百貨店の戦略の曲がり角:丸井、イケア》 ちょっと長いよ・・・

■認識していても行動できなければ一緒なのかもしれない

2020年3月。新型コロナウイルスの影響として以下の記事がある。

○ 百貨店4社の売上高2ケタ減 2月、新型コロナで
日本経済新聞 2020/3/2
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56269330S0A300C2MM8000/

大手百貨店5社が2日発表した2月の売上高(既存店ベース、速報値)は全社が前年同月を下回り、4社で2桁のマイナスとなった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、訪日外国人(インバウンド)向けの売上高が減少。2月後半には感染予防意識が高まり、日本人も外出を控え始めた。3月には大手各社が臨時休業や時短営業を実施する方針で、売上高はいっそう落ち込みそうだ。

冒頭には百貨店の置かれている危機的状況が記載されている。

しかし、百貨店の苦境は今に始まったわけではなく、すでに数年前から振り上げ高の減少に苦しんでいたことは様々なニュースソースで見聞きしていた。

参考:百貨店業界の売上2~4割減、新型コロナだけじゃない「三重苦」の難局
https://diamond.jp/articles/-/230579

参考:リーマン再来、百貨店売り上げ「2ケタ減」の衝撃
https://toyokeizai.net/articles/-/334028

三重苦として、インバウンド(外国人客)への依存、消費税増税に伴う消費意欲の減少、新型コロナに伴う来店者数の減少をあげている。これに加え、店員の確保が難しくなり営業自体が縮小せざるを得なくなる。

しかしこうした自体はのうちいくつかは予見されていたことである。例えば、2018年1月31日(水)の日経ビジネスでは「百貨店、3年ぶりプラスの内憂」として以下のように述べている。

『全国の百貨店の売上高が、3年ぶりに前年比でプラスに転じた。しかし、店舗閉鎖分を数値に反映した「全店ベース」では4年連続で減少が続く。婦人服不振など百貨店の構造問題は解決しておらず、再生には抜本的な改革が必要だ。』

構造的な変革が必要と訴えている、「売り場に来てもらい、商品を手に取ってもらいながら選んでもらう」というビジネスモデル自体が曲がり角に来ていると考えると、新しい百貨店の形を考えるべきである。

例えば、これらの記事にない百貨店として丸井があげられる。
丸井の業績はどうなのであろうか。

2019年11月7日の流通ニュースでは 「丸井グループ/4~9月、エポスカード好調で営業利益14.1%増」(https://www.ryutsuu.biz/accounts/l110743.html)として以下のように報じられている。

丸井グループが11月7日に発表した2020年3月期第2四半期決算によると、売上高1254億8900万円(前年同期比1.8%増)、営業利益225億7000万円(14.1%増)、経常利益219億3000万円(14.1%増)、親会社に帰属する当期利益139億8100万円(12.1%増)となった。

この記事の中に「当期から、店舗戦略「デジタル・ネイティブ・ストア」、D2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)やシェアリングサービスなどのブランドの導入、ネットでは提供できない体験やコミュニケーションの場を提供する店舗。」という記載がある。

これに関しては日経XTRENDが若干の解説記事を載せている。

○丸井が「モノを売らない店」に大転換 急成長D2C取り込む大胆戦略
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00184/00001/
2019年07月29日 日経XTREND

ものを売らない店への転換と云うことで注目したのは、記憶では何年か前の「体験型への転換」と云うことで特集記事我を見た気がする。残念ながらニュースソースがはっきりしないが、以下のようなインタビュー記事が、その真意を伝えているだろう。

『この5年間で、マルイでは店舗のスタイルを大きく変えていますよね。

はい。丸井グループは2015年3月期より、商品を仕入れて販売する「百貨店モデル」から、定期借家契約により家賃を得る「ショッピングセンターモデル」へと舵を切っています。

この変化の背景は、これまで売り上げの中心を占めていた衣料品、雑貨などの消費支出が年々、減少傾向にあったことです。一方で、店舗数は増え続け、さらに消費者のニーズは「モノからコト」へと変わっていきました。商品の購入よりもサービスにフォーカスした店舗づくりが求められるようになっていったんです。』
https://exp-d.com/interview/5610/)より

参考記事:NORDSTROM(ノードストローム)はどうCX(顧客体験)を高めているか?
https://www.total-engagement.jp/3411/

