ドラッガー「プロフェッショナルの条件」
第6章 イノベーションの原理と方法
「奇跡は再現できない」で始まるこの章では天才的なひらめきを対象としない。
あくまでもマネジメントの立場からイノベーションを見る試みを行っている。
イノベーションは計画的に生み出せないとしても、生み出すための活動の原理はある。こうした信念がドラッガーにはあるのだろう。
彼は言う。
「イノベーションの方法として提示し、論じるに値するのは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけである。」
さて、この章では何が書いてあるんだろう。
少し整理してみる。
1.なすべきこと
(1)機会を分析することから始めること
下記の7つの機会について体系的に分析することが求められる。
①予期せぬこと
②ギャップ
③ニーズ
④構造の変化
⑤人口の変化
⑥認識の変化
⑦新知識の獲得
(2)イノベーションは知覚的な認識である。
外に出て見て聞くことをしなければならない。知覚を持って彼らの期待、価値、ニーズを知ることだ。
参考:ジョブ理論や顧客インサイトと一致する
(3)焦点を絞り単純な物にすること
新しい物は必ず問題を生じる。複雑だと、直すことも調整することもできない。
参考:大きく考え、小さくつくり、学習するという従来の知見と一致する
(4)小さくスタートしなければならない
イノベーションが、最初の段階からほぼ正しいという程度以上のものであることはまれである。変更がきくのは規模が小さく、人材や資金が少ないときだけである。
(5)最初からトップの座をねらわなければならない
大事業にしろといっているわけではない。そもそもイノベーションが事業になるかどうかなどわからない。
しかし起業家としての戦略は、何らかの意味において、トップの座を狙う物でなければならない。
参考:思いつきでイノベーションが生まれるわけではない。最初から未来を約束した物はない。注意深く、まずはやってみて試行錯誤を繰り返すことのみで実現できる。
2.なすべきでないこと
(1)凝りすぎてはならない
普通の人が利用できる物でなければならない。
組み立て方や使い方のいずれについても凝りすぎたイノベーションは、ほとんど確実に失敗する。
参考:すべきことの(3)に対応
(2)多角化してはならない
散漫になってはいけない。一度に多くのことを行おうとしてはならない。
(3)未来のためのイノベーションを行おうとしてはならない
イノベーションには長いリードタイムが伴うときがある。しかし、今日の医学上のニーズが存在しない医薬品の開発研究に着手する製薬会社はない。
参考:未来のに起きそうな問題ではなく今の問題に着目すること。すべきことの(2)に対応
3.成功するイノベーションの条件
(1)イノベーションは集中でなければならない
※自分の専門分野に集中することの意
(2)イノベーションは強みを基礎としなければならない
「自分や自分の会社に最も適した機会はどれか。自分が最も得意とし実績によって証明済みの能力を生かせる機会は何か」を考えること。
(3)イノベーションは経済や社会の変革を目指さなければならない
参考:結局イノベーションを既存の事業と分ける唯一の特徴はここにある。
(4)イノベーターはリスクを冒さない
イノベーションは、どこまでそのリスクを明らかにし、小さくできるかによって、成功の度合いが決まる。
さて、現在、「イノベーション」を中核としていろいろな人と意見交換をしている。
議論のプラットフォームあるいは知見といった方が良いのだろうか、様々な本に目を通すようにしている。新しい本もあれば、大分前に読んだはずだと思っている本もある。
今回は久しぶりに読んだドラッガーの本から引用した。
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