戦略人事:人事部門の仕事をAIで代替できるのか(ChatGTP問題)


先日、Webサイトの作り方(実装の技術)とChatGTPの利用について意見交換をしたが何かかみ合わなかった。基本的な用語の理解の違いや技術に関しての経験の違いが背景にある。AIは万能ではなく、当然、知識活動を代替してくれるわけではない。
人事部門の仕事の一部を代替できるが全てではない。ポイントポイントでは専門家が介在しなくてはならない。

■ChatGTPに対する誤解

誤解というのは言い過ぎかもしれないが、いろいろな事が混在されている。
ChatGTPについてすこし整理しておく。

①製品名とカテゴリ
ChatGTPは、OpenAI社の製品である。その機能は、学習したデータに基づく「テキスト」の生成であり、質問されたことへの自動回答のシステムである。出力されるのは「テキスト」である。これをどう取り扱うかは利用者が考えることになる。

同時に議論されることに「生成AI」がある。これは、AIによりいくつかのアウトプットが期待される。良く議論されるのは、画像(絵画)の生成、音楽の生成、動画の生成などがあり、テキストを生成するChatGTPもこの範疇に入る。

②安全性とは何か
かつてのAIの研究では「正しい答えを出す」ことが主眼であったのが、ここ数年のAIは「確率的に正しそうだ」というレベルでいろいろなものを出力させる。したがって、その内容が正しいかどうかは分からない。そして、「ガーベージインガーベージアウト」の言葉通り、学習内容が偏れば結果も偏る。
安全性とは、その内容が正しいかどうかを検証されることもなく、拡散されることだろう。いわゆるフェイクニュースに当たる。
また、著作権の問題なども解決されていない。
企業内で使う分には良いかもしれないが、例えば企業内の研修で使われるテキストが、かつて有料で購入したものの再利用であれば問題が生じかねない。

③適/不適
業務の自動化について利用される記事はいくつか見かける。

○セキュアに生成AIを活用するため『Azure OpenAI(ChatGPT)』を採用し、さらなる行政サービスの向上に期待
2023.11.15
https://www.jt-tsushin.jp/articles/column/platform-otsuka-shokai-20231025

しかし、上記にも述べたように、質問に対してテキストで答えを返すシステムである以上、利用できる場面は限定される。一番考えられるのは、問い合わせに対する資料やコメントの提示であろうか。
いわゆる答えが決まっている業務であり、利用者が一定の専門知識があることが前提である。答えのない創造的なこと(例えば、貧困問題を解決するための政策)などは一筋縄では行かない。
適不適があることを理解しなければならない。

■人事部門の仕事

ChatGTPによれば「人事部門の仕事」は下記であるそうだ。

①採用と雇用: 人事制度は、新しい従業員を採用し、雇用契約を管理するプロセスを規定します。これには求人募集、選考、面接、採用手続きなどが含まれます。

②育成とトレーニング: 従業員のスキル向上や専門知識の向上を支援するためのトレーニングプログラムや育成計画が人事制度に含まれます。

③パフォーマンスマネジメント: 従業員の業績評価や目標設定、フィードバックの提供、昇進や報酬の決定などが含まれます。

④報酬と福利厚生: 給与体系、ボーナス、手当、福祉制度など、従業員への報酬と福利厚生の基準と運用が人事制度で管理されます。

⑤労働時間と休息: 勤務時間、休憩時間、休暇制度など、労働時間と休息に関する規定が含まれます。

⑥労働関係とコミュニケーション: 従業員とのコミュニケーションや労使関係の構築・維持に関するガイドラインやプロセスが人事制度に含まれます。

⑦多様性とインクルージョン: 多様性とインクルージョンを促進するための方針や取り組みが人事制度に反映されます。

⑧法令遵守と規程: 労働法や関連する法令に基づく規程やポリシーが人事制度で明確にされ、遵守が確保されます。

⑨退職と離職: 従業員の退職や離職に関する手続きや給与の整理が人事制度に含まれます。

そして人事制度とは「組織内で人事管理を行うための体系的な枠組みやルール、プロセスのこと」としている。

人事部門の仕事を「運用」と「保守(制度設計)」に分けたときに、AIは手役になれるだろうか?
例えば、面接と採用をAIが行なうことは可能かもしれないが納得性は得られないだろう。報酬と評価は人が行なうよりAIの方がトラブルは少ないかもしれない。しかし、いずれもAIが補助であり、運用には専門家の関与が望ましい。とはいえ、AIは有能なアシスタントになるだろう。

