けしからん」という話ではなく、その人の持つ「応用力」などを見るべきであり、そうした回答に対してどう採点するかの技量も人事部側に求められる。そうした力量がない人事部は、不正を見抜くことなどできないだろうし、結局は「知識が保有していることを前提とした時に」能力のない人間を雇うことになる。
考えてみて欲しい。
2025/02/26