■進化のためにとるべき戦略(テクノロジーの取り込み)

進化を続けられない企業が生き残れないのは、「その場にとどまるためには全力で走り続けなければならない」という赤の女王仮設を持ち出すまでもなく自明なことだろう。進化の中に、テクノロジーの活用によるビジネスプロセスの変化も含まれる。

少し前の記事だが、テクノロジーを使うことで「売る」という活動の幅をお広げた事例としてイケアの取り組みが参考になるだろう。

○イケアはスマホアプリにARを導入し、「家具の買い方」を根本から変える
https://wired.jp/2017/10/06/ikea-place-augmented-reality/ 2017.10.06

この中で以下のように述べている。

デジタルソファベッドを設置すること自体は、ARの面白い使い方ではない。しかし、ほかの格好いいARアプリとは異なり、IKEA Placeは実際の問題を解決するためのものだ。大きさを測ったり、布地の見本を見比べたり、部屋に合うかどうか確認したりするために、店から家具をもって帰るという苦難──。それをARがなくし、家具を買う確実な方法になることは簡単に想像できる。

購買行動に、認知、興味、欲求などでプロセスを示すが、それは単なる要素であり、それを促す触媒については示されていない、ARの活用により、個々の購買行動を体験型にして行く取り組みが有効であることを示している。

■業態の変更は今後とるべき戦略になるのか?

現時点(2020年3月4日)ではその善し悪しは評価できないが業態を変えようとしている百貨店もある。

「冬の時代」総合スーパー生き残りへ大胆変身 「イズミヤ」売り場改革でショッピングセンター型へ
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/170200
京都新聞 2020年2月25日

エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは今春から、傘下の総合スーパー「イズミヤ」の事業モデル改革に着手する。直営売り場を減らし、アパレルや家具、家電といった小売専門店のテナント誘致によって収益力の改善を図る。・・・小売専門店に出店営業してもらい、賃料収入を得る「ショッピングセンター型」への業態転換を目指す。

とある。

そもそも、人が訪れることにこだわれば、商圏が限定され人口の減少の影響をもろに浴びることになる。その店でしか手に入らないものである必要があると同時に、そこに行く必要性を見つけてあげなければならない。その答えが、「体験型」というが、それすらもデジタルではいけない理由はない。

いつか検証する必要がある。

2020/3/4 記載

《テクノロジーの理解が経営者のリーダーシップを左右する》

『とはいえ、ブロックチェーンの業務への導入には課題も多い。その1つとして、決定権を持つ多くの経営層がブロックチェーン技術を理解していないことが挙げられる。最先端技術で活用事例が少ないがゆえに「様子見」になっているのだ。日本の主力産業である製造業の場合、先進的なIT技術に対しては特にこの傾向が強い。』

製造業にも役立つブロックチェーンの3つの特徴
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1902/26/news008.html
より

2020年2月のコロナウイルスの出来事の内、テレワークの普及は転換点になるかもしれない。とはいえ、こうした技術的な要素を事柄は企業の能力に大きく左右される。テレワークと云っても、そう叫べば皆がテレワークに移行できるわけではなく、通信環境の整備だけでなく、業務プロセスの再構築、人事制度の転換、もしくはテクノロジーを使ったリモート管理の普及が求められる。

ブロックチェーンの活用でロジスティックが効率化され生産性向上につながる可能性や、各種のセンサー、ARやAIを使った遠隔地での業務管理などの可能性がある。

しかし、経営トップの技術への理解がない場合には、ありきたりのテレワークになり、単に現在の業務プロセスの写像にしかならない。未来に向けてビジョンを持てない経営者の元では卓越した経営は求めるべくもない。

経験の中では、工場の生産性向上のために、画像認識とAI、協働ロボットを使ってのプロセスの複合化に取り組んでいる企業の例を知っている。経営者は、周囲の技術者の声に耳を傾け、現在の技術で何ができ、何ができないのかの振り分けや必要人材の調達をしている。

経営資源として人の重要性に気づき、また人材とテクノロジーを紐付ける経営者だけが生き残る気がする。

《テレワークを定常的な戦略に組み込めるか》

新型コロナウイルスの対策としてテレワークが注目を浴びているが、これを一時的な対応とするか、そもそもの働き方の見直しとして、定常的な戦略に組み込めるかはリーダーシップの見せ所だろう。

