戦略人事:混迷している人材獲得の戦場(ミスマッチを防ぐ場面をどこで考えるのか)


外的要因に頼ることは望ましくない

■人事部の悩み

直接人事部の担当者と話をすることはなく、ある程度類推であることを前提として、・・・

私自身はISO9001の審査員をしており、多くの企業の担当者と話をする。最近の話題では、やはり「人手不足」は深刻で事業の土台を揺るがしかねない状況になっている企業もある。そこでの悩みは①採用活動をしても効果が出ない、②採用してもすぐに離職する、③既存の社員でさえ辞めてゆく、という三重苦に苦しめられている。

要因の一つとして「給与」が挙げられることがあるが、人事部門で勝手に決められることはなく既存社員tのバランスで容易に変更ができない。飲食業や宿泊業、その他の一時的なパートでまかなえる業種でも、むやみに時給を上げられないのは同じなはずだが、世間はますます過当競争になってゆく。

○求人募集賃金2%増、物価の伸びに接近 給与増続く公算
2024年2月4日

ウェブ上の求人で募集賃金の上昇が続いている。求人サイトのデータを基にナウキャスト(東京・千代田)が作った新たな賃金指数は1月15日時点で前年に比べ2.0%上がった。同指数は政府統計の賃金の動きに5カ月ほど先行する。春に向けて一定の賃金上昇が続く見通しを映す。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA119LD0R11C23A2000000/

人の取り合いが激化している。

■人材紹介業の苦境

即戦力が欲しいと云うことになると、中途採用に頼ることになり、公的にはハローワークがあり、求人サイトなどへの掲載がある。しかし、実感としては、そこで募集をかけても集まりにくい職種は当然人は集まらず、あまり機能していないと聞く。

これに代わるアプローチとして「ヘッドハンティング」を効率化した求人サイトが最近話題となっている。仲介をしながらベストマッチを探すというやり方である。こうしたやり方は半世紀も前からあり、わたしもヘッドハンティングの話が持ち込まれたことがある。

その時に印象的であったのが
・報酬は成功報酬で年間給与の2割から3割程度
・企業もそうした費用を払うので条件は厳しい
・すぐに辞められても、能力発揮できなくても困る
・しかし、能力よりも重視するのは人柄である
・なぜなら、相性が悪いと成約後にトラブルが発生する
と言ったところである。

これはという人材はそうはないと云っていた。
安易にこの事業に参入するのは大変だろうなと云うのは今も同じなのだろう。

○人手不足の時代に人材関連サービス業の倒産が急増 ~中小の人材紹介会社は長い冬の到来か~
2024/02/03

 人手不足が深刻さを増した2023年。有卦(うけ)に入ると思われた人材関連サービスの倒産件数(94件)が、コロナ禍前の2019年(70件)を4年ぶりに上回った。
職業紹介業では2000年以降で最多の16件発生、コロナ禍前の2019年(4件)の4倍に急増した。人手不足で求人ニーズが増えるが、クライアントの条件に見合う候補者を確保できない中小の職業紹介業は多い。また、コロナ関連支援の対象も明暗を分けた。

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198331_1527.html

■発想の転換

面白い発想だなと感心した記事を2題紹介する。

○未経験者歓迎の転職拡大 人手不足で育成にも力
2024/02/05

 リクルートの転職支援サービスの分析によると、未経験者を採用する求人が急拡大していることが5日、分かった。22年度の求人数は新型コロナ禍前の18年度の3.2倍だった。企業は従来、即戦力の採用を重視してきたが、人手不足などを背景に育成にも力を入れる傾向が強まっている。

https://nordot.app/1127143313111220549

○日立・ソニー、副業人材を相互受け入れ AIなど先端分野
2024年1月31日

日立製作所とソニーグループが2024年から相互に社員の副業を受け入れる。若手・中堅社員を相手先企業の先端部門に派遣する。人工知能(AI)や半導体などが対象となる。働き手が副業先での成果を持ち帰れば、企業も人材価値の向上や技術革新につなげられる。人材の多様性や企業の競争力を高める手法として相互副業は新たな選択肢となる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2938G0Z21C23A0000000/

いずれも、当たり前のやり方では人材の調達ができないことを示している。
これが正解かどうかは分からないが、今までの常識に異を唱え試行錯誤をすることが需要であろう。

■求めよさらば与えられん

常識を転換すると云うことでは、「求人」という考え方を変えると言うことも考慮して欲しい。どういうことかと云えば、

「我が社では○○という人材を求めている」

「我が社では○○を提供できる」

と言う考え方にして、我が社に集うことのメリットを提示すると云うことである。
それは、報酬だけではない
・成長の機会の提供
・生活の質の向上
・キャリアパスの柔軟性
・オープンな風土による安心感
・結果としての離職率の低さ
など色々ある。

相手に「学歴」や「専門」を欲しい欲しいと求めるのではなく、何を与えることができるかを配慮してはどうか。応募してきたから採用してあげるという傲慢さはもう通じない。

(2024/02/08)