世間に転がる意味不明:未来の仕事の考え方(AIとロボティクスと自動化)


世間に転がる意味不明:未来の仕事の考え方(AIとロボティクスと自動化)

■ はじめに

「AIの進化により、事務職、レジ係、運転手、警備員など、定型的な作業や単純な判断を伴う仕事がなくなる可能性があります。一方、創造性やコミュニケーション能力、高度な判断力を必要とする仕事は、AIに代替されにくいとされています。」という話はずっと続けられている。

しかし、今やこのような話は曖昧な議論を進めるだけである。
システム的な思考をすれば、Input-Process-Outputで考えた場合、Outputの安定性を担保すべき仕事は、すべてAIやロボティクス、自動化の代替が進み、考える仕事であっても「知識量」がものを言う仕事もAIの補助により、マンパワーがものを言う時代は終焉を迎えるだろう。

銀行の窓口で投資の相談を受けるコンサルタントも、アバターなどを利用し一定程度の対応をAIに任せ、最終的なところを専門家がすれば良い。と言う状況になれば、今まで100人必要だったことが10人でできる様になる。実質的に仕事がなくなって行くのと同じである。

だからといって、あなたの「仕事」がなくなるわけではない。ただし、その仕事は変質するだろう。その時に「仕事」の変質に対応することで、「仕事」の消失を防ぐことができる。

■ 無くなる仕事の予兆

AIなどにより、現在の仕事の需要がなくなる予兆がある。

【企業内のシステムエンジニア】

○Geminiが毎朝のタスクや情報収集を自動化 神機能「Scheduled actions」を追加
2025年06月09日

 グーグルは6月6日(現地時間)、生成AI「Gemini」アプリにおいて、ユーザーのタスクをあらかじめ設定した日時に自動で実行する新機能「Scheduled actions(以降、スケジュールされたアクション)」の提供を開始したと発表した。これにより、Geminiはさらにパーソナルで、積極的なアシスタントへと進化を遂げる。

例えば、毎朝起床したタイミングでその日のカレンダーの予定と未読メールの要約を受け取ったり、毎週月曜日にブログ用のアイデアを5つ生成させたりといった定型的な作業を自動化できる。さらに、応援しているスポーツチームの最新情報を毎日入手したり、授賞式の翌日にその概要をまとめさせたりといった単発のタスク予約も可能だ。ユーザーが必要なことと時間をGeminiに伝えるだけで、あとはよしなに計らってくれるというわけだ。

https://ascii.jp/elem/000/004/280/4280488/

かつて、企業内のシステム部門は、IT投資の最前線におり、組織内ノンフラ、業務支援のプラットフォームなどに労度を採られ、バックログと言われる積み残し作業に終われていた。当時は、スクラッチでシステム開発をしなければならなかった時代である。いまや、既存のパッケージの組合わせでできるし、クラウドサービスも充実してきている。ノーコードでアプリも作れる。

○自身のコードを書き換え“成長するAI”――Sakana AI、新たなAIエージェント「DGM」発表
2025年05月30日

 一般的なAIモデルは、事前学習などによって性能を高めるが、学習の完了後に自動的に性能が向上することはない。一方DGMでは、自身のPythonコードを読み取り、AIエージェント機能を構成するWeb検索ツールやワークフローなどを、自ら修正できる仕組みを採用。修正後のコーディング性能を自ら評価する機能も備え、継続的に自身の性能を改善できるようにした。

https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2505/30/news130.html

SEという仕事の大部分がAIで代替されれば、要員数はそれほど要らない。

【通訳/速記/書記】

○ ウェブブラウザのみで無料の録音・文字起こしができる「EasyRec.app」を使ってみた
2025年06月03日

ウェブブラウザのChrome・Edge・Safariが使用できる環境であれば、特別な機材を用意しなくても、無料で録音・文字起こしができるというウェブアプリ「EasyRec.app」が公開されていたので、実際に使ってみました。
・・・
もう一度ボタンをクリックすると緑色に戻り録音が終了。下部のダイアログに文字起こし内容が表示されます。文字起こし内容はテキストファイルとしてダウンロード可能です。
テキストファイルの中身は「[タイムスタンプ] 発言内容」という、扱いやすい形になっています。

https://gigazine.net/news/20250603-easyrec-app/

○文字起こしテキストの編集に連動して動画をトリミング ~「Clipchamp」に新機能
タイムラインの操作いらずで編集効率が大きく向上
2025年6月12日

米Microsoftは6月12日(現地時間)、動画編集アプリ「Clipchamp」に新機能を追加したと発表した。「Clipchamp」にはAIを用いて発言をテキストに書き起こすトランスクリプト機能が備わっているが、そのトランスクリプトから不要なテキストをカットすることで動画をトリミング(削除)できるようになるという。

https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/2021994.html

○文字起こし→要約・アウトプットまで全自動 厚さ3mmのAIボイレコ「PLAUD NOTE」が進化していた
2025年06月12日

 こうしたサービスやツールはスマートフォンに組み込まれ、スマホ録音から文字起こしというところまでは自動化できた。

とはいえ、多くの場合は音声が文字になるだけである。インタビュー形式の原稿では、相手のしゃべったニュアンスをそのまま記事化するので、ベタに文字起こしされていることは重要だ。だがシンポジウムや勉強会などで語られたものは、その聞いた話のエッセンスをまとめる必要がある。

