■AIが問題ではない
昨年の大きな話題の一つに「生成AI」がある。これに呼応するように「フェイク」の話がクローズアップされている。まるで突然この問題が発生したかのような扱いである。
○TBS「サンモニ」が10年前に存在していた画像を「生成AIで作られたフェイク画像」と報道 SNSで疑問の声噴出
2023年11月6日
https://www.chunichi.co.jp/article/802644
○岸田首相の偽動画拡散、生成AIで作成か 日テレのロゴも
2023/11/4
https://www.sankei.com/article/20231104-CHNQT7765VL6ZAB7TXYXX5VTV4/
○ウクライナ軍トップの偽動画がネット上で拡散…「ゼレンスキーは我が国の敵」とディープフェイク
2023/11/09
https://www.yomiuri.co.jp/world/20231109-OYT1T50215/
○AI「ディープフェイク」で女子選手の顔と別人の裸を合成、卑わいな投稿をした疑い
2023/11/06
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231106-OYT1T50107/
しかし、こうした合成についてはかつてフェースブックのザッカーバーグ氏の映像を騙ったときからすでにある。
そもそも「映像」が真実を照らしていると考える方が間違いであると言うことは湾岸戦争でのオイルまみれの鳥の映像で思い知ったはずである。
仮に事実だとしても、時間軸をずらしたり場面をずらししたりすれば全く異なる意図を押しつけることができる。それはAIが問題なのではない。それを使用する人間の問題である。
■事実を事実として受け止めることである
情報に接するためには「事実」の確度と「事実と推論」を分けることである。
そのためには、情報源を探り複数の情報を照らし合わせることである。
例えば、
○米軍がガザ上空から食料投下 3万8000食分、追加支援も
2024年3月3日
米軍は2日、パレスチナ自治区ガザの上空から3万8000食分の食料を投下した。支援物資の追加投下を計画し、海上ルートでの物資搬入も調整する。陸海空から人道危機への対応を急ぐ。
米中央軍の声明によると複数の輸送機C130が2時間をかけて、ガザ沿岸部に食料を投下した。ヨルダン軍と共同で投下作戦を実施した。「空からの追加支援任務について計画の策定をすすめている」と明らかにした。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN023UK0S4A300C2000000/
と言う記事がアメリカから出ているというのであれば他のニュースソースはどうかと云うことも見る必要がある。例えばBBCでは
○Gaza aid airdrop: Why delivering food from the air is controversial
9 hours ago ※現在2024/03/06 13:30である
The US says it airdropped 36,000 meals into northern Gaza on Tuesday in co-ordination with Jordan – the second such joint mission in recent days.
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-68478831
とあり、数字にずれがあり、これは単なるミスなのかどうかは分からない。
また、使っている写真も問題である。BBCの何かを運んでいるる写真の下には
The US military said Tuesday’s joint airdrops with Jordan were part of a “sustained effort to get more aid into Gaza”
米軍は火曜日のヨルダンとの共同空挺降下は「ガザへのより多くの援助を獲得するための継続的な努力」の一環であると述べた。
とあり、写真の説明になっていない。
これらの記事から分かるのは
「アメリカが北ガザに食料を投下したと云っている」ことだけであり、実際に食料が投下されたかどうかは第三者の情報が無ければ何も判断できないと云うことである。
日本の多くの海外の記事が自分たちで取材したのではなく配信されたものを日本語にしている恐れが高いことも配慮すべきである。
■クビの上に乗っかっているもの
我々のクビの上に乗っかっているものはカボチャではない。
考えることが重要である。
考えることには、判断することも含まれる。
見たままをそのまま鵜呑みにすることは危険である。
これからの世界は情報があふれてくるだろう。
より慎重に考えることが重要である。さもないと以下のような事態になる。
○中学1年生250人の半数超、理科の課題で同じ間違い…教諭の違和感の正体は生成AIの「誤答」
2024/03/06
<唾液アミラーゼは、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすい状態にする>
2月上旬。都内の私立中で1年生に理科を教える男性教諭(34)は、授業で出した課題の解答をチェックしていて違和感を抱いた。
出した課題は「唾液アミラーゼの働き」を調べること。「でんぷんは胃では消化されない。なぜこんな解答になったのだろう」と疑問に思った。
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240306-OYT1T50080/
もっともこれがフェイクでないことも自分で調べないと不味いかな。
(2024/03/06)