一時的な投資の必要性はあるだろうが長期的なプラスにつなげることが可能だと考えている。
以前、お邪魔した会社で現場の不満の声の一つに、事務所を都心に移したがもともと地場が良いので就職したので通勤が苦痛だと云うのがあった。皆が同じ場所で集まるメリットはあるものの、デメリットもある。

当然フェースツーフェースも必要なのだが、社員の立場でものを考えて選択肢を増やしてあげた方が良い。

とはいえ、長期的視点でテレワークを考えるとなると法律上のいろいろなことを配慮する必要がある。

思いつくままに列記する。いずれも厚生労働省のサイトだ。

情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html

同一労働同一賃金特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

非正規雇用労働者(有期・パート)の雇用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page08.html

非正規雇用に関する主な法令等
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/seido/index.html

パートタイム労働法のあらまし
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061842.html

備忘録として

《景気の悪化でとれる戦略 フローからストックへ》

昨年からこっち、景気が改善しないと感じる記事が多い。
例えば下記の記事などは、景気の悪化は昨年来から始まっており、それは労働者の賃金への反映されていない実情と一致する。

大企業製造業景況感、4期連続悪化 日銀短観のDIゼロ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53303360T11C19A2MM0000/
2019/12/13 日本経済新聞

昨年の平均月給、6年ぶり減少 厚労省の毎月勤労統計
https://www.asahi.com/articles/ASN27350YN26ULFA03W.html
2020年2月7日 朝日新聞

ここに来て、新型コロナウイルスの影響で、中国の生産活動が停止し、人の往来や、イベントなどの中止などが発生している。こうした悪循環は企業活動にプラス面よりはマイナス面での影響は当面続く。

先日、お話を聞く機会があった中小企業の製造業の社長さんは新型コロナウイルスについて「影響は出るが,予測できないし、できることはない」とあきらめ顔でおっしゃっていた。たしかに、景気などは自分の力だけで左右できることではないので、予測できたとしてもできることは対策しかない。

ではどのような対策が可能なのだろうか。

基本的な考え方はオーソドックスだ。
① 状況を理解する
② 制御可能なリスクと制御不可能なリスクに分解する
③ 制御可能なリスクについてそれを放置しておいた場合の問題を明確にする
④ 問題の回避するための課題の選択ととこれに対する施策を立案する

①については、「景気悪化に伴い顧客の経済活動が低迷する」という状況になる、そのため、②制御不可能なことは「既存顧客からの受注量の減少」になる一方で、「新規顧客の開拓」は取り組みとしては制御可能かもしれないが、あまり現実味はない。なぜなら、今回の景気悪化はすべての顧客にふりかかってくることだろうからだ。

ほとんどの人が目を向けようとしないことに「従業員が生産活動をしていない時間が増加する」というリスクがある。これはどんな意味があるのだろう。確かに、これ自体は制御可能に見えないかもしれないが、「従業員の空いた時間を有効に活用する」という施策に転換することは可能だ。

つまり、「空いた時間」は制御可能であり、放置すれば「無為な時間になる」ことになるが、「組織能力の向上」のために活用する施策は展開可能になるというシナリオを描くことができる。

経営活動を、経営資源を投入して生産活動をし、利益を創出して再投資するという循環で見れば物事をフローで見て行くことになる。しかし、経営資源の潜在量を増やすと云うことに対しては傍流として取り扱われる傾向がある。

先に示した
http://nss.watson.jp/2020/02/24/%e3%80%8a%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%81%af%e4%ba%ba%e3%81%a7%e6%88%90%e3%82%8a%e7%ab%8b%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%81%ae%e3%81%a7%e3%81%82%e3%82%8c%e3%81%b0%e3%83%aa/
等もその一例だろう。

経営資源のフローの視点を経営資源のストック量の増加と捉えることができれば別の戦略が見いだせる。すなわち、人の能力開発に対する積極的な関わりだ。不況の時に、その空いた時間で社員能力開発をどのようにできるかは経営者の腕の見せ所だろう。

しかし、こうしたことを放棄する記事も散見される。
昨年からの、早期退職者の募集などを見ると残念でならない。
新型コロナウイルスの影響もあるようだ。

希望退職者募集、2月すでに4社|新型肺炎の直撃も
https://maonline.jp/articles/voluntary_retirement202002b
2020-02-25