こうした後処理を行うにもAIが利用できるが、それは文字起こしとはまた別の作業になる。複数のツールを渡り歩いてでも仕上げるのが仕事だろうと言われればそうなのだが、文字起こしから要約、エッセンスの抜き出しや話の構造化といった分析までいっぺんにできたら便利に違いない。

そうした録音から文字起こし、まとめまでをワンパッケージにまとめたのが、「PLAUD NOTE」だ。2年前にクラウドファンディングに登場したときは、「AI連携できる薄型レコーダー」ぐらいの認知だったが、その後AI側の機能が強化され、話を聞いてからアウトプットするまでの一気通貫環境といった格好になっている。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2506/12/news110.html

今でも、会議などはあらゆるところで実施され、その記録を残すことは求められているだろう。それは知的生産活動ではなく、単なる労働である。社内の会議でも書記は求められ、議事録の作成は必須である。しかし、人力で起こす議事録にはモレヌケが発生しやすくなり、またこれに従事したところでキャリアになるとは思えない。

やりたくないと思っている仕事はなくなって当然である。

【教師】

正確には、一人一人に寄り添うことをせずに画一的に教科書をトレースするだけの教師は不要である。

○アメリカに広がる「AI学校」通常授業はわずか2時間、AIが教え、先生は「ガイド役」に
2025年5月31日

通常科目の授業は、AI(人工知能)によって生徒一人一人に合わせて調整されたプログラムで行われ、午前中の2時間でおしまい。午後は、スピーチや金融リテラシー、あるいは自転車の乗り方など、「ライフスキル」を学ぶ。

一般の学校で教員に当たる人たちは、ガイド(案内役)と呼ばれ、子供たちの自立心を高める学びをサポートする。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/05/553782.php

■ 仕事の再定義

2011年に『ニューヨーク・タイムズ』紙で米デューク大学の研究者、キャシー・デビッドソン氏の研究が発表され、話題になりました。

「2011年度に入学した小学生の65%は、大学卒業時、いまは存在していない職につくだろう」

この報道がされたのが2011年であり、すでに10年以上たった現在、小学生どころか中学卒業時に存在している職業がなくなっている恐れがある。それほど技術の進化が激しい。もっとも、こうした記述は曖昧なところが多い。確かに技術の進歩でなくなる仕事はあるだろうが、多くの仕事は代替される仕事に移管されるだけであろうし、新たな仕事も増えることになる。

自動運転のバスが普及すれば、手動で運転するバスの運転手はへるかもしれないが、リモートで運行監視する職業が発生する。仕事という意味をもう一度考えてみる必要がある。

実は気になった記事がある。

第一生命保険株式会社が、全国の小・中・高校生3,000人を対象に<第36回第一生命『大人になったらなりたいもの』アンケート>が実施され、男子では、会社員、ユーチューバー/動画投稿者、ゲームクリエイター、野球選手、サッカー選手、公務員、警察官、ITエンジニア/プログラマー、運転士/ドライバー、料理人/シェフ、ITエンジニア/プログラマー、医師、建築士と出てくる。

いったい会社員というのは「職業」なのか?おそらくは違う。

・会社員
雇用形態の区分であり、職業ではない(何の職かが不明)
・ユーチューバー / 動画投稿者
活動形態である。メディア業の一部とも言えるが、職業より生き方/表現手段に近い
・公務員
制度的身分。役所勤務などの総称であり、具体職務が不明確(例:行政職?消防士?)
・野球選手・サッカー選手
狭義のプロフェッショナル職。ただし狭き門・不安定性あり
・ITエンジニア/プログラマー
明確な職業といえる。職能・職務が明確で、「働く内容」に言及している
・医師、建築士、警察官
旧来からの典型的職業。専門性・制度・職務内容が明確。典型的な「職業」定義に合致

こうしてみると、何をしたいかではなく、どう見られたいか(社会的なラベリング)あるいは働くことより、“生き方・自分の姿”への関心という傾向を反映している可能性が高い。

従って、「仕事の中身(職務)」に着目すべきであり、「肩書き」や「イメージ」で職業を選ぶ考え方を改めなければならない。

すなわち「どんな働きが、どんな文脈で意味を持ち続けるか?」が重要になる。

■ 職業の再定義

我々が未来の仕事を創造し、そこでの居場所を探すのであれば、まずは「仕事」を以下のの視点で見直す必要がある、

① アウトプットの標準性
結果が誰にでも同じで良いか。そのような仕事は自動化・汎用性・定型性がキーとなる。
② 意味のパーソナル性
誰に向けて、どんな状況で、どう届けるか、すなわち文脈適応・個別性・関係性がキーとなる。
③ 価値の創造性
過去の延長ではない新しい価値を生むか、非定型・創造・発見がキーとなる。

その上で、すべての仕事は以下のような特性を持ったものだけが人間の仕事となる。

① 意味の共創性
単に情報を渡すのではなく、意味を一緒に作る行為
② 関係性の中での判断
相手の状況・心情・文脈を踏まえた選択が必要
③ 自らも影響されながら動く
一方通行ではなく、相互作用の中で生成される動き
④ 感情・想像・予期しない事象への対応
計画にない「ゆらぎ」こそが価値となる領域

このような仕事だけが人間の仕事になるだろう。
そして、こうした仕事は今でもあるし、自動化が進んでもより高度化のためには残る仕事である。

仕事がなくなるのではない。変質するだけである。

2025/06/27