ISO9001と経営:「7.1.4 プロセスの運用に関する環境」(外国人技能実習生への労働安全を考える)
■規格要求事項としての「7.1.4 プロセスの運用に関する環境」
7.1.4 プロセスの運用に関する環境
組織は,プロセスの運用に必要な環境,並びに製品及びサービスの適合を達成するために必要な環境を明確にし,提供し,維持しなければならない。
注記 適切な環境は,次のような人的及び物理的要因の組合せであり得る。
a) 社会的要因(例えば,非差別的,平穏,非対立的)
b) 心理的要因(例えば,ストレス軽減,燃え尽き症候群防止,心のケア)
c) 物理的要因(例えば,気温,熱,湿度,光,気流,衛生状態,騒音)
これらの要因は,提供する製品及びサービスによって,大いに異なり得る。
これは、組織での管理課で働く人々に対し適切な労働環境を保持することを求めている。それは「労働安全」だけでなく「労働法」全般の遵守も含む。さらに言えば、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」なども遵守すべき法令に含まれる。
こうしたことに無頓着な企業の報道があり、これを考える。
■今治造船
○今治造船、技能実習5年停止 労働安全衛生法違反―入管庁が処分
2025年03月25日
出入国在留管理庁は25日、外国人技能実習生に対する労働安全衛生法違反で罰金刑が確定したとして、業界首位の今治造船に技能実習計画の認定取り消しの行政処分を行ったと発表した。技能実習法の規定により、同社は今後5年間実習生の受け入れができない。現在受け入れている全ての実習生は他社に転籍することになる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025032500824
上記の記事では「違反事案の具体的な内容は明らかにされていない。」とあるが、具体的な行政処分の内容は下記に記載されている。
○技能実習法に基づく行政処分等を行いました 令和7年3月25日
法務省と厚生労働省は、令和7年3月25日付けで、エコネット協同組合ほか3団体に対し、監理団体の許可の取消しを行いました。
また、出入国在留管理庁と厚生労働省は、同日付けで、株式会社アスカほか30者に対し、技能実習計画の認定の取消しを行いました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_55450.html
対象組織が35にも上り、広範囲に渡っていることが分かる。詳細は上記から参照できる。
この中で
・処分理由
傘下の実習実施者に対し適切な指導を行わなかったこと、及び事実と異なる記載のある監査報告書を外国人技能実習機構に提出したことから、認定計画に従って技能実習を行っていないと認められ、技能実習法第37条第1項第4号(技能実習法第39条第1項)に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。
・処分理由
傘下の実習実施者における出入国若しくは労働に関する法令の規定に違反する事実を隠蔽する目的で、虚偽の監査報告書を外国人技能実習機構に提出したことから、技能実習法第37条第1項第1号(技能実習法第25条第1項第2号(技能実習法第39条第3項))及び第4号(技能実習法第39条第3項)に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。
などを見ると、安全管理を軽視していたことやコンプライアンス意識が著しく欠如していることがうかがえる。
■技能実習生に対する軽視
こうした安全管理に関する事故は後を絶たない。しかし、こうした報道を見るとことさら外国人労働者に対する労働環境の劣悪さが際だって見える。それはどのような背景があるのだろうか。
こうした問いにはChatGTPが有効かもしれない。まとめてみてもらった。下記の通りである。
1. 外国人技能実習生の労災リスク
厚生労働省の統計や労働基準監督署の指摘によると、技能実習生の労災発生率は、日本人労働者に比べて高い傾向にあるとされている。たとえば、
・厚労省の2021年の報告では、技能実習生の労働災害は年間約1,000件以上報告されており、日本人労働者と比べて発生率が高い。
・過去の新聞報道でも、実習生が「安全管理の指導を受けていなかった」「十分な保護具が与えられなかった」という事例が複数指摘されている。
2. 日本人と外国人での違い
・言語の壁:
日本語が十分に理解できない実習生は、安全教育を受けても理解が難しく、結果的に危険な作業をしてしまうリスクが高い。
・教育・研修不足:
特に中小企業では、外国人向けの安全教育プログラムが整備されていないことが多く、現場で「見よう見まね」で作業させることもある。
・過重労働・長時間労働:
外国人技能実習生は、労働時間や休暇について日本人以上に厳しい環境で働かされることが多いという指摘もある。実際に、労基署の監査で「長時間労働・未払い賃金」が頻繁に問題視されている。
3. 日本人労働者の労働安全も軽視されている恐れもある
日本人労働者に関しても、業種によっては労災が多発している業界がある。たとえば、
・建設業や製造業では、技能実習生に限らず安全対策が不十分な企業も多く、日本人も巻き込まれている。
しかし、日本人は労災が発生した場合、労基署への相談がしやすく、弁護士や労働組合を通じた対応ができる。一方で、技能実習生は「帰国させられるのでは」「雇用主に逆らえない」といった心理的な圧力から、問題を表面化させにくい。
4. まとめ
結論として、外国人技能実習生は、日本人労働者に比べて労働安全が軽視されやすい傾向があると言える。ただし、それは外国人だからというよりも、言語の壁・研修の不足・法的弱者としての立場が影響していると考えられる。日本人労働者も業界や企業によっては労働安全が軽視されていることはあるが、外国人技能実習生の方がより深刻な状況に置かれるケースが多い。
報道で「外国人」が強調されるのは、この制度自体が「日本人の雇用補完」として運用されているため、政策的な問題としてクローズアップされやすいこともありうる。
(以上)
どうだろう。なるほどと思うことも多い。特に「2. 日本人と外国人での違い」の記載は日本人では書けないで良い事柄に対しを外国人技能実習生への配慮が必要になる。これを軽視していると言うことであれば、ISO9001:2015という規格への適合性は認められない。
経営者はもう一度考えてもらいたい。
■他人事だと思わないで欲しい
社会的信用を損なう行為は、すぐに企業の地盤を揺るがすものではない。しかし時間差を持って様々な影響が出かねない。業績という側面もあるだろうし、近年の人材不足に対する競争力の欠落なども懸念される。
下記記事は「愛媛のバイト・正社員求人サイト ワーク・ネット」の記事である。
こうしたサイトに掲載されると言うことの意味も考える必要がある。
○ 今治造船 労働者の安全管理怠ったか 実習生受け入れ停止処分
認定していた2000件余りの実習計画を取り消しに
2025年3月25日
出入国在留管理庁などは、技能実習生を受け入れている今治市の「今治造船」が、現場の労働者の安全管理などを怠っていたとして、認定していた2000件余りの実習計画を取り消し、今後5年間、実習生の受け入れを停止する処分を行いました。
処分を受けたのは、今治市にある国内造船最大手「今治造船」です。
出入国在留管理庁や厚生労働省によりますと技能実習生を受け入れていた「今治造船」は、現場の労働者の安全管理などを怠っていたということです。
https://www.work-net.co.jp/blog/detail.html%26id%3D264
安全を軽視する企業は、それだけで忌避されるかもしれない。
2025/03/29