世間に転がる意味不明:2024年問題は解決したのか(2.自動運転バス)
■はじめに
2024年当初の人手不足問題がクロースアップされ、その中でバス運転手やタクシードライバーの不足の問題があった。バズの運転手不足の問題は金剛バスの廃止などが契機になり自動運転などの取り組みが進められた。タクシーに関しては、特にオーバーツーリズムの問題と併せてライドシェアの展開として話題に上った。
しかし、最近ではこうした問題に関しての報道をみなくなった。はたして2024年問題は解決したのだろうか。こうした視点で、現時点(2025/06/01)で整理できる範囲でまとめてみたい。論点は数多くあるので、連作とする。「2024年問題は解決したのか(n.***)で表記する。
なお、文章作成にあっては生成AIとの質問と回答の繰り返しで得た情報を利用している。
ここに書かれていることを鵜呑みにせず、自分でも調べてほしい。
■ 自動運転バスの実証実験の試み
「日本版型ライドシェア」が話題になるのと並行して、各自治体では「自動運転バス」の試行・実証実験が盛んに行なわれた。その報道は狂想曲のように喧伝された。
少ししつこくなるが、列記しておく。
○熊本県内初、自動運転実証実験を12月18日開始へ
2024年12月4日
使用される車両は「EVO(エヴォ)」で、定員は12名だが、実証実験時は乗客9名とオペレータ1名の計10名で運行する。最高速度は20km/h未満で、1回の充電で約9時間、100kmの自動走行が可能だ。
この実証実験を通じて、宇城市の地域住民や周辺地域、観光客が安心して利用できる安全で快適な自動運転サービスの実現を目指す。
https://response.jp/article/2024/12/04/389350.html
○約1.7キロを自動運転の電気自動車が走行 自動運転EVバス実証運行 1か月の乗車率は62% 山口県周南市
2024年12月5日
実証運行は、運転士不足などを解決し持続可能な公共交通を目指そうと、県が周南市などと協力して先月、開始しました。JR徳山駅から徳山動物園までのおよそ1.7キロを自動運転の電気自動車が走ります。市のまとめによると、11月の1か月間にバスに乗車した人の数はのべ2157人で、乗車率は62パーセントでした。
これまでに、大雨や車体のセンサーの不具合などで17便が運休しましたが、大きな事故やトラブルは確認されていないということです。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tys/1597838?display=1
○伊予鉄、自動運転路線バス運行へ 25日から、全国初
2024年12月09日
伊予鉄グループの清水一郎社長は9日、特定条件下で無人運転できる「レベル4」の自動運転の路線バスを25日から営業運行すると発表した。最高時速は35キロで、松山市内の伊予鉄道高浜駅から松山観光港までの一般道約800メートルを毎日運行する予定。国土交通省によると、レベル4による路線バスの営業運行は全国で初めて。
清水社長が9日、松山市で開いた専門家らとの懇談会で明らかにした。バスは「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市)の乗客12人乗りを使用し、伊予鉄バスが運行する。万が一の事態に備え、バスを運転できる大型2種免許を持つ保安員が乗車するほか、専用のシステムで遠隔監視する。
https://www.47news.jp/11878545.html
○操作の一部はシステムにお任せ…県内初の自動運転バス実証実験スタート 時速20キロ未満、市役所起点に市街地を1日5往復 南さつま
2024/12/15
鹿児島県南さつま市は14日、県内初となる自動運転バスの実証実験を始めた。操作の一部をシステムが担う「レベル2」相当で実施し、市役所を起点に市街地を1日5往復する。運転手不足などで公共交通維持が困難となる中、持続可能な交通体系確保や地域活性化を図る。将来的には無人運転可能な「レベル4」を目指す。
https://373news.com/_news/storyid/205986/
○沼津駅~沼津港で自動運転バス実験 予約不要で一般乗車15人まで 最高速度40キロ 無人運転目指す
2024年12月7日
静岡県沼津市は6日、JR沼津駅と沼津港を結ぶ自動運転バスの実証実験を始めた。手動運転が一部必要な「レベル2」。今後、特定条件下で無人運転が可能な「レベル4」を目指し、将来的にはバス会社の運転手不足解消などにつなげたい考えだ。
