世間に転がる意味不明:シュリンコノミクスと取り上げるべき課題の評価(政策の振り返りをしない不思議)


■SHRINKONOMICS

現在ISO9001の審査員をしている。このISOであるが、今年「気候変動」に関する要求定義が追加された。本来内向きであるはずのISOの規格、すなわち自分たちのプロセスを確実にすると言うことが焦点化されていたはずのモノが、少しづつ外向きの視点が要求されるようになった。

そのため、企業活動に影響を与えそうなリスクに注意を払うようにしていたのだが、ふと下記の様な記事が目についた。

○人口減少が迫る中国 日本の失敗回避できるか
2021年8月8日

「シュリンク(縮小)」と「エコノミクス(経済学)」を合わせた「シュリンコノミクス」という造語がある。高齢化と人口減少からの圧力にどう対応するかをテーマとするいわば「縮小の経済学」で、長期停滞が続く日本が先行例とされてきた。今、少子高齢化が鮮明になり始めた中国が、日本の二の舞いを演じるのか、議論が活発になっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD041GA0U1A800C2000000/

少しばかり旧い記事ではあるが、この「シュリンコノミクス」と言う言葉は、IMFからも「SHRINKONOMICS Lessons from Japan」というタイトルでレポートされている。

https://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2020/03/pdf/shrinkanomics-policy-lessons-from-japan-on-population-aging-schneider.pdf

人口動態がこれほど明白かつ加速的に影響を及ぼす中、日本は「シュリンコノミクス」の実験台となり、他国が教訓を得始めている実験室となっている。

と指摘されるように、日本では人口現象が顕著となり、金融(税)、財務、など多様な政策に変更が余儀なくさせられることになるために、一つは「人口減少を食い止める」および「人口減少を前提とした政策展開」が必須になるとこのレポートでは視差をしている。

■政策のピント外れと振り返りをしない日本風土

「シュリンコノミクスの実験台」と期待される日本ではあるが、それを顧みることはない。先の総裁選での「岸田文雄の所信表明」を見ると明らかである。

○【自民党総裁選2021 告示日第一声】信なくば立たず。岸田文雄の所信表明演説
2021年09月17日

今こそ、国民政党として、国民の声を聞く、丁寧で謙虚な政治、多様な意見に寛容な政治が求められているのではないでしょうか。

1.国民の皆様にご協力頂き、コロナに打ち勝つ。
2.格差の解消に目を向け、新しい日本主義を実現することで、全ての皆様に幸せを実感頂く。
3.毅然とした外交安全保障で、国民の命と暮らしを守る。
といった3つの政策を通じて、国民が一体感を実現できる社会を実現します。

【自民党総裁選2021 告示日第一声】信なくば立たず。岸田文雄の所信表明演説

もっともこれは彼だけの責任ではないだろう。聞き触りのよい言葉だけを発して、それを何の批判もせずに流しているメディアの質にも驚かせられる。

「信なくば立たず」といった彼の現実(インボイス、マイナ保険証、政治資金規正法など)を見て、誰に対する“信”なのかを検証もしないメディアの無責任さに驚く。

こうした振り返りもしない風土は何をもたらすのか。

■少子高齢化は20年以上前から予測されていた

システムダイナミクスの応用で「資本ストックの成長モデル」というものがある。単純なもので、前年の資本ストックが翌年の原資となりさらに成長をするというものであり、一定のパラメータの操作で簡単な未来予測ができる。

より複雑なものでも同じ仕組みが応用でき、1960年代にはローマクラブの「成長の限界」が話題になったことがある。

もっとも当時は「人口爆発」が課題の中心であった。節目は、1990年代であろうか。一転して出生率が下がり、人口減少が予見されていた。こうした人口の増加・減少はコントロールしにくく、中国の一人っ子政策が今の中国の人口減少につながっている。

しかし、こうした人口動態は予測可能で、日本でも警鐘が鳴らされている。

にも関わらず、この問題を正面から向かい姿が見受けられない。
どこかの経済番組で「シュリンコノミクス」を取り上げてくれないだろうか。

2024/07/02