「わたしは経営者として無能です」と公言しているとしか思えない。

2020/02/25

《テクノロジーの可能性を考えられるかが経営を左右する例として:3Dプリンター》

気になった記事があったのでコメントします。

昨年のはやり言葉に「OneTeam」がある。
もともとラグビーには、「OneForAll AllForOne」という言葉がある。私が初めて聞いたのは神戸製鋼の平尾さんの講演だった。

ラグビーは、基本のポジションでの役割があるものの、ゴールを奪うためにはダイナミックに行動しなければならない。特に今回の多国籍のチームであれば、常に一体化した活動が求められる。「OneTeam」は必然になる。

しかし、「OneTeam」と叫べば経営がうまくいくほど単純なものではない。
精神論が先行する不気味さを感じる。

経営は、もっとテクノリジーの造詣を深くしてその可能性を見いだし、新たな市場を作るべきだと思っている。

https://www.businessinsider.jp/post-207843
世界的なチョコレート会社が、3Dプリンターによる量産を開始
Feb. 22, 2020

がどこまで成功するかは分からない。
しかし、手作りではできないチョコレートが可能になると云うことはもしかしたら、CADで設計したチョコレートを店先で作ってもらい、プレゼントに使える日が来るかもしれない。

なるほどと思う反面、こうした事業を経営者がどこまで先導できるかも機動性を左右することだろうと感じた記事だった。

《組織能力向上に向けての投資戦略》

《組織能力向上に向けての投資戦略》

イノベーションを起こすための投資が真剣に考えられているのか、本気でオープンイノベーションに取り組む気があるのだろうか。と言うことを考えさせられる記事を見た。

ホンダ、研究所を大幅縮小 四輪の開発機能を本社に統合
https://www.asahi.com/articles/ASN2J66YQN2JULFA003.html

取り上げているのは朝日新聞だけのようだ。基の情報を確認していないので詳しいコメントは出せないが、内容としては縮小は伴うものの再編というのが色合いとしては濃いようだ。とはいえ、イノベーションの投資を縮小しているように見える。

いったい企業は儲けたお金をどこに投資をしているのだろうか。
経営がゴーイングコンサーンを使命としているなら経営資源の循環と言うことにも目を配ってほしい。

研究開発投資を考えるためにはどんな資料があるのかを探ってみた。

◇平成28年度産業技術調査事業
研究開発投資効率の指標の在り方に関する調査(フェーズⅡ)最終報告書
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000779.pdf

この中に下記の指摘がある。

『日本企業の研究開発費は、従来から先進国の中でも最も高い水準を保っており、2020年でのGDP600兆円達成のためにも、研究開発投資の重要性が高まっている』

一方で研究開発効率は低異ことが指摘され、企業別でみると海外、例えばフォルクスワーゲンの95億ユーロに対し、トヨタがかろうじて70億ユーロとなっているが、本田技研などは50億ユーロと半分程度になっている。アマゾンなどの研究投資などは230億ドル(約250億ユーロ)と桁違いであり、おそらく、ファーウエイやFaceBookなども近い水準だろう。
研究開発投資額の大きい企業と企業価値評価にはギャップがある現状もが指摘されている。

では日本企業はどのような方向性で行くべきか。

いわゆる伊藤レポートを見てみる。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf

「持続的に成長している企業とはどのような企業か。その競争力の源泉は何か。」という課題に対し

『長期的な研究・技術開発によって蓄積された社内のリソースを、社外の知識・技術と
戦略的に融合させ、結合させるオープンイノベーションが、持続的なイノベーション
を起こすための方策として有効である。そのためには、日本企業はこれまでの自前主
義から脱却して企業連携、産学官連携をさらに積極的に推進する企業風土を醸成すべ
きである。』

と提言されている。方法論も含めて積極的な投資が求められていると理解している。当然、規模を大きくすれば良いというものではないが、かといって再編と縮小をむやみに縮小しても意味はない。

巨大な投資が必要になるが、投資を怠れば競争力もなくなってしまう。こういったときにこそリーダーシップが必要なのだと感じた。

戦略に失敗はあるのか(セブンイレブンの事例から)

少し刺激的な記事を見つけた

セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界か
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1910/16/news032.html

