ライドシェア問題へのコメントです。
■問題の混在は避けるべきである
ライドシェアは手段でしかない。これを複数の問題で混在させてはならない。
今の議論の中心は「人手不足」ではあるが、これはあまりにも漠然としている。目に見える現象の一つにしか過ぎない。
交通問題にしても
・交通弱者
・過疎地
・オーバーツーリズム
・配車システム
と言った切り口がある。
タクシー業界の苦境やバスの減便問題は、根底の問題ではない。単なる事象である
■なにげなニュース
○ライドシェア運転手、タクシー会社が雇用 業務委託認めず 政府方針
2023年12月12日
一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」について、政府がタクシー会社による雇用を条件に認める方針を固めた。業務委託は認めない方向で、近く開かれるデジタル行財政改革会議で具体案を示す。
政府はタクシー不足の解消に向け、地域や時間を限ってライドシェアを認める方向で検討している。過疎地などで例外的に認めている「自家用有償旅客運送」制度を見直し、都市部や観光地でもできるようにする。運行管理はタクシー会社とする方針だ。
https://www.asahi.com/articles/ASRDD6T62RDDULFA00Y.html
元々過疎地でのライドシェア的な運用は「自家用有償旅客運送」制度として存在する。これを拡大するという方向性は理解できるが、結局は「タクシー業界」の保護であり、仕事のパイの分け合い方の問題である以上タクシー運転手の賃金の低さについてのてこ入れを行なうわけではない。
タクシー運転手不足がこれで解決できるのかというと論点が異なる。
観光地での交通機関の確保と交通弱者が問題化する過疎地の問題を混在していては議論がおかしくなる。過疎地では
・公共交通機関が整備されておらず自家用車に頼らざるを得ない
・タクシーがあったとしても需要は多くなく多くの配車は必要ない
・少ない配車では十分な収益があがらない
ために「自家用有償旅客運送」制度があり、これが機能していないというレベルではない。
タクシー会社が参入できないなら、別の事業者に参入を促すというのは理解できる。
○株式会社の参画検討 自家用有償運行で国交省
2023年11月30日
自家用有償旅客運送は過疎地などに限って、一般ドライバーが住民らを送迎できる制度。国交省は市町村などの委託を受けた株式会社の参画を検討するとした。
ライドシェアに関しては、警察庁は一定の要件を満たせば運転手の二種免許は不要との考えも示した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113001222&g=pol
■観光地対策
一方で、観光地での交通機関のオーバーフローは問題化している。
こちらの問題は、交通機関のキャパシティアップと効率化の問題であり、効率化の為のライドシェアの活用や、タクシー以外の交通機関の確保は理解できる。
○「全国的に広げていければ」タクシーの供給不足解消へ 事前予約制の相乗りタクシーが金沢の一部区間で開始 観光地を周遊も
2023年11月23日
観光需要の回復により多くの観光客が訪れている金沢市で、タクシー不足が課題となる中、23日から金沢駅と市内中心部を結ぶ相乗りタクシーの運行が始まりました。
JR西日本や大和タクシーなどが共同で始めたのは「デマンドタクシー」
JR西日本がリリースしているスマートフォンのアプリ「WESTER」から、当日の午前9時までに予約すると1人あたり1100円で乗車できます。支払方法はキャッシュレス決済に限定されています。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/854719?display=1
こうした論点は、オーバーツーリズムとセットにして考えなければならない。
観光地でないところでは高齢者などの交通弱者はいても観光客は数が少ない。少ない観光客が「タクシーがない」と困ろうが、解決する為の優先順位は低くなる。
こうしたことはライドシェアの水深で解決できるかは不透明であり、政府の取り組みも問題を混在させている。
○自家用車タクシーの営業容認 条件付きで2種免許不要
2023/12/07
政府は7日、タクシー運転手の不足を補うための規制緩和策を固めた。タクシー会社の講習を受ければ、旅客運送に必要な「第2種運転免許」を持たない一般ドライバーも自家用車をタクシー営業に利用できるようにする。業務委託は認めず、タクシー会社が雇用することなどが条件だ。12日に開く政府の規制改革推進会議の議論を経て、実施時期を含めた詳細を詰める。