制度摂家に関しては、あまたの制度の事例の学習をさせることができればいつか可能になるかもしれないが今はまだ無理であろう。なぜなら、仮に制度の例を提示したとしても、それが当社に最適かどうかは分からないからだ。

たとえば、賃金制度一つとっても、AIが出力した「制度」が最適かどうかは状況によるからだ。

(「人事制度の内、賃金制度で最適なものは何か」に対すChatGTPの回答)

最適な賃金制度は、組織の特性や目標、従業員のモチベーションを考慮して設計される必要があります。以下は、異なる賃金制度の中から最適なものを選択する際に考慮すべき要因です:

組織の戦略と目標: 賃金制度は組織の戦略や目標と一致している必要があります。組織が成果主義を重視するならば成果主義の賃金制度が適していますし、労働者の安定性を強調する組織であれば基本給重視の制度が適しているかもしれません。

市場競争力: 組織の賃金水準が市場において競争力を持つことが重要です。同業他社との競争において、賃金水準が適切でない場合、優れた人材の獲得や維持が難しくなります。

従業員のモチベーション: 従業員のモチベーションを向上させるために、賃金制度がインセンティブや報奨制度を含んでいるかどうかが重要です。成果主義、ボーナス、昇進の機会などがモチベーション向上に寄与します。

公平性と透明性: 賃金制度は従業員間での公平性を保つ必要があります。同じ仕事や役割を果たす従業員には同等の報酬が与えられ、透明性が確保されるべきです。

スキルや貢献度の考慮: 従業員のスキルや貢献度に基づいて報酬を決定することが、公平かつ効果的な賃金制度の要素です。スキルや成果に応じた昇給や昇進の仕組みを導入することが検討されます。

法令遵守: 賃金制度は地域の法令や規制に合致している必要があります。法令遵守を確認し、法的なリスクを回避するためのシステムが整備されているかが重要です。

組織の文化と価値観: 賃金制度は組織の文化や価値観にも合致している必要があります。組織が協力や共有を重視するならば、協力を奨励する報酬制度が適しています。

最適な賃金制度は組織の状況や目標によって異なります。組織のニーズや従業員の期待に応じて、柔軟かつ適切な賃金制度を構築することが重要です。

(ここまで)

■今後の期待

とはいえ、優秀なアシスタントが手に入ることは間違いない。

現在のChatGTPをはじめ、多くのAIツールは、追記的に学習する機能は付加されていない。いずれこれは解消されるかもしれない。

すでに、自社用にカスタマイズできるエンジンなども公開されている。

○AI Engine: Chatbots, Generators, Assistants, GPT 4 and more!

説明
ChatGPT のような独自のチャットボットを作成したり、コンテンツや画像を生成したり、テンプレートを使って AI 関連の作業を調整したり、迅速なタイトルや抜粋の推奨を楽しんだり、エディターで AI Copilot を使って作業を高速化したり、OpenAI の使用状況を追跡したり、などなど。AI Playground では、翻訳、修正、SEO、サジェスト、WooCommerce の商品フィールドなど、さまざまな AI ツールを利用できます。

さて、こうしたエンジンを使うにも情報技術の知識が必要である。
マイクロソフトのAzure、アマゾンのAWSなどのクラウドサービスとは何かについても知っておいて欲しいが、無理なら誰かに相談してもらいたい。

わたしではどうかな?

とにかく根気よく試して欲しい。

(2023/12/06)