先が読めない時代で手を打てるのは結局は組織と人ではないのだろうか

先日読んでいた「労働法入門」で現代の働く人と会社との関係性を表現する文章があった。

そもそも、労働法が誕生し発展していった時代には、工場で集団的に働いている労働者が典型的な労働者の姿であり、それをモデルとして労働法は形作られていった。しかし今日では、従来の工場労働者とは異なり、裁量労働者、在宅労働者など働く時間や場所に縛られない労働者や、派遣労働者、フリーランサー、クラウドワーカーといった特定の企業に縛られない労働者など、さまざまな形態の労働者が出現している。

これは社内の中にも言えることであり、ティピカルな社員を想定した組織運営はいずれその粗さのために立ちいかなくなる気がしている。
現在、賃金制度に係る仕事にタッチしているが、ここでも、個人別賃金管理システムが必要だと感じているし、システムとしては可能な段階にきている。

そうした思いで、サイトを見ているたら興味深い記事を見た。

https://diamond.jp/articles/-/207816
オムロンに学ぶ「あうんの呼吸」が通じない時代の組織力強化

国籍や文化背景も異なる社員が多く存在し、基本的に短期間で社員が入れ替わっていく海外企業においては、「あうんの呼吸」や「助け合いの精神」を通用させるのには無理があります。

として、オムロンの取り組みを取り上げている。
もっとも、落としどころが結局のところ理念教育の工夫の話になっているので少し残念だ。

様々な考え方や働き方をする社員で構成される近未来の会社の在り方を考えると、「お互いがわかりあえたという幻想」ではなく、「お互いを理解することを努力し続ける」組織が必要なのではないか。

その結論は、伝えることでもなく褒章制度でもない。目の前にあるいろいろなことに対し、自分の考えたを表明し、そして「相手は自分のことを理解しているとは限らない。相手の言っていることを私は理解していない」前提で情報の流通をしっかりできる枠組みを作ることだろう。

オムロンの業績は、近年にないぐらい良好さを見せたと思ったら、突然の業績悪化に見舞われた。
下記が参考になるか。

●2018年度 第1四半期連結業績について  2018年7月26日オムロン株式会社
第1四半期の業績は、主力の制御機器事業とヘルスケア事業が全社の成長を牽引し、売上高2,098億円(対前年比3.1%増)、売上総利益877億円(対前年比4.3%増)、営業利益196億円(対前年比13.6%減)、純利益147億円(対前年比5.4%減)となりました。売上高、売上総利益が第一四半期として過去最高額となるとともに、売上総利益率も過去最高となる41.8%(対前年比0.5P増)となりました。

●2018年度連結業績および2019年度連結業績予想について 2019年04月24日オムロン株式会社
2018年度の業績は、売上高8,595億円(前期比0.1%減)、売上総利益3,541億円(前期比1.0%減)、営業利益766億円(前期比11.2%減)、純利益543億円(前期比14.0%減)となりました。
2019年度の通期連結業績予想は、売上高8,300億円(前期比3.4%減)、売上総利益3,490億円(前期比1.4%減)、営業利益650億円(前期比15.2%減)、純利益425億円(前期比21.8%減)としました。

●オムロン、純利益21%減に下方修正 中国の景気減速響く 19年3月期  2019/1/30
オムロンは30日、2019年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比21%減の500億円になる見通しだと発表した。18年10月に続いて今期2度目の下方修正で従来予想(585億円)から減益幅が拡大する。12月以降の中国を中心とした景気減速で、スマートフォン(スマホ)などの設備投資が落ち込み、制御機器の需要が鈍る。
売上高は1%減の8550億円、営業利益は17%減の720億円とそれぞれ250億円、110億円下方修正した。

●20年3月期営業利益を大幅下方修正
20年3月期の連結業績予想について、売上高を8300億円から7090億円(前期比3.2%減)へ、営業利益を650億円から575億円(同14.5%減)へ下方修正
(https://www.omron.co.jp/ir/irlib/pdfs/20190725_1j.pdf)

2018年度に8,600億円が7,000億円という大幅な減収は、必ずしも経営のかじ取りにその責を負わすのは酷かもしれないが、それでも、こうした事態への対処ができるのは「ヒト」であるなら、その「ヒト」が能力発揮できる組織風土を作れるかどうかに未来がかかっているのだろう。

2年後ぐらいにもう一度振り返ってみたい。

社員満足度調査を行う意義

「ハーバードビジネスレビュー 2019年2月号」の特集は「コレクティブインパクト」だ。
コレクティブインパクトに関連して「ソーシャルインベーション」を取り上げているが、その中で、「私」と「仕事」の関係性にも着目している。

その一節を引用する。

1974年のスタッズ・ターケルの名著「仕事(ワーキング)!」に、「すでに労働者にとって仕事の意味は金銭的報酬と並んで重要なことだ」という記述がある。40年たってこの傾向はさらに強まり、最近の調査によると、米国労働者の9割以上の人が、意味のある仕事なら23%生涯賃金が下がっても良いと答えている。

また、この文に続き、下記の一節がある。

また、仕事に意味を感じている人は、仕事満足度が高く、満足度と生産性の高い相関も証明されている。

多くの企業に接する機会があり、業績を上げている組織は社員の積極性が高いことは肌身で感じている。

こうしたことを後押しするように厚生労働省からも、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書 ~企業の雇用管理の経営への効果~」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/0000127988.pdf

が提示されている。

引用すると、

■ 雇用管理改善の取り組みは、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながる
・本調査の分析結果は、雇用管理改善の取組が、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながることを示している
・ただし、それには企業の取組において以下の観点が重要。また、行政の役割も重要である
■経営においては、「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要
・経営方針として「顧客満足度」を重視している企業は多いが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くない
・だが、調査結果は、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いに対して、どちらかだけでなく、両方を追求することの効果が高いことを示している
・経営者は、自社の経営方針を従業員に浸透させることが望ましい
■雇用管理改善に、継続的に取り組むことが大事
・分析結果は、雇用管理改善の取組期間が短い企業よりも、継続的に取り組んでいる企業で、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いが高いことを示している
・つまり、継続的に取り組むことで雇用管理改善の結果は出る
・ヒアリング調査でも、たとえ効果が明示的でなくとも継続的に取り組むこと、また、計画的に取り組むことの重要性が示唆された

となっている。

弊社が以前行った「eHRM研究会」においても、モチベーションの3要素を提唱したことがある。

1.ふさわしい仕事
個である「私」が仕事を通して「社会」や「未来」にどう向き合うのかのアイデンティティを確立できること。
2.ふさわしい環境
設備や機器などのハードウエア、情報通信などのインフラ、HRM等の制度、社員同士のコミュニケーションの場の提供など、「ふさわしい仕事」をストレス無く行うことができる環境があること。
3.ふさわしい報酬
「ふさわしい仕事」ができたかどうかを確認できること。その成果や過程を見守り、ふさわしいフィードバックを行い、仕事への意欲を高めること。必ずしも金銭的報酬にはとどまらない。

当時のいろいろな議論を踏まえても、それほど的外れではないだろう。
社員満足度が業績を左右するのであれば、こうしたことを配慮することは戦略上の重要な位置づけにすべきだ。

直接の対比はされないが、当社で提供している「SRO組織生産性診断」もこれにフォーカスしていることがわかる。