人手不足の特効薬はない。
黙っていれば「ヒトという財」を買い負ける。
■時給2000円のニュース
昨日(2024/02/28)の朝のニュースで「時給2000円」の話題が取り上げられていた。
もっとも、「時給2000円」に話題は以前から取り上げられており、人手不足を解消するための手段として選択肢に入れている企業は多かったようだ。
○すき家、アルバイト時給2千円超え…松屋は正社員初任給を25万円に増額
2023.12.12
大手牛丼チェーン「すき家」の一部店舗で、アルバイト店員の時給が2000円を超えていることが話題を呼んでいる。あらゆる業界で人材不足が深刻化するなか、各社は人材確保のために賃上げの動きをみせているが、店舗運営の大部分をアルバイト・パート店員が担う小売・外食業界でも時給の上昇が続いている。競合チェーンである「松屋」を運営する松屋フーズホールディングス(HD)も正社員の賃金を10.9%引き上げ、大卒初任給を23万円から25万円に増額するなど、アルバイト店員のみならず正社員の確保をめぐっても争奪戦の様相を呈しつつある。
https://biz-journal.jp/2023/12/post_366683.html
もちろんヒトが働く動機付けはたくさんあり、お金だけが全てではない。それでも貧困からの脱出は大きな動機付けになる。それを無視していれば人が集まらなくなり
・人手不足なので時給を上げる
・時給の良いバイトがあるので多くの人は良い条件の所をにゆく
・集まらないだけでなくそうした人々逃げられた店舗じゃますます人手不足になる
という無限ループに陥りかねない。
■賃金上昇の潮流
昨年(2023年)も同じような話題であっただろうが、企業の賃上げのニュースが多く報道されるようになった。それはパート社員や正規社員(初任給)でも関係なく大きなうねりになりつつある。
○まいばすも、イオングループがパート40万人「7%賃上げ」へ 労組トップは「年収の壁、突き破れ」
2024年2月19日
イオン広報によると、グループのパートの平均時給は現在1070円。7%の賃上げが実現すれば単純計算で75円程度の上乗せになる。昨年も労連は7%の賃上げで会社側と合意しており、2年連続の高水準の賃上げとなる。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/310112
○カゴメ、初任給9%増 16年ぶり引き上げ
2024/02/29
カゴメは、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を2024年4月から実施する。ベアの実施額は非公表だが、労使交渉で妥結した。ベアの実施は、2005年4月に導入した現行の給与体系以降で初めて。24年入社の4年制大卒の初任給は2万円引き上げ、22万7500円とする。初任給の引き上げは08年4月に実施して以来、16年ぶりとなる。
https://nordot.app/1135729890913353960
○武蔵野銀、6%賃上げ 29年ぶりのベア
2024年02月29日
武蔵野銀行は29日、基本給を底上げするベースアップ(ベア)や初任給を引き上げると発表した。従業員の賃金は7月分から平均6.0%程度上昇する。全正社員対象のベアは1995年以来29年ぶりだ。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024022900994&g=eco
この水準(22万円)では不十分であり。26万円も視野に入れているという記事も見る。
○筑邦銀行、25年度に初任給26万円 メガバンク水準へ
2024年2月27日
筑邦銀行は27日、大卒総合職の初任給を2024年4月の入行者から1万2000円引き上げて22万円にすると発表した。総合職の初任給を引き上げるのはベースアップ(ベア)を除くと15年4月以来9年ぶり。25年4月入行者はさらに4万円引き上げて26万円とし、メガバンク並みの水準に合わせて従業員の士気向上や優秀な人材の確保につなげる。
転勤のない「特定総合職」についても、25年度までに現行より計3万2600〜4万2000円引き上げる。段階的な初任給引き上げに伴い、既存行員の給与体系も見直す方針という。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC275C10X20C24A2000000/
初任給だけでなく、今いる社員の給与も配慮しなければならない。
従来型の賃金体系では対応できないかもしれない。
■人事部の憂鬱
海外の報道で日本をどう見るのかというニュース記事の中には日本の株価は好調であるが景気後退の局面に入っているという記事も見る。何気ないニュースではあるが、景気の交代を匂わせる数字もある。
○鉱工業生産、1月7.5%低下 ダイハツの工場停止響く
2024年2月29日
経済産業省が29日に発表した1月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は97.6となり、前月比で7.5%低下した。品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響し、低下幅は新型コロナウイルスの感染が広がった20年5月以来の大きさとなった。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA26CC60W4A220C2000000/
数字を確認できていないが、若年層の海外移住も増えていると聞く。
将来的な労働人口の減少はすでに予測される。
○昨年の出生数75万8631人、8年連続で最少更新…婚姻は90年ぶりに50万組下回る
2024/02/27
厚生労働省は27日午後、2023年の国内の出生数(速報値)が前年比5・1%減の75万8631人と8年連続で過去最少を更新したと発表した。婚姻件数は同5・9%減の48万9281組だった。50万組を下回るのは1933年以来、90年ぶりとなる。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240227-OYT1T50123
こうした対応の為には、人事部が単に言われたとおりのオペレーション部隊以上のことが求められるもしれない。しかしそれは容易ではない。
確かに人事部は単なるオペレーション(採用、教育、配置、評価、労務管理)から抜け出し戦略的活動に移行すべきであることが企業側から求められていることではあるが、しかしこうしたオペレーション業務がなくなるわけではない。
いままで運用能力しか磨き上げてこずに、ましてや戦略思考のない人々に戦略人事を求めても苦悩するだけであろう。
■人事部門のあるべき姿(戦略に関わること)
経営活動の人々が集い活動してくれることは必須である。
しかしだからといって不足している人数分を満たすだけのために「人材募集」をありきたりな方法で行なっていても効果が出ないと云うことは風聞で聞く。
そのために人事部門が行なうべきことは
①一定程度の組織の短期・中期の事業戦略策定に関わること
さもなければ、人事戦略の短期・中期の枠組みが作れない
②自社のヒトに関する情報を集めて分析すること
情報には、外部環境(経済や政治的な動向も含む)や内部環境(現在どのような人々が自社にいるのか、彼らはどう考えているのか、どのように働いているのかなど)がある。これを知らないでいてはヒトという経営資源の行く末は描けない
③効果的な活動をすること
特に採用などはメディアに募集記事を載せれば済むという話ではない。
採用自体に戦略性が求められる。
・どのようなプロセスで募集をするのか
・彼らに対する訴求力をどのようにするのか
・繁忙期の波をどのようなシフトシステムで行なえば吸収できるのか
・長期と短期での育成システムをどう構築するのか
④リスク管理をする
優秀な人材ほど条件の良い企業に移ると云うことが加速されるかもしれない。
人材市場で買い負けする事態に備えるとともに人材の流失にも備えなければならない。彼らが不満を持って辞めないことも配慮すべきである。さもないと彼らを敵に回せば企業ブランドが毀損される恐れもある。
人手という側面での対策に手をこまねいてては他社に買い負ける。
単に言われることをする人事部門ではもう生き残れないと感じる。
どうだろう。
(2024/02/29)