戦略人事:AI・ロボティクスとリストラ(2.戦略人事の放棄への懸念)


戦略人事:AI・ロボティクスとリストラ(2.戦略人事の放棄への懸念)

※少し断片的な記事になるので思いついたまま記載。同じテーマで少し長い連作になる。

■ 知識と経験を重視しない政策

意思決定などでAIを使いこなす為には、「知力」が必要だという話をした。
知力のベースには「知識」や「経験」が一定の役割を果たす。知力向上は「年齢」で決まるものではない。もちろん先天的な才覚は影響するかもしれないが、それが発露するかどうかは環境次第である。

こうした文脈で考えると、40歳以上だからと言ってリストラの対象にすることは潜在的な「知力」の放棄にしか見えない。しかし、こうした施策を採る企業が多いコトは最近の報道でも見て取れる。

○ 日本通運、希望退職300人募集 55歳以上の事務系社員
2025年07月18日

NIPPON EXPRESSホールディングスは18日、傘下の日本通運で300人程度の希望退職者を募集すると発表した。対象は、管理職を含む55歳以上の事務系社員約3000人。組織の活性化を図り、激変する経営環境や課題に迅速に対応することが目的だとしている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025071801038

○ パナソニック 早期退職の募集 勤続5年以上40~50代が主な対象
2025年7月11日

パナソニックホールディングスが進めるグループの構造改革をめぐり、傘下の事業会社「パナソニック」による早期退職の募集内容が明らかになりました。勤続5年以上の40歳から59歳の社員が主な対象となっています。

パナソニックホールディングスは、今年度からグループの構造改革に乗り出していて、グループ各社の営業や管理部門を中心に早期退職を募集するなどして、全体の人員のおよそ5%にあたる1万人規模の削減を行うとしています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250711/k10014860431000.html

○大手ミシンメーカーJUKI 早期退職を募集へ 米関税措置など影響
2025年7月14日

大手ミシンメーカー「JUKI」は、トランプ政権による関税措置などの影響で、厳しい事業環境が続くと見込まれるとして、早期退職を募ることを決めました。

発表によりますと、会社は14日、取締役会を開き、子会社3社を含めて早期退職を募ることを決めたということです。

対象となるのは、東京 多摩市の本社や、栃木県にある大田原工場に勤務する50歳以上65歳未満の再雇用を含む正社員です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250714/k10014863251000.html

ここで対象となるのは

① 一定年齢以上(40歳以上)
② 単純労働者(事務、生産ライン従事者)およびノンプロフィット部門

であろう。しかし、そこには、その人が持っている、知識や経験からなる組織知の放棄に他ならない。仮に組織の未来がこうした組織知で成り立つのであれば、こうしたリストラは望ましくない。短絡的に労務コストの調整にしか目が向かないのであれば、それは「戦略人事」の放棄である。

■目の前の利益だけへの対応への危惧

若者だけを残し、中高年を捨てるという行為は、労働力が若ければ「出力が上がる」という幻想のもとに成り立っている。また、測りやすい指標に目が向くという性質もある。

例えば、専門性やスキルは資格、実績、KPIなど、数値や成果で判断しやすい特性があり「測れる」という安心感がある。しかし、AI導入が進むと、逆に「属人的な勘や経験」が軽視される傾向にもつながり、組織知が軽視されやすくなる。
一方で、慎重な判断力、問いの立て方、多様な視点を融合する力など評価される知力は「測りにくい」と言う特性があり、目に見えず、評価指標に落としにくい(特に人事制度では)。
結果として、短期的に見えやすい「スキルの有無」がリストラ判断に使われやすく、知力は評価に上がってこない。

また「課題を発見してくれる人材が欲しい」とは言うが、実際には「波風立てずに早く回してくれる人」を評価してしまう傾向がある。

まさしく人事を戦略として捉え、人的資源をどのように担保するのかの戦略がなければ安易なリストラが横行するだろう。

問い掛けてみよう。年齢と共に蓄積された「知力」は、企業の中で活かされているか?
以下のような構造になっていないかを振り返って欲しい。

・ミドル層の「再定義」がなされていない
・管理職以外のキャリアの多様性が乏しい
・“考える知”ではなく“手を動かす知”ばかりが求められる
・社内で問いを立てる文化(哲学的思考)が弱い

こうした事への取り組みが疎かにされることはこれは組織の構造的な問題である。

目の前のことだけに目を奪われていないだろうか?

2025/07/23