2024年3月。リストラの記事が目につくことが多い。
人事部門はリストラを対岸の火事として見ていることへの警鐘としていくつかに分けて現状を見てゆく。
前回の海外のリストラに続き、今回は日本のリストラの話
■整理解雇以上の動機付け
海外での人員削減のニュースが多く報じられている。
日本では少ないと思っていると足下をすくわれるかもしれない。
確かに日本においてはむやみな整理解雇は法的な問題を引き起こすだけでなく、訴訟による信用問題になりかねないリスクを抱えている。しかし、企業を取り巻く環境が素早い速度で変化し,これに対応しなければ企業の存続が脅かされるなら対応せざるを得ない。
特にグローバル市場で事業を展開している場合にはなおさらである。
そして、ここに来て国内でも人員削減の動きが活発化してきている。
○オムロンが国内外2000人削減…半導体など市況悪化響く
2024年02月27日
オムロンは26日、国内外で合計約2000人の人員を削減すると発表した。国内では一部グループ会社を除く40歳以上の正社員などが対象で、約1000人の希望退職を4月10日から5月末まで募る。主力の制御機器事業が注力する半導体業界などで市況が悪化したのに加え、依存度が高い中国の経済成長鈍化などから足元の業績が悪化。2024年4月―25年9月を構造改革期間とし、人員数やエリア、商品構成の最適化などを推し進める。
こうしたリストラは思いつきで行なわれるわけではなく以下のような戦略上の要請によるものであると聞く。
・売上高に対する販管費の比率を中期的に30%未満に引き下げる(2023年度見通しは32.7%)
・同プログラム実行により25年度には23年度見通し比で約300億円の固定費削減を見込む
すなわち、整理解雇をしなければ事業を進められなくなるということではない。
文字通りの「リストラ」である。
事業ポートフォリオの組み替え、これに伴う経営資源(ヒトを含む)のポートフォリオの組み替えが背景にあると思っている。
■拡大する日本でのリストラ
人員削減が事業上のリスクヘッジだとすれば今後も追随する企業が多くなるかもしれない。
事実、2024年3月1日時点では以下のように人員削減の報道を数多く聞くようになった。
○資生堂が早期退職を募集、1500人…希望者には転職活動支援も
2024/02/29
対象は、45歳以上で勤続20年以上の資生堂ジャパン社員。現在、資生堂ジャパンの社員は約1万3000人いる。構造改革では、早期退職のほか、商品数や販促物の削減、事務所配置の最適化なども含め今年1年間で約270億円を見込んでいる。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240229-OYT1T50157
他の記事では
「希望退職に踏み切る理由として、国内の化粧品市場で生活者の意識の変化や購買行動の多様化が加速する中、顧客視点に立った新しい価値や市場の創造を加速する必要があり、選択と集中で強化すべき領域へ投資を集中することで持続的な成長と収益性向上を両立させるとしている。」(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-29/S9LYG7T0G1KW00)とあり、今後の企業戦略の一環であることがうかがえる。
○イトーヨーカ堂、早期退職に700人応募 正社員の1割
2024年2月29日
セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂が2月末まで募集していた早期退職に700人程度が応募したことが29日、分かった。正社員全体の約1割に当たる。早期退職は2026年2月期までの黒字転換に向けた構造改革の一環。33店の店舗閉鎖などと併せて組織のスリム化を進める。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC293IG0Z20C24A2000000/
○オムロン、2000人削減へ 中国経済鈍化で業績悪化
2024/02/26
オムロンは26日、中国経済の成長鈍化やサプライチェーン(供給網)の混乱で業績が悪化したため、約2千人の人員を削減すると発表した。構造改革の一環で、人件費を削減して収益の改善を目指す。国内では千人程度の希望退職を募集する。
国内の希望退職は一部を除くグループ各社で募る。今年7月20日時点で勤続3年以上かつ40歳以上となる正社員らが対象。4月10日から5月31日まで募集する。海外では現地の労働法や規則に従って人員を削減する。グループ全体の人員は約2万8千人。
希望退職を含む構造改革で300億円の固定費削減効果を見込む。主力の制御機器事業で中国需要が振るわなかった。
https://nordot.app/1134767031113957558
おそらくは、他の企業でも同様に人員削減が進むのではないか。
(2024/03/01)