セブンイレブンについては、業界大手と云うこともありいろいろ取り上げられている。
オーナーから訴えられた記事(https://biz-journal.jp/2019/09/post_118634.html)は、FCでのリスクを物語っており、セブン、時短営業を本格実施 深夜休業の指針策定(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51223540R21C19A0TJC000/)は、すでに旧態依然としたFC経営が立ちゆかなくなっていることを示している。

冒頭の記事を要約すると「セブンが「不採算店閉鎖を加速」へとかじを切ったことは、単純にコンビニが多い、少ないという話よりも遥かに大きな意味があると感じている。セブンがビジネスモデルの根幹としてきた「ドミナント戦略」がいよいよ限界に差しかかってきた」ということで、その背景には、従業員不足と売り上げの低下等を背景としている。

そもそもドミナント戦略にはメリットとデメリットがある。
例えばメリットとしては
・商圏を重ねることで知名度が上がる
・配送効率を上げることができる
・スーパーバイザーが巡回しやすい
・商品を相互に融通し品切れやいずれかの店にはあるという商品カバーを強化する
などがある。
一方でデメリットもあり、
・同じ地域で顧客の取り合いを起こす(店ごとの売上げが下がる)
・地域に複数店舗が必要な理由がなくなったときに破綻しやすい
などが大きな所だろう。

さて、「1000店閉店、移転」については、セブン自体の業績悪化などが取り沙汰されているのだがどうなのだろう。

実際にセブンアンドアイが提供している決算資料(https://www.7andi.com/ir/file/library/ks/pdf/2019_1010ks.pdf)からは以下のことが読み取れる。
・グループ全体では営業利益はプラスだが、グループでの売上げと営業収益はマイナス。
・その中でSEJ 荒利率の改善と販管費の適正化により55億円増となっている。
・事業の継続性のためには構造改革が必須との認識にいる
・本部コスト・構造改革には不採算店の閉店加速があげられている

さて、この不採算店の対象だが、以下のように記載されている。
(不採算店の閉店加速)
・Cタイプ1年以上経過店での不採算店と直営店を最優先に閉店
19年下期~20年度:約1,000店の閉店・S&Bを実施
⇒ 21年度:約50億円/年の収支改善へ (18年度対比)
注:Cタイプ お店の土地・建物を本部がご用意させていただくタイプの契約。

さて、セブンイレブンの店舗数は約2万店超なので1,000店舗は5%程度か。
ただし、スクラップアンドビルドと云うことを言っているので単純に減らすのかどうかまでは読み取れない。

Cタイプ(お店の土地・建物がセブン側の所有)が対象と云うことであれば、企業としては投資対効果が見込めないので撤退するというのは合理的になる。
ただし、オーナーをどうするのかと云うことは別問題になる。

さて、表題の「ドミナント戦略」
セブンの資料を見ると、自分たちの戦略を「オムニチャネル戦略」という言い方はしているが「ドミナント戦略」とは明言していない(と思う)
結果として、そうなったとしても、戦略の目的は規模の拡大と生産性の確保であれば、それに見合わなければ撤退するのは当然のことだろう。

今の状況が「ドミナント戦略」と合致しなくなったからと云って、戦略の評価に結びつける論は的外れだと思う。

さて、「戦略」に優劣はないし、成功も失敗もない。結局の所選択の問題だろう。
戦略を見直せと最初の記事は云うが、そもそも戦略は見直すべきものなので人から言われようが何しようが企業経営者は常に考えている。

「ドミナント戦略」が問題なのではない、セブンイレブンが展開している施策が問題なのだ。とはいえ、どうすれば良いのかなどは私がわかろうはずもない。

わかっているのは、「戦略」は常に見直さなければならないと云うことだろう。
「その場にとどまるためには全力で走り続けなければならない」は宿命だ。

関連資料はこちら(セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界か

戦略の組み替え

競争優位の戦略は結局、安い製品で市場で生き残るのか、高くても良いと思わせて顧客を獲得するのかの2者択一だろう。
その際に、広くあまねく受け入れられる戦略なのか、特定のセグメントに集中して行くのかの違いになる。

新しい事業コンセプトをつくるためには、今まで成功している事業の常識を疑いながら戦略の組み替えをすることだ。

 創造力を妨げる今ひとつの傾向は、我々の“順応したい”と言う熱望である。これが因習主義の弊害を生むが、「因習は独創性の大敵なのだ」。もっと独創的になるためには、自分自身の襟首をつかんで「人まね」をしないように注意しなければならない。
- A・オスボーン 創造力を生かす -