実証実験には、中国の電気自動車(EV)大手比亜迪(BYD)の小型バスが使われた。アクセルやブレーキ、ハンドルの操作を部分的に自動化。バス外側にライダーと呼ばれるセンサーを8カ所に、カメラを10カ所に取り付け、道路上の車や歩行者、信号の色などを判別し、自動で停車したり発進したりした。路上駐車を避けて車線変更する際は、運転手の判断で手動運転に切り替えた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/372193
○いすゞ、平塚市で自動運転バスの実証実験 駐車車両の自動回避や信号機連携など検証
2024.12.05
いすゞ自動車は4日、神奈川県平塚市で自動運転バスの実証実験を24日から2025年1月20日まで実施すると発表した。運転士が同乗するレベル2(高度運転支援)だが、路上の駐停車車両の自動回避やバス停からの自動発車、信号機との連携などを検証する。1月9~20日には、初めて一般向けの試乗も実施する。
https://www.netdenjd.com/articles/-/310556
まだ実証実験のレベルではあるが、各地方都市で進められているようだ。
レベル4自動運転は、特定条件下(ODD: Operational Design Domain)において、システムが全ての運転操作を担い、ドライバーが不要となるレベルの自動運転を指す。昨年来行われている実証実験では、主に以下の成果が得られているという。
このあたりをGeminiに訊ねてみた。概ね納得できるので引用する。
1.技術的進展と課題の特定:
・高精度な自律走行の実現: 限定された区間(例:BRT区間、公園内、特定の市街地ルートなど)において、車線維持、障害物検知・回避、信号・標識認識、定時運行などが高い精度で実現されている。
・様々な環境下での検証: 降雨や夜間など、多様な気象条件下での走行性能や、他車両・歩行者との協調に関するデータが収集され、AIの学習データとして活用されている。
・遠隔監視・操作システムの確立: 車両にドライバーが乗車しない状況での、遠隔地からの監視・緊急時介入システムの有効性が確認されている。これにより、複数台の車両を少人数で管理する可能性が示されている。
・課題の明確化: 想定外の状況(例:違法駐車、歩行者の予測不能な動き、通信障害など)に対するAIの判断能力の限界や、システムの冗長性、サイバーセキュリティ対策などの課題が洗い出され、今後の技術開発にフィードバックされている。
2.社会受容性の向上と課題:
・住民の理解と期待: 実証実験を通じて、地域住民の自動運転バスに対する理解が深まり、特に高齢者や交通弱者からの移動手段としての期待が高まっている。
・安全への懸念: 一方で、依然として「本当に安全なのか」といった不安の声も存在し、運行の安全性に対する徹底的な情報公開や、緊急時の対応への信頼性確保が課題として残っている。
・法制度との整合性: 現行の交通法規との整合性や、万一の事故発生時の責任の所在など、法制度面での課題が浮き彫りになっている。
3.事業モデルの構築と地域課題解決への貢献:
・新たな公共交通の可能性: 過疎地域や交通不便地域における住民の「足」として、路線バスの廃止代替や、ラストワンマイルの移動手段としての有効性が検証されている。
・運行コスト削減の可能性: ドライバーレス化による人件費削減の可能性が示唆されており、持続可能な公共交通の実現に向けた事業モデル構築への期待が高まっている。
・観光利用の模索: 観光地での周遊バスとしての活用など、新たな需要創出の可能性も探られている。
(ここまで)
”路線バスの廃止代替や、ラストワンマイルの移動手段としての有効性が検証されている。”と言う文脈は、公共交通機関が抱えている、利用者の減少と公共サービスの維持のトレードオフを解消する事への期待感も表われている。
■ 関連する施策展開が後押しする
こうした交通政策は、単一の交通政策ではなく、もう少し広い視点での政策がベースになっていると考えられる。
参考になるのが、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」であろう。
関連資料として下記がある。
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の概要(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/overview.html
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sipgaiyou.pdf
この中で<SIPの仕組み>として以下が列記されている。
