「国家はなぜ衰退するのか」

■読書の記録 2021/7/22

「国家はなぜ衰退するのか」
上下巻にわたるこの書籍をやっと読み終えた。
古代から現在までの世界で起きた侵略行為から現代の貧困の原因を探るという取り組みを記したものになる。
古代ではローマが、中世ではスペインやフランス、近世ではイギリスが世界に進出していった中での出来事を中心に、なぜ貧困は続くのかを論じている。
その原因に、包括的という言葉と収奪的という言葉で、平等な法体系、私見の安定的な付与、開かれた情報伝達が成長とイノベーションの源泉であることを示している。
現代での独裁的な国家が見かけ上成長しているのはキャッチアップする余地があるにすぎず、国家が富と権力を独占している国は他者から奪うことでしか成長できず、イノベーションを生み出さないと断じている。
しかし、現在のこの状態は必然かと言えばそうではなく、少しずつの差異と偶然の産物で、いくつもの選択肢があったと考えられる。しかし、制度が収奪的であれば、その未来は変わらないだろうし、多かれ少なかれ南米やアフリカ以南の貧困が解消されるのは困難が待ち受けていることは理解できる。
同じ命題を「組織はなぜ衰退するのか」に置き換えても同じような因果律を想定できる。
情報を開示せず、経営トップが権力にしがみつき、社員を無視した制度の押し付けをすればおのずと組織の活力は奪われてゆく。
上下巻にわたり読みごたえはあるし、途中の侵略の下りはすこし気持ちが悪くなるが、それでも一読をお勧めする。

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