■ 「大きいことはいいことだ」は通用しなくなってきている

ファミレスが退潮、飲食店の「狭小化」がさらに進む事情
https://blogos.com/article/344156/

外食産業を説明するのに妥当かと思うので、記事を引用する。

 すかいらーくは客数減、サイゼリヤは為替レートの変動や天候不順による食材原価の高騰等、理由はさまざまあるが、慢性的な理由として飲食業界全体を取り巻く、「人手不足」という課題の根本的な解決策が見つかっていない。ドリンクベンダーの機械化や深夜営業の短縮といった手は打っているが、新規就労者に対するトレーニングコスト等、人手不足に伴う人件費の増大は避けられない。

現在、好調の回転寿司チェーンは調理の機械化によって、人件費の圧縮に成功しているが、回転寿司は機械化にもっとも適した業態であって、他の飲食業態にすぐに展開できるわけではない。「外食元年」と言われる1970年からまだ50年足らず。経費の構造から見ても、日本の外食産業の単価はいびつであり、だからこそ「ブラック」などと言われる働き方が露見してしまう。

極論を言えば飲食店の客単価が上がらない限り(正確に言うと、客単価上昇を客が受け入れない限り)、日本の飲食産業の未来は見えてこない。もっとも、各ファミリーレストランとも、客単価の引き上げなどには、一定の成果が見られる。ここに一筋の光明が見いだせるか。

一方、個人店はというと、繁盛店についてはかつてないほどの活況を呈していると言っていい。昨年一気に可視化された「飲食店の狭小化」は今年も絶賛継続中。5~10坪程度の広さで、スナックなど長く営業した店の居抜きに個人店が入るケースは相変わらず多い。

 

まずは背景に、「人手不足」があることと、戦略が「コストリーダーシップ」であり、これが働く現場に無理をさせていることがある。相互に負のスパイラルになっているだろう。

機械化を進めることで効率化を行うことはできるが、以下のデメリットもある。
・大型店舗であれば設備投資はそれなりの規模になり、コスト回収に時間がかかるが、長期にわたって同じビジネスモデル(設備)が使えるとは限らない
・人によるサービスの省力化は、接客サービスの低下につながり客離れを引き起こす

実際、画一的・機械的に食事を提供するところは軒並み負け組になっているだろう。
その中で特徴を出しているブロンコビリーなどは一定の水準を確保している。

先般、NECとセブンイレブンで無人店舗の実証実験を始めているが、これをスーパーに持ち込むことは可能だろう。私なら、店員をコンシェルジェ的な役割に変えて行く。品出しやレジはロボットがやれば良い。

飲食店の小型化は以下のようなシナリオにすればメリットがある。
・メニューを限定的にする
・特徴のあるメニューにする
・目の前で調理しそのまま出す
こうすれば、調理器具なども限定し、設備投資も抑えられ、スタッフの多能工化で人件費も抑えられる。

戦略として考えると
「広い顧客層向けのコストリーダーシップ」

「集中戦略(差別化戦略)」
への切り替えになる。

■ 24時間ジムという今までに無い発想

東洋経済の記事に以下を見つけた。

地方でも大量出店始めた「エニタイム」の自信
24時間ジム旋風で変わるフィットネス業界①
https://toyokeizai.net/articles/-/254386

注目される点としての記載は下記の通り

スタジオやプールも完備した従来の総合フィットネスクラブと違って、新たな24時間営業の小型ジムは筋トレや有酸素運動のマシンに特化。シャワーなど水回りも至って簡素だ。店舗面積は60~80坪程度とコンビニより多少広い程度で、夜間から早朝はスタッフ不在の無人営業になる。

これは、前項の「大きいことはいいことだ」が通用しなくなったことと関連する。

1点目は、どこもやっていなかった事業形態であること。
おそらく、フィットネスクラブと言えば、マシン、スタジオ。インストラクター、ジャグジーといったものが構成要素で必須と考えていただろう。
こうした常識にとらわれていると新しい業態が生み出せないという例になるかと思う。

2点目は、設備投資の少なさ。
ここ谷塚にも同様の施設がある。
従来のフロアの居抜きをそのまま使えると言うことに驚いた。
おそらく新しい土地を確保して、設備を整えてと言うよりは圧倒的に投資金額が少ないだろう。
店舗あたりの投資額が少なければ、多数店舗の展開も容易になる。

常識にとらわれていると、「そんなやり方ではうまくゆかない」という結論に飛びつきやすくなる。

みんなから『失敗する』と言われるような業態だったから成功したんですよ【(株)Fast Fitness Japan】
http://j-net21.smrj.go.jp/establish/columninterview/interview/predecessor2018/180523.html

記事にこうした一節がある。

―― エニタイムが日本でこれだけ支持された成功要因は何だと思いますか?

