戦略人事:AI・ロボティクスとリストラ(4.変質する経営資源の定義)
※少し断片的な記事になるので思いついたまま記載。同じテーマで少し長い連作になる。
■ 経営資源としてのヒト
企業の未来戦略を担う人材には「知力」が必要であり、単に年齢や職種でリストラを進めるべきではないことは指摘した。また、AIとロボティクスは、本来その人がすべき仕事にシフトさせるために使うべきであることも指摘した。
そこでの視点は、人材を「量」ではなく「質」で見ること。「質」に着目した送料で考えることである。しかし、それは量を確保せよと言っているのではない。従って、下記の様な取り組みの方向性は誤解を招く。
○プロ人材、三菱UFJは2割増の2500人 内部登用でも高い報酬提示
2025年7月21日
大手行が高度な専門性を持つプロ人材の拡充に動く。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は富裕層向けビジネスやデジタルなどのプロ人材を約2割増やす。他の金融機関や事業会社との争奪が激しく、専門性を高めた社員を高い報酬で積極的に登用する。中途採用に力を入れながら、人材の流出を防ぐことにも目配りする。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB220TV0S5A620C2000000/
そもそも「プロ人材」とは何かを定義しないまま人数をそろえたからと言って「組織知」は上がらない。
かつての経営資源は「ヒト・モノ・カネ」と言われていた。今から50年ほど前のことである。組織の生産量を増やす、すなわち大量生産・大量消費が前提になっていた。こうした状況では、設備の量(生産機械の規模)が重要であり、より多くの人がいることでの有意性が際立っていた。資金調達も、こうした経営資源の量と生産規模により調達が左右されており。より多くの金融資産が次の金融資産を生み出す循環が見られた。
この時代の経営資源としての「ヒト」は、「量」だけがKPIになっていた。
■ 視点の変質の予兆
こうした視点で見ると、従来型の人事制度では立ちゆかなくなることは自明である。
従来型の人事施策の限界に気がつき、その対策を講じる企業も増えて行くだろう。
○ 大成が大胆な人事制度改革/日本的雇用慣行から脱皮/成果報酬で“とがった”人材評価
2025-07-18
大成建設は、24年ぶりに人事制度の全面改定を進めている。1日から、要となる新等級制度の運用も始まった。昇格のたびに何年かたたないと次に進めない「滞留年数制度」を廃止。技術畑の“一匹おおかみ”タイプの社員などに向け、管理能力ではなく、突き抜けた“個人の専門性”を評価し、最高年収2300万円を実現する「スペシャリスト職群」といったコース別人事も新たに設けた。明治時代から連綿と続くスーパーゼネコンが、日本的雇用慣行から抜け出そうとしている。
大塚氏は「われわれの世代は、部長や所長などといった組織のトップを志したが、今の働き方はそれだけではない。社員と接する中で『専門性を高めて会社に貢献したい』という人が増えていると感じていた」とし、「ようやくモデルができた。来年度以降も対象者を増やす。若い人がスペシャリストを目指して専門性を磨いてくれれば」と期待を寄せる。
さらに、「世の中の変化は激しい。今回の制度が完成形とは全く思っていない。必要があれば見直しも行う」と柔軟な構えで、「働き方の選択肢を増やし、その中から『一番良い』と感じるものを探してもらいたい」と引き続き多様性に対応していく方針だ。
一方で並行してパワー不足を補う施策も必要である。下記に記事には切実な危機感が感じられる。
○ 建設業界団体「土日・祝日は工事休みに」 技能者不足で長期目標
2025年7月22日
建設大手などが加盟する日本建設業連合会(日建連、東京・中央)は22日、2035年度までに土日祝日(お盆や年末年始含む)は全ての工事現場を休みにする長期目標を表明した。建設業界は高齢者の引退や人口減少によって技能者の不足が深刻となる。生産性向上とともに賃金や働き方など待遇の改善を進めて人手確保を狙う。
ロボットやIT(情報技術)の活用などで技能者1人当たりの労働生産性(実質ベース)を10年で25%高める。ただ生産性の向上だけでは不足を補いきれないとみて、技能者の待遇改善を決めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC18BHT0Y5A710C2000000/
働き方を変え、「危険・汚い・きつい」、「退屈・単調」を解消する取り組みも同じように重要である。
2025/07/23