○総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が、Society5.0の実現に向けてバックキャストにより、社会的課題の解決や日本経済・産業競争力にとって重要な課題を設定するとともに、そのプログラムディレクター(PD)・予算配分をトップダウンで決定。
○基礎研究から社会実装までを見据えて一気通貫で研究開発を推進。
○府省連携が不可欠な分野横断的な取組を産学官連携により推進。マッチングファンド等による民間企業の積極的な貢献。
○技術だけでなく、事業、制度、社会的受容性、人材の視点から社会実装を推進。
○社会実装に向けたステージゲートやエグジット戦略(SIP後の推進体制)を強化。
こうしたグランドデザインの中に自動運転などに関する下記の取り組みが関連するだろう。
◆ 自動運転(システムとサービスの拡張)
自動車・自動運転分野で、世界最高性能のシミュレーション技術(DIVP®)を活用し、2022年7月に新会社を設立。
ツールチェーン構築を軸に各社との互恵的なパートナーシップを築き、AD安全性評価の基盤確立を目指す。
自動運転が国策レベルでの活動の中に組み込まれている。
これに加え下記が特徴的であろう。
(1)財政支援
主に下記が該当する。
① 地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)
所管: 国土交通省
内容:
・地方公共団体、または地方公共団体を代表団体とするコンソーシアムが対象。
・自動運転車両の購入費用、車両の改造費、自動運転システムの構築・保守・運用費など、実証実験やサービス導入にかかる多岐にわたる経費が補助対象となる。
・補助率・上限額: 地域区分(人口規模など)によって補助率が異なり、最大で補助対象経費の4/5(80%)、上限額は数億円規模(例:重点支援事業で最大3億円、一般支援事業で最大1億円)に及ぶこともある。これは、初期投資が非常に高額となる自動運転車両の導入やシステム構築を強力に後押しするためのもの。
特徴: 重点支援事業として、地域公共交通の先駆的・優良事例として横展開できる事業が優先的に採択される。持続可能性を踏まえた計画の策定や、地域公共交通計画との連携が求められる。
② 共創・MaaS実証プロジェクト(日本版MaaS推進・支援事業)
所管: 国土交通省
内容:
・AIオンデマンド交通やMaaS(Mobility as a Service)など、「デジタル」や多様な関係者(医療・介護、教育、商業等)の「共創」による交通プロジェクトを各地の交通状況に応じて支援する。自動運転バスの運行も、このMaaSプロジェクトの一環として支援対象となる。
補助率: 地方公共団体や連携する民間事業者等に対し、補助対象経費の2/3から定額補助(上限1億円など)が行われる場合がある。
③ 地域の移動課題解決に向けた自動運転サービス開発・実証支援事業
所管: 経済産業省
内容:
・地域の実情に応じた移動サービスの開発や、自動運転技術の社会実装を促進するための実証実験を支援。特に、自動運転技術を活用した地域の移動課題解決を目指すプロジェクトが対象。
特徴: 技術開発と社会実装の両面を支援し、自動運転の新規参入拡大や関係者の裾野を広げることを目的としている。
(2)法整備
法整備については下記があげられる。
・改正道路交通法(2023年4月施行): レベル4自動運転サービス(特定自動運行)を可能にするための法改正が行われ、許可制度や安全確保措置などが定められた。これにより、限定されたエリアでの無人運行が可能になった。
・道路運送車両法: 自動運転車の安全性確保のための技術基準や型式認定制度の整備が進められている。
・責任の明確化: 事故時の責任に関する議論が進められており、自動車損害賠償保障法などの見直しも検討されている。
レベル4の自動運転が地方自治体レベルで試行可能なのは、こうした事が背景にある。
地方においては、人口減少、過疎化、産業の衰退など多くの課題があり、これを解決する為のリソース不足(特に財源問題)は課題であり、国の制度的な支援がなければ中々動けない。自動運転バスの実証実験が成功すれば、問題のいくばくかは解決できるめどがでる。
■将来への展望
最終的に、自家用車も含めて商用運転されるモビリティは自動化されると思っている。
それが最も近いものが自動運転バスだろう。
すでに「軌道」を前提としたモビリティの自動運転は進んでいるだろう。
もちろん、人が乗る以上安全性は必須であるが、貨物や物流であればある程度緩くなる。
自動運転バスで培った技術は、ロジスティック全体を革新に結びつけるだろう。
期待を持ちたい。
2025/06/03