大手チェーンがみんな「エニタイムの業態はうまくいかない」と反対したからではないですかね(笑)。エニタイムをスタートした当時は、多くの業界人から「24時間営業なんて流行らないし客も集まらない。店にスタッフがいないなんてダメだ。スタジオも無いのに集客できるわけがない」とよく言われたものです。

 

後付けでは成功した要因はいくらでも出てくる。
例えば、
・コアターゲットを20代~40代の男性と絞ったこと
・シンプルに「ワークアウトをしたい方々が歩いてすぐ店に行ける」という業態であること

競争優位の戦略としては「集中戦略」に分類されるだろう。
こうした発想は、従来のフィットネスクラブの常識である、ジムやスタジオがあり、広い空間とジャグジー、サウナと行った総合型スポーツ施設でなければならないという常識からは出てこないだろう。

「常識的には無理です」というところにこそビジネスチャンスはあるのだろう。

(閑話休題)

さて「常識のとらわれない」と「ルールを無視する」の境界線というのもなかなか難しい。

ふるさと納税のウラ側④ 売上1億円超!人影まばらなガソリンスタンドで何が?
「地場産品ない」町が東海地方2位のワケ
https://www.fnn.jp/posts/00403520HDK

地場のものとは何の関係もないものを送ってしまえという発想はなかなか面白い。

こんな取り組みをしている自治体もあるのかと少し驚いた。

まぁ「アウト」かな。

 

リストラは有効な戦略になり得るのだろうか

最近、リストラの記事が目につく。
先日も下記の記事を見た。

第一三共が3回連続「中計未達」、がん事業頓挫ならリストラも
https://diamond.jp/articles/-/185175

実際にはまだリストラに至っていないのだが、第一三共はここ数年でリストラを繰り返している。

第一三共、退職金6千万でリストラに続き、部課長一斉削減策…巨額買収で7年空費、巨額減損
https://biz-journal.jp/2016/11/post_17260.html

2014年から役職定年を早めたり、早期退職制度で人員を削減している。

本来のリストラは、事業の収益構造を抜本的に改革し、成長戦略を推し進めることにあり、例えば中期経営計画などに基づき事業を進めるに当たって、現行の人的資源では対応できない場合に再編に伴う増減はあり得るだろう。

しかし、人員が余剰だからという理由(コストカット)で退職を促すというのはかなり危険な手法に見える。

一般的に、十分に戦略との整合性の理解を得られないままでの人員削減は
・会社に対する信頼関係を損なう。モチベーション低下につながる
・外部でも通用すると判断した優秀な人材から出て行く
といわれている。

したがって、会社の行うべき手順としては

(1)事業戦略の明確化と納得性の確保
(2)事業戦略の中での社員個々人の位置づけの明確化
(3)再配置と教育の考え方の同意と実施
(4)排出する人材のセカンドキャリアの支援

となる。
特に、新しい戦略の中で「私は何を期待されているのか」を明確にしないで部門の統廃合をすれば、不信感を持ち優秀な若手から退職して行く事態になる。

これは何も業績の悪くなってゆく会社だけではない。
事業を拡大して行く際にも注意が必要になる。

マツキヨとアマゾンのビジネスモデルの差はどこにあるのだろう

アマゾンで剃刀の刃を購入した。

■きっけは

電動の髭剃りは使っていない。
今の製品はよいものもあるので問題はないと思うのだが、どうしても肌への負担などを考えると剃刀でのひげの処理になる。
メーカーも、結局は好みもあるのだがジレットに限定している。

さて、髭剃りの替え刃などはどれも同じかというとそんなことはない。
メーカーも新しい製品を出している。
ずいぶん前に刃が複数枚になっており、最新のものでは5枚刃のものもある。
アタッチメントも電動のものなどがある。
さて、困るのが刃の種類によってはアタッチメントが変わることだ。
逆の言い方をすれば、アタッチメントに合わせて替え刃を調達しないといけない。