新型コロナウイルス禍の収束による人出回復や訪日客の増加で全国的に運転手不足が深刻化している。ただ日本企業の多くは兼業や副業を認めておらず、運転手がどれだけ増えるかは見通せない。
https://nordot.app/1105450226779685233
観光地問題とみることができる。
■タクシー会社と運転手
本来、人を有償で乗せることを生業とする事業をタクシーという形態だけで良いのかと云う議論と既得権益のあるタクシー業界の維持という問題を混ぜることの是非から検討しなくてはならない。
こうした、既得権益についての混乱は「民泊問題」と重なる。当時も、ホテル業界などから「安全」などを理由に反対が起こった。それと同様の動きであろう。
○【国土交通省】「ライドシェア」解禁議論 タクシー業界は強く反発
2023-11-15
政府が、一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶ「ライドシェア」解禁の検討を本格化させる。全国の観光地や過疎地でタクシーやバス不足が叫ばれる中、解決の切り札として期待する声の高まりを受けたものだ。
一方、全国ハイヤー・タクシー連合会は9月下旬の事業者大会で、「解禁を全力で阻止する」と決議。国の規制の下で多大なコストをかけて安全管理の責任を負うタクシー事業者が競争上不利になる事態を警戒し、「タクシー事業の根幹を揺るがす」と反発している。
ライドシェアは、海外で米ウーバーなどのアプリを使ったサービスの普及例があるが、日本では「白タク」行為と呼ばれ道路運送法で原則禁止されている。ただ、コロナ禍で国内のタクシー運転手の約2割が離職。その状況下でインバウンド(訪日客)需要が急回復し、タクシー不足が各地で顕在化してきたことで、解禁を求める動きが広がった。
https://www.zaikai.jp/articles/detail/3367
反対の声がタクシーの運転手から出ていない。彼らが「ライドシェア」で雇用が奪われるわけではないだろう。
■競争の公平性
とはいえ、乗客にとっての安全面への配慮は当然であろう。
特に飲酒運転は問題になるので、何らかのチェックの機構が求められる。それは飲酒事故が起きてからでは遅いからだ。その動きはすでにある。
○ついに始まった「白ナンバー車の飲酒チェック義務化」多くの企業が当事者に ただ同日の一斉検問で酒気帯び複数
2023.12.07
自動車5台以上を保有する事業所で、運転の前後におけるアルコールチェックの義務化が始まりました。同日深夜の東京では一斉の飲酒検問も実施され、複数の酒気帯びが摘発されています。企業の対応がより問われるようになっています。
https://trafficnews.jp/post/129726
その他にも、事故時の保険、一定の管理メカニズム(運行記録、乗車記録の保持、支払い管理)なども必要である。その上で、現在の民泊と同じ管理水準にすれば後は自助努力でなんとかなるだろう。
下記の様なことは杞憂になるはずだ。
○「ライドシェア解禁、タクシー退場」では誰も得しない…タクシー業界代表の「同じ条件で競争させて」という訴え
2023/12/04
規制に日々縛られているタクシー業界が存在する一方で、規制が緩く安全責任の主体が曖昧なままに「ライドシェア」を認めるのは、乗客の安全確保の観点からも問題があり、また市場競争の点からも不平等です。「ライドシェア」を議論するならば、まずは「タクシーの規制緩和」を先に議論してほしいと思います。
https://president.jp/articles/-/76251
■競争の結果
海外での「ウーバー」の普及は、こうした安全面でのトレードオフが解消されているからだと理解した方が良い。
○ライドシェア解禁後、Uberに勝てる日本企業は存在するのか
2023年11月24日
国内では現在、ライドシェア導入の是非をめぐる議論が再燃しており、解禁に傾くのであればウーバーの参入はほぼ間違いないところだろう。同社の日本法人はこれまで波風立てぬよう努めてきたが、状況が一変する日が訪れるかもしれない。
政府が、ライドシェアの問題をタクシー業界と語る際に「公共交通機関」の言葉を交ぜる発言をするが間違っている。問題を混在させることは都合の良い結論にミスリードさせる。
行政が口を出すライドシェア問題は、「既得権益の維持」である。
これを忘れてはならない。
起きている問題(人手不足)と原因(賃金の低さや労働環境の劣悪さ)と利害(タクシー会社の経営難)、手段(IT技術を用いたサービス展開)を混ぜてはならない。
何を俎上にあげているのかを意識すること。
交通機関の多様性を確保するというコンセプトで考えれば、いずれ公平な競争が市場を安定化させると思う。
(2023/11/27)