ライドシェアで解決すべき問題は特定化しないと政策評価はできない。
既存のタクシー業界を守りたいというのであれば、タクシー業界の実情をウーバーに近づけるべきである。
■情報技術の破壊力
すでにデジタル化は、新聞業界や出版業界に打撃を与えている。これらの産業はよく云われる活字離れとは関係ない。情報の収集がインターネットで行なわれることなどが大きい。街の本屋はアマゾンに駆逐されているだろう。銀行業務もデジタル技術の発展で様変わりし、証券会社もネット系が増えている。
情報技術の発展は既存事業の組み替えがおきる。
タクシーゴーはもうすでに日常の中にある。
いつまでも駅でのタクシープールや流しでのタクシーの確保は時代遅れであると考えた方が良い。
■タクシー業界の反対の理由
とはいえ、全ての事業者がDX化できるわけではなく、ライドシェアについても賛否の温度差がある。
○「移動手段が増える」 来年4月部分解禁のライドシェアに過疎地から熱視線 タクシー業界は「全面解禁よりマシ」
2023/12/21
タクシー業界は、2種免許を持たない一般ドライバーが自由に客を乗せて料金をとる「白タク」に、安全性や過当競争の懸念から反対してきた。ドライバーがタクシー会社と契約を結ぶことを条件にするなど一定の配慮がみられる内容に、県タクシー協会の山口俊則専務理事は「全面解禁よりはいい」と受け止める。
同日示された中間まとめには、2種免許の教習期間短縮など業界が求めた規制緩和も盛り込まれた。山口専務理事は「まずは規制緩和でプロの運転手が増えるのを待っても良かった」と、早急に進む議論にはくぎを刺した。
https://373news.com/_news/storyid/187319/#google_vignette
「白タク」という言葉は「違法」というイメージがあり、規制により制約されているタクシー事業との競争の公平性が担保されないのは不公平であるというのがタクシー業界の論理であろう。
これに対しての施策は
・ライドシェアで運転する人たちはタクシー会社の管理下に置く
・規制の緩和をする
であろうか。
○ライドシェア、来年4月解禁 タクシー会社管理の日本型
2023年12月20日
解禁は、「自家用有償旅客運送制度」(道路運送法第78条第2号)の見直しにより実現する。同制度は、過疎地などでドライバー確保が困難な場合に、二種運転免許を持たなくても一定の資格を満たせば、市町村やNPO法人等が自家用車で運送サービスを提供可能とするためのもの。解禁後は、タクシー会社による配車アプリデータを活用し、都市部や観光地において、タクシーが不足している地域や期間、時間帯に限定し、地域のドライバー/自家用車によるライドシェアを認める。
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1555961.html
○「ライドシェア」来年4月から大幅解禁へ 一般ドライバーの教育や運送責任 タクシー会社が担う方向
2023年12月18日
一般ドライバーが有料で乗客を運ぶ「ライドシェア」について、政府が2024年4月から、大幅に解禁する方針を固めたことがわかった。
政府は、2023年度内に新たな制度を設ける。
タクシー会社の配車アプリのデータを活用し、タクシーが不足する地域や時間帯を明確化したうえで、2024年4月から、一般ドライバーが有料で客を運ぶことを認める方針で、タクシー会社が運転手の教育や運送責任などを担う方向。
https://www.fnn.jp/articles/FNN/631316
しかし、運賃体系は既存のままである以上、運賃改定をし、ライドシェアで働く人々を低賃金で雇用しなければ、コスト構造は改善せずタクシー会社の経営上の苦境は改善されない。
下記の赤字体質の改善にはつながらない。
○タクシー業界、半数近くが「赤字」 人手不足も深刻化 10年間で「半減以上」が1割強
2023年11月15日
人手不足が深刻化しているといわれるタクシー業界。帝国データバンクによると、従業員数が10年前から半数以下に減少したタクシー会社が14.5%(352社)にのぼったほか、半数の会社が赤字であることが分かった。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2311/15/news042.html
■ウーバーへの警戒
したがって、運行の無駄(待ち時間、配車までの走行ロス)を無くす努力をした上で、管理コストの低減を図らなければならない。
それができなければウーバーには対抗できない。
彼らは優位性を認識している。手ぐすね引いていることは明らかであろう。
○ライドシェア解禁なら参入 米ウーバーCEOが意欲
2023/11/16
米配車大手ウーバー・テクノロジーズのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は15日、米サンフランシスコの本社で共同通信などのインタビューに応じた。自家用車を使って有償で客を運ぶサービス「ライドシェア」が日本でも解禁されれば「当然参入したい」と意欲を示した。
https://nordot.app/1097783870918738345
ライドシェアが解禁されれば、タクシー運転手の雇用が奪われるとの懸念は根強いが、コスロシャヒ氏は「雇用を脅かしているとの証拠は見当たらない」と反論。運転手不足を背景に各地で移動の不便さを指摘する声も上がる中、「より多くの移動手段があることは社会にとっても有益だ」と話した。
これにどう反論するかが問題で、感情論は破滅の先送りうぃしているだけである。
■参入障壁
彼らタクシー業界は「プロのドライバー」という言葉を使う。しかし、今やカーナビが常態化しており、ドライブレコーダーも事故時の証拠として使われる時代である。かつての神風タクシーよろしく乱暴な運転をする人たちがいたことを忘れて「プロのドライバー」とは説得力は無い。
規制緩和は「参入障壁」を無くすことの意味も考えなければならない。
当然一定の管理責任はあるものの、自動車を保有しないタクシー会社がいずれ出てくる。
価格競争力を発揮できない業界であろうと、価格競争力に巻き込まれる業界であろうと、その時の経営戦略がなければ生き残れない。
さて、そうした事態になったときに、ライドシェアの解禁は何を持って評価されるべきであろうか。交通手段の多様かと云うことであれば、ライドシェアの利用率や、専業の運送会社の拡大であろうか。
しかし、それは既存の業界にはプラスになると思えない。
現在、日本のライドシェアの環境の整備は遅れている。
○ライドシェア制度、OECD諸国の34%が今も未整備 日本を含む13カ国
2023年12月23日
ライドシェア制度が未整備なのは、以下の5カ国で、タクシーのみの運用となっている。
アイスランド、イスラエル、トルコ、日本、韓国OECD加盟の38カ国を対象にしたライドシェア制度化状況をまとめると、ライドシェアを制度化しているのは16カ国、タクシー制度が十分に自由化されライドシェア同等のサービスが提供可能なのは9カ国、ライドシェアが未制度化なのは日本を含む13カ国となる。
否が応でもグローバル化の波が来る。
その準備を先にすべきであろう。
ガラパゴスのようなタクシー業界に未来があるのかはわからない。
いつか「タクシー業界」は死語になるかもしれない。
すべてウーバーのような「配送手配の会社」だけが生き残れるというのは妄想だろうか。
(2023/12/25)