戦略人事:企業と社員のギブアンドテイクの新しい形(簒奪する業界の末路)
■見捨てられているという事への自覚
確実に転職者の数が増えていると感じたのは、今日(2025/08/04)朝のNHKのニュースを見たときだった。行政(総務省、厚生労働省)の調査データによれば、年々転職者数は増えており、その数は400万人に迫ろうとしているようだ。
参考:直近の転職者及び転職等希望者の動向について
2023年12⽉18⽇ 総務省統計局労働⼒⼈⼝統計室
https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/roudou/r5/pdf/21siryou4.pdf
かつて(40年ほど前)の転職情報などはたかがしれており、いくつかの雑誌があった程度だ。ここに来て、媒体やヘッドハンティングの多様化が進み、簡単に転職市場にアクセスできるようになった。
転職理由は様々であろうが、第一にはお金であろうコトは無視できない。
技術力さえあれば、高収入を求めて転職を進めることになる。
○「転職で賃金増」過去最高の39%、技術職の伸び大きく 民間調査
2025年7月25日
前職より賃金が1割以上増えた人を集計した。職種別の伸びはIT系エンジニアが43.1%、機械・電気・化学エンジニアは35.9%で、いずれも過去最高を更新した。
米関税による先行き不透明感から、採用拡大に慎重な企業もあり、中途採用を絞る動きも出ている。高田悠矢特任研究員は「募集ポジションを見直すなどの動きはあるが、事業戦略上どうしても必要な人材には高い賃金を提示している」と分析する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2541Y0V20C25A7000000/
企業は社員を引き留めておくことに必死にならざるを得ない。
こうした中で、人事施策も変らないとならない。従来のように「勝手に人事異動が許される」感覚でいると、転職・離職を防げないかもしれない。
○ミドル世代2000人に聞いた「転勤(単身赴任)」実態調査
4割以上が転勤をきっかけに退職を考えたことがある。
ー『ミドルの転職』ユーザーアンケートー
2025/03/05
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/40849.html
もはや人事面で何もしないことは「社員から見捨てられる」すなわち「転職してしまう」と言うことを意識する必要がある。
■他者を犠牲にするビジネスモデルへの忌避感
転職を防ぐための取り組み(賃金アップ、福利厚生の充実、キャリアアップの支援、メンタルなどの健康面での支援など)は当然のこととして、会社がどう振る舞うのかも見られていると言うことにも心がけを新たにする必要がある。
初任給をアップし、リスキルに力を注ぐと言っておきながら40歳以上の社員をリストラすることを平然とする会社にいれば、自分もそうなると考え、30歳ぐらいまでに転職をすることを考えるだろう。
平然とパートナーを踏みにじる事で利益を出している企業に将来のビジョンを見いだせなくなるだろう。
○島村楽器、フリーランス法違反で勧告 無償で体験レッスン 公取委
2025/6/25
自社で運営する音楽教室の無料体験レッスンをフリーランスの講師に無償で行わせたなどとして、公正取引委員会は25日、大手総合楽器店「島村楽器」(東京都江戸川区)のフリーランス取引適正化法違反を認定し、再発防止を求める勧告を出した。
https://mainichi.jp/articles/20250625/k00/00m/040/174000c
今まで払っていないことで収益を確保しているというなら、業績にも影響し、結果としては賃金にも跳ね返ってくるかもしれない。今までは外部に頼んでいたことを突然「やれ」と命じられるかもしれない。そんな不安を醸し出すのはプラスにはならない。
本来払うべきモノを払っていないと言うことは、業界全体の衰退を招きかねない。
○「労務費減額された」3割超、国土交通省が実態調査 改正建設業法で違反の恐れ
2025.07.23
国土交通省が実施した2024年度「下請取引等実態調査」で、建設工事の元請け会社と下請け会社との契約において、最終見積書の労務費が当初見積書よりも低額になったと回答した下請け会社は33.8%に上ることが分かった。25年12月までに全面施行される改正建設業法では、著しく低い労務費の変更依頼を禁止する。従来の元下間の商取引を改めなければ、同法違反に問われる恐れがある。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02334/
業界で不穏な経営しかしていないことは、そこで努める人々の労働意欲をそぐ。さっさと、技術を磨き、よりよい条件の会社に転職するという動機付けが助長されることだろう。
■ギブアンドテイク
従来のBS,PLは、得た利益は会社のものであるという考え方になっている。
この考え方は、働く人たちに支払う給与やベネフィットは経費であり、利益配分の主導権は企業が持つ。社員は頑張りに応じてボーナスなどをもらうこともあるが基本は会社からのおこぼれである。
そうした会社と社員の関係性は不平等の関係性の上に成り立っている。これでは、社員からの信頼性を得るためには十分とは言えない。平等である事が必要である。
それは、
・財務データなどを含めてすべて公開すること
・PLにおいては人件費などは含めず、利益をすべて社員のモノとする。
・そこから、会社を維持するため、あるいは成長するための投資額を算出し社員と合意すること
・こうして残った利益の分配比率は社員が決定する
という発想にしなければならない。
社員に対し、「搾取」するのではなく、「ギブアンドテイク」の合意形成に努めなければ未来の経営スタイルにはたどり着けないだろう。
2025/08/04