戦略人事:シニア層への待遇は施しではない(三菱電機などの再雇用政策を考える)


戦略人事:シニア層への待遇は施しではない(三菱電機などの再雇用政策を考える)

★ChatGTPで調べた結果も併記する。

■シニア層活用の潮流

雇用に関する法律上の強化が進んでいると感じる記事がある。

○2025年度から65歳までの雇用確保が義務化へ!企業ごとに異なる3つの対応方法
65歳まで働くメリットとは? 2025.01.03

 2025年4月から、すべての企業において「65歳までの雇用確保」が義務化されることをご存知でしょうか。
この制度の導入により、従業員は希望すれば65歳まで働き続けることができ、企業はそのための環境を整える必要があります。

https://limo.media/articles/-/73594

定年延長の流れは数年前からあり、一部55歳定年の企業がないわけではないが、徐々に定年の延長が進み、いずれこうした「定年」という枠組みがなくなると云われている。

こうしたことの背景には「社会要請+人材不足」があると言われている。すなわち、

(1)社会要請(年金・労働人口の減少)
・日本の少子高齢化により、65歳以上の就労人口が増えることが必然。
・年金制度の持続性を考慮すると、働ける人には長く働いてもらいたいという国の方針がある。
(2)人材不足という現実的な問題
・特に中小企業や地方では若手人材が集まらず、シニア層を活用せざるを得ないケースが増えている。
・企業がシニアを雇い続けるのは、「義務だから」だけでなく、そもそも人がいないからという現実的な理由もある。

と言うのが一般的な論調であろう。
こうした「社会要請+人材不足」の状況が短期間で変るはずもなく、企業はシニア層も含めた人材戦略に舵を切らざるを得ない。

■企業が積極的に動き始めている予感

こうした潮流は、単に労働法規制の強制されるという動機付けでなく、下記の様な動機付けが顕在化してゆくだろう。

(1)人材不足の補完
 特に製造業・介護・建設・サービス業では、人材不足が深刻で、即戦力としてのシニア層の活用が不可欠。若手がいても育成には時間がかかるため、経験のあるシニアが「トレーナー」「メンター」として活躍できる。

(2)労働コストの最適化
 シニア再雇用は「フルタイムの正社員」ではなく、「短時間・高スキル」の形態が増えている。「週3勤務」「フリーランス的な契約」 など、企業側がコストを抑えつつ活用できる制度を整えれば、シニア側も柔軟に働ける。

(3)企業のブランド向上(ESG・人的資本経営)
 「高齢者を活用する企業は、社会的評価が上がる」という流れがある。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価でも、「多様な働き方を提供する企業」が評価されやすい。

(4)技術・ノウハウの継承
 高度なスキルや専門知識を持つシニアは、即戦力としてだけでなく、知識を伝える役割でも価値がある。「短期的に若手に置き換えればOK」ではなく、「シニアを活かしながら、次世代を育てる」視点が重要となる。

(5)退職金・年金制度の変更による影響
 企業にとって「60歳で完全に雇用を切ると、退職金コストが一気に発生する」という問題がある。70歳まで段階的に働いてもらうことで、企業の財務的な負担も分散できる。

どれか一つと言うことではなく、企業独自の動機付けがおこなわれ、それに呼応するかのように人材戦略変ってゆく。その徴候はすでに現われている。

○ 三菱電機、シニア再雇用者の処遇見直し 1年ごとの契約廃止、賃金も変動制に 2025年03月28日

三菱電機は28日、定年退職後に再雇用されるシニア社員について、2026年度から評価制度などを変更すると発表した。1年ごとに契約を結ぶ方式を廃止するほか、賃金は個人業績に応じた変動制とする。シニア層の働く意欲を向上させ、挑戦や成長を促す。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025032801177

○ 森永製菓、定年制度の廃止・管理職昇格年数の短縮など、人的資本投資の拡充に向け人事制度改正を4月実施
2025/03/21

新制度の主な改正点
・若手・中堅の従業員がさらにチャレンジできるように、管理職への昇格年数を最短で3年短縮可能な制度に改正
・職務の明確化とキャリア自律の後押しを目的に、職務記述書を全社の250以上のキーポジションで導入
・多様な人材の活躍を図るため、職務等級として、部長などの「職位」に加えて、エキスパートなどの「専門性」を基準とした等級も新設
・年齢に関わらない活躍を推進するため、56歳での役職定年の制度を廃止

https://bizzine.jp/article/detail/11351

■戦略的意思の欠落の懸念

人事制度の改訂は、表面的な薄っぺらさをさらけ出すことがある。本来、戦略人事というならば、起業理念、経営理念、ミッション・ビジョン・バリューとの関係性で語らなければならない。なぜ、シニア層を重視するのかと言うことを単に「シニア活用は大事です」という一般的なスローガン以上の哲学的な言葉を表現することも求められる。

それは企業により異なり一般論は提示できないが、下記の様なモノも例としてあげられる。

1. 「経験とは、未来を築く資本である」
2. 「時間を超えて続く知恵こそ、組織の本当の競争力だ」
3. 「企業は世代を超えたバトンリレー」
4. 「変化を支えるのは、新しい知恵と古い知恵の融合だ」

少し考えて欲しい。もっとも、こうした人事制度の改訂は、背景に「競争力を高めたい」という意図があったとしても、それは企業側のエゴとしか映らない。シニア層を重視しているという一方で高齢者を中心としたリストラを続ければ、いわゆるダブルスタンダードになりかねない。

しっかり考えることだ。さもないと、志あるヒトは早期退職を選択することになる。伝承などは二の次だろう。

2025/04/03