私の使っているアタッチメントは2世代前ぐらいのもので、それに合わせて替え刃を調達しなければいけない。
近くのマツキヨを数件見て回ったのだが、「無い!」
新しいシリーズの替え刃しかない。
どうもアタッチメントの形状が違いようで、もし違っていると無駄になる。
開けて見せてくれとも言えないので困ったものだ。

実は、私の使っている替え刃探しは今回が初めてではない。
数年前も、探し回って複数個調達した。
今回は、何軒回ってもないので、新しいアタッチメントに切り替えかなと覚悟していた。

ふと思いついたのが「アマゾン」
もしやと思って検索したら「あった」
ということで、さっそく注文。その日のうちに配送された。
最もプライム会員だったからだが。

■バリュープロポジション

上記のことがあり、考え込んでしまった。

バリュープロポジションという言葉があり、自社のビジネスモデルを考えるための指針の一つだ。
主に以下の区分で、自社の優位性を整理することになる。

製品リーダーシップ (プロダクト・リーダーシップ)
業務の卓越性 (オペレーショナル・エクセレンス)
緊密な顧客との関係性 (カスタマー・インティマシー)

アマゾンと、マツキヨについて少し当てはめてみよう

●製品リーダーシップ
製品はモノ作りだけでなく、サービス提供の仕方などもう少し幅広くとらえる必要がある。
他社に秀でたサービスの提供ができるかがポイントとになる。
アマゾンもマツキヨも多種の製品を提供できるビジネスモデルを核にしていることからいずれもこの面での優位性を保っている。
いずれも独自性がある。
ドラッグストアの形態もかつての医薬品から生活関連製品に幅が広がっており、徐々にコンビニとの差異をなくしてきている。
スピード感を持った業態変化を行っているといえる。
アマゾンに目を向けると、あらゆる製品を提供できること、その日のうちに配達できることなどが大きな特徴になる。
今回の、実店舗にないものはアマゾンで手に入るということは、他社に比べて高いサービス提供になりうる。
マツキヨ < アマゾン
といったところか

●業務の卓越性
「競争力のある品質と選択性を優位な価格で提供」が勝ちパターンになる。
仮に「ネットでの販売」を視野に入れないとしたら、まさしくマツキヨの卓越性は、お客様が必要としているものを安く提供できるというのは強みになるだろう。
ドンキホーテやホームセンターなどもこの範疇になるかもしれない。
スケールメリットが生きる。
ネット販売を中核としているアマゾンの業務の卓越性はロジスティックになるだろう。
アマゾンで購入する理由は、実店舗では手に入らない商品の購入か可能であることと、一定の時間内で手に入る事があげられる。
比較はできないが、両社とも業務の卓越性が認められる。

●緊密な顧客との関係性
ネット販売を行っているアマゾンに、対面での顧客関係性は想像しにくいが、下記の特徴がある。
・顧客の購買行動、参照履歴から「おすすめ」を提案する。これは実店舗の店員が相談に乗ることとあまり変わらない
・苦情があれば、これに対応するメカニズムがある。届いた製品に不満があれば無条件で変えてくれるとの話もある
マツキヨは実店舗であり、商品を取りながら説明を求めることができる。これはアマゾンのようにリアルタイムでの顧客対応ができないところに対しての優位性になる。
実店舗では、店員の顧客対応力が問題となる。
ただし、これはマツキヨだけの問題ではない。
ネットを利用するものに対してはアマゾンが、ネットを利用しない一般の買い物客にとっては実店舗を持つマツキヨに優位性がある。

■ マツキヨのライバルはアマゾンになりうる

バリュープロポジションは、自社の業務特性やビジネスモデル、優位性などを確認し優位性を測るには有効だといえる。
一方で、必ずしもどれか一つを選ぶというよりは、それぞれの視点から自社の戦略を評価するべきだろう。
プロダクトもオペレーションもカスタマーもおろそかにしてよいという話ではない。

ライバルとなるものとの比較もよい。
ただし、見かけ上のことに惑わされてはいけないだろう。
顧客は目的が果たせれば何でもよい。
買いたいものがあればアマゾンで。何を買おうか迷う場合には実店舗に行くことになる。

いろいろ比較してみるのも面白い。

特記事項:現在、整理用のツールを整備中。