ライドシェアで解決すべき問題は特定化しないと政策評価はできない。
過疎地を含む交通空白地帯への対処はライドシェアだけではない。
KPIを設定しても、それへの影響は複合的である。
■過疎地での交通問題の温故知新
○一般ドライバー活用の運送サービス、来春から開始
2023年12月23日
「タクシー規制の合理化を進めるほか、交通空白地域で自治体、商工会、農協などが運営できる非営利型運送サービスについても年内から大幅に改善し、手引きの公表、各種交付金による財政支援等により導入を推進する」
https://www.zaikei.co.jp/article/20231223/751235.htm
過疎地などでドライバー確保が困難な場合に、二種運転免許を持たなくても一定の資格を満たせば、市町村やNPO法人等が自家用車で運送サービスを提供可能とするためのものとして「自家用有償旅客運送制度」(道路運送法第78条第2号)があり、その見直しにを行なうとしている。
しかし、これはライドシェアで解決できるのだろうか。
○路線バスが相次ぎ廃止、地方で急増する「交通難民」《特集・自治体荒廃》
2009/03/04
地域の交通インフラを支える代替手段として登場したコミュニティバスも、利用者の伸び悩みと財政難で危機に立つ。今年4月からは3路線中、島泊~佐多間の廃止を決定。同区間の交通手段は、わずかに残る片道250円の路線バスのみとなる。
https://toyokeizai.net/articles/-/2971
この記事は2009年の話である。
交通難民や交通空白地域の話は今に始まった話ではない。
現在でも路線バスの廃止問題は地方の自治体を苦しめている。
■突きつけられる課題
路線バスの廃止の問題は、運転手不足であり、これはタクシー運転手の不足の問題と重なる。
○高齢化、応募なし…減便・路線廃止 バスの運転手不足が深刻化 “地域の足”どう守る
2023年11月13日
運転手確保の取り組みです。アルピコ交通は11月10日、長野市と松本市を結ぶ高速バスの運行を2024年3月末で廃止すると発表しました。その理由の一つが「運転手不足」です。バス業界では、運転手の高齢化が進む一方、募集をかけても新たな働き手が現れず、運転手不足が深刻化しています。減便や路線廃止などの動きも表面化する中、地域の足をどう守っていくか。取り組みを取材しました。
https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=16356
これに対し、規制緩和で対応しようとしている。
○2種免許試験が外国語で受験可能に、20言語の例題配布へ…タクシーやバスの運転手不足に対応
2023/12/25
タクシーやバスの運転に必要な「2種免許」の学科試験について、警察庁は外国語での受験を可能とすることを決めた。現在は日本語のみで行っており、運転手不足に悩む業界から多言語化を望む声が出ていた。
車両後部の電光掲示板に「運転士募集」と表示して走るバス
警察庁は今年度中に、英語や韓国語など20言語に翻訳した例題を、問題を作成する全国の警察本部に配布する。導入する言語は、各都道府県警が外国人の居住の状況をもとに判断する。タクシーが運転できる「普通2種」と大型バスの運転に必要な「大型2種」の免許保有者は、昨年末時点で計88万536人いるが、このうち外国籍の人は計5189人にとどまっていた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231225-OYT1T50196/
日本人が対応でき無いなら外国人にという発想だが、こうした免許がなくとも運行できる方向で議論が進んでいることと矛盾する。
混沌としていることが不安である。
■期待されるライドシェア
一般のドライバーが参入できるライドシェアについては、過疎地でのライドシェア解禁は反対はあるものの期待もあるらしい。
○「移動手段が増える」 来年4月部分解禁のライドシェアに過疎地から熱視線 タクシー業界は「全面解禁よりマシ」
2023/12/21
タクシー業界は、2種免許を持たない一般ドライバーが自由に客を乗せて料金をとる「白タク」に、安全性や過当競争の懸念から反対してきた。ドライバーがタクシー会社と契約を結ぶことを条件にするなど一定の配慮がみられる内容に、県タクシー協会の山口俊則専務理事は「全面解禁よりはいい」と受け止める。
同日示された中間まとめには、2種免許の教習期間短縮など業界が求めた規制緩和も盛り込まれた。山口専務理事は「まずは規制緩和でプロの運転手が増えるのを待っても良かった」と、早急に進む議論にはくぎを刺した。
https://373news.com/_news/storyid/187319/#google_vignette
希望を云えば、ライドシェアが下記の様な声に応えられることが期待される。
○「どうやって学校行けば…」一畑バス4路線廃止 高校進学の直前、進路に影響も「望む学校に行かせたい」 代替手段なく、行政対策も不明
2023/12/22
廃線方針が示され、義母(69)による送迎を考えたが、義母への負担を考慮して断念した。生活を大きく変える引っ越しも難しいとの結論に至った。現時点で代替手段は見つからず、行政側の対策も不明で「どうやってうちの子は学校に行けばよいのか分からない」と肩を落とす。
https://nordot.app/1110906650884489663
しかし、そんなに都合の良いようにドライバーが配置できるわけではない。
過疎地はそもそも人がいない。
■成功を確信できるKPI
また忘れてはならないことがある。
過疎地での交通問題は日常で使用する交通手段であり、アドホックすなわち非常時での交通手段の確保ではない。
それは、学校に行くためのスクールバスであったり、病院やスーパーへの買い物であったりと言った箇所への手段としてのコミュニティバスと同等の機能である。一人二人が利用するタクシーとは、費用負担が全く異なる。
そもそもバスの運行のプロである彼らが運営維持できないことがタクシーで代替できると考えるのは安易すぎる。
もし、こうした地域交通の課題が解決できたかどうかを知りたいのであれば。
・登録運転者数
・運転手稼働率
・運行時間
・輸送人員
・配車希望充足率(乗りたいと思ったときに乗れたか)
などを測らなければならない。
その上で、住民アンケートなどを実施すべきである。
もっとも、運賃がタクシー並みになると聞く。今まで数百円だったものが、数千円になったとしたらいかほどの人が使うのか。運転手稼働率がまともな数字にならなければ、「失敗」であろう。
■すでに行なわれている試み
しかし、工夫もされている。
下記も参考にしておこう。
○地域ライドシェアを「Uberアプリ」で配車!人口4,500人の町で独創的試み
観光客も利用可能、公共交通を代替
2023年11月14日
2015年に京丹後市とNPO、ウーバージャパンで「公共交通空白地有償運送(現交通空白地有償運送)」導入に向け検討を開始し、市地域公共交通会議で承認を得た後国交省へ申請した。実現までに、認定講習会やスマートフォン操作の研修、運輸支局による安全講習会などを行い、ドライバーの育成を図ったという。登録ドライバー18人のもと、2016年に正式にサービスを開始した。
導入後も、スマートフォンを持っていない高齢者などに代わって代理で配車可能な「代理配車制度」や、アプリのシステムを変更し現金払いも可能にするなど、利用者の声にこたえる形で改善を図っている。電話での配車も受け付けている。
(2023/12/24)