ISO9001と経営:「4.1 組織及びその状況の理解」(シーメンスのリストラは他山の石か)


ISO9001と経営:「4.1 組織及びその状況の理解」(シーメンスのリストラは他山の石か)

「そんなことは関係ない」としてしまうことのリスク

■世界は思いのほか狭くなっているというリスク

ISO9001:2015という規格は、それが2015年版になったことで、経営を取り巻くマネジメントとしてのPDCAと製品実現のODCAを中核とした箇条8の二重構造になったと理解している。

その外側のPDCAも、追補版で示された「気候変動」に象徴されるようにグローバルな視点も要求してきていると考えられる。これは、従来が顧客要求事項を満たす製品が主であったとしても世界経済にも目を向けることを求めていると考えあられる。

●ますます動的で複雑になる環境において,一貫して要求事項を満たし,将来のニーズ及び期待に取り組むことは,組織にとって容易ではない。組織は,この目標を達成するために,修正及び継続的改善に加えて,飛躍的な変化,革新,組織再編など様々な改善の形を採用する必要があることを見出すであろう。

規格要求事項のこうした文面も型どおりに受け止めているだけでは十分とは言えないかもしれない。

■本当に関係ないのか

下記の記事がある。

○ シーメンス6千人削減 中国で産業用機器低迷  2025/03/19

 【ブリュッセル共同】ドイツの機械大手シーメンスは18日、2027年までに世界で約6千人を削減すると発表した。工場の自動化やデジタル化を支える産業用機器の部門が中心で、中国やドイツでの需要低迷が響く。ドイツの産業界では、高級車メーカーのアウディが最大7500人の削減を発表したばかりで、リストラが拡大している。

https://nordot.app/1274867388245918362

この記事を(ドイツ企業である)シーメンスの苦境という視点でだけで見る以外にもいくつもの視点がある。例えば 中国経済の低迷については下記の様な指摘がされている。

(1) 公式統計・経済指標の動向
・中国のGDP成長率の鈍化
 中国政府が発表するGDP成長率は、以前の7~10%台から近年は5%前後に低下。
 2024年の成長目標も 5%程度 となっており、過去の水準と比較すると明らかに鈍化している。
・製造業PMI(購買担当者指数)の低迷
 PMIは50を下回ると景気減速を示す指標。
 2023年後半から50を下回る月が増加し、製造業の停滞を示している。

(2) 不動産市場の低迷
・大手不動産企業(恒大集団、碧桂園など)の経営危機
 不動産業は中国GDPの約25~30%を占める重要な産業だが、過剰債務問題と政府の規制強化で投資が減少。
 住宅価格の下落 → 消費者心理の悪化 → 住宅ローン返済意欲の低下 → 銀行の貸し渋り、と負の連鎖が起きている。

(3) 若年層の高い失業率
 公式発表では16~24歳の失業率が21.3%(2023年6月時点)と過去最高を記録。
 その後、中国政府は 若年層の失業率の公表を停止 したため、実態はより深刻である可能性がある。

(4) 外資の投資減少・企業の撤退
・米中対立の影響で外資企業の投資が縮小
 アップル、サムスン、フォックスコンなどが中国以外(インド、ベトナム)に生産拠点を移す動き。
 外資系金融機関の中国撤退(例:ゴールドマン・サックスが中国株への投資を縮小)。
・中国国内企業の倒産増加
 企業の債務不履行が増えており、金融リスクの高まりが懸念される。

もちろん、中国政府の統計の信頼性や欧米・日本メディアのバイアスも可かている恐れがあるのですべてを鵜呑みにすること自体は危険であろう。

こうしたことが日本の景気にどう影響するかは独自に調べておく必要がある。

■ 4.1 組織及びその状況の理解

漫然渡航した記事を見るのではなく、何が影響しているかをモニタリングすることを規格は求めている。

4.1 組織及びその状況の理解
組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。

それは、例えば上記を前提に景気動向指数を見ることも含まれる。

例えば、内閣府が発表するDI指数がある。その先行指数を見ると、2021年以前はある程度の景況感の力強さがあるが、2022年以降は不安定になり50を下回る事が多き。2024年に一端持ち直したかに見えるが、2024年8月、9月は低くなっている。このような状況をもたらす要因には何が考えられるか。こうしたことを考える習慣を付けなければ、規格要求事項は単なる祝詞に成り下がる。

参考:DI
内閣府が毎月公表する景気動向指数のひとつで、生産や消費、物価などの景気変動に関係する複数の指数を合成して算出する。DIは0%から100%の間で変動し、目安として継続的に50%を超えれば「景気が上向き」、50%を下回れば「景気が下向き」と判断される。先行指数、一致指数、遅行指数の3タイプがあり、市場では景気の先行きを示す先行指数に注目が集まる。
https://www.nomura.co.jp/terms/english/d/A02101.html

参考:景気動向指数(速報、改訂値)(月次) 結果
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html

2025/03/31