ISO9001的な視点で見た企業の不祥事(森永乳業)

あまり大きな記事にはなっていないようだが、森永乳業が大腸菌が発生しているとして商品の回収を行っている。

商品回収に関するお詫びとお知らせ
http://www.morinagamilk.co.jp/information2/newsentry-3018.html

詳細が出ていないので、若干伝聞であるが、大腸菌の検査をしないで出荷していたとのことであった。
ことは大腸菌なので食品安全の問題ではあるが、ISO9001の視点からも少し見てみる。

さて、直接的な項番は以下のものになる。

8.7 不適合なアウトプットの管理
8.7.1 組織は、要求事項に適合しないアウトプットが誤って使用されること又は引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にしなければならない

 組織は、不適合の性質、並びにそれが製品およびサービスの適合に与える影響に基づいて、適切な処置をとらなければならない。これは、製品の引き渡し後、サービスの提供中又は提供後に検出された、不適合な製品およびサービスにも適用されなければならない

 組織は、次の一つ以上の方法で不適合なアウトプットを処理しなければならない
a) 修正
b) 製品およびサービスの分離、散逸防止、返却又は提供禁止
c) 顧客への通知
d) 特別採用による受け入れの正式な許可の取得

 不適合なアウトプットに修正を施した時には、要求事項への適合を検証しなければならない。

 今回の対応を見ると、上記のb)、c)に対応した処理を行っており適正な処理だろう。
 さて、この後の対応としては再発防止が期待される。
 そのために、一般的に行われるのは原因の明確化になる。

 最初に疑問が生じるのは、「なぜ出荷したのか」になる。
 一部の報道では、「本来すべき、大腸菌検査が行われていないまま出荷した」とあるが、これは、注意が必要だ。
 私は、専門家ではないので多少の勘違いがあるかもしれないが以下のように理解している。
・一般的に食品工場であるので衛生面では対策をとっているはず。落下菌検査なども行っているだろう。
・それでも、100%ということはないので、大腸菌の検査を行う
・ただし、大腸菌はすぐには繁殖しないので、一定期間(3日ぐらい)留め置いて検査後に出荷する。

 したがって、今回の事故は、「適切に留め置かれた期間後の検査を行うのではなく、製造後の直後の検査でOKを出した」と理解している。
 さて、これはどんな項番が関係してくるだろう。
 まずは、下記の項番が関連する。

8.5.4 保存
 組織は、製品およびサービス提供を行う間、要求事項への適合を確実にするために必要な程度に、アウトプットを保存しなければならない

8.6 製品およびサービスのリリース
 組織は、製品およびサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画した取り決めを実施しなければならない。

 仮に、一定期間保管した後で大腸検査をして出荷しなければいけないのにこれを怠っていたとしたら、この項番に対しての不適合になる。

 次に、なぜこの計画が守られなかったのか。
 再発防止が行くつく先の多くは、下記の項番に向かう。

7.1.2 人々
 組織は、品質マネジメントシステムの効果的な実施、並びにそのプロセスの運用および管理のために必要な人々を明確にし,提供しなければならない

もしくは

7.2 力量
 組織は、次の事項を行わなければならない
a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンスおよび有効性に影響を与える業務をその管理化で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする
b) 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする
c) 該当する場合には、必ず、必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する
d) 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する

あるいは

7.3 認識
 組織は、組織の管理下で働く人々が、次の事項に関して認識を持つことを確実にしなければならない
a) 品質方針
b) 関連する品質目標
c) パフォーマンスの移行上によって得られる便益を含む、品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献
d) 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味

確かに、働く人々の意識が低く、規則を守らなくても良いという組織風土があるならば、まずはこれを改善する必要があるだろう。

しかし、こうした事故の根底はマネジメントシステム自体の脆弱さがあると考える。

製品およびサービスの提供に関して以下のような項番がある。

8.5.1 製品およびサービス提供の管理
 組織は、製造およびサービス提供を、管理された状態で実行しなければならない

 管理された状態には、次の事項のうち、該当するものについては、必ず含めなければならない
・・・ 略
c) プロセス又はアウトプットの管理基準、並びに製品およびサービスの合否判定基準を満たしていることを検証するために、適切な段階で監視及び測定活動を実施する

 したがって、プロセスとして、製造・保管・検査の順で処理しないと出荷できないはずなのに製造・検査で出荷できてしまっているプロセウ設計が間違っていることになる。

原因分析は、なぜ途中のプロセスを省略しても気がつかないのか。この点を探る必要がある。人の教育はその後だろう。

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