世間に転がる意味不明:地域交通の問題点(運転手がいないのは仕方ないと考えたらどうなるのか)

発想を変えようと言うことで雑感。


■運転手不足と云うがどのぐらい足りないのか

地方の地域住民の脚となるバス路線の廃止が続いているというのは昨年来からよく聞く話である。

○日ノ丸、隠岐汽船接続バス廃止 来年から米子-七類、米子-境港 運転手不足、利便低下へ
2023/10/11

隠岐と本土を結ぶ隠岐汽船の利用客向けに、本土側で米子方面への接続バスを運行する日ノ丸自動車(鳥取市古海)が、運転手不足を理由に来年1月5日で取りやめることが10日、分かった。米子空港(境港市佐斐神町)を経由するルートで、隠岐4町村の住民や観光客に利用されており、新型コロナウイルス禍の影響で減少していたバス利用のニーズも回復しつつあるだけに、利便性の低下が懸念される。

https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/464258

○バス運転手不足、今後の鉄路廃止議論にも影響 バス転換も難しい
2023年11月2日

 深刻化する北海道内でのバス運転手不足。今後予定されている鉄路の廃止にも影響が出ている。

30年度末予定の北海道新幹線の札幌延伸で並行在来線となるJR函館線の小樽―長万部間は延伸後に廃線・バス転換になることが決まっている。だが、代替バスを検討する道と沿線9市町の首長による協議会は今年5月に開かれて以来、開催されていない。

「運転手不足の影響でバス会社とのバスルートをめぐる交渉が長引いている」(道交通企画課)ことが理由だ。バス事業者からは「現状の路線を維持するので手いっぱい」(道南バス)という声もあがる。

https://www.asahi.com/articles/ASRC17WWQRB0IIPE020.html

発端となった「金剛自動車」の

地元住民などからは一般的に、乗合バスは金剛バス、タクシーは金剛タクシーと呼ばれていた。 金剛タクシーは2023年6月30日に廃止。金剛バスは2023年12月20日に廃止。

でも言われるように「運転手不足」がクローズアップされるのが2024年問題を契機にした人手不足問題の一分野になる。

しかしこれは裏付けになるデータが無いので判断に困る。

(1)同時に動かすバスの数
仮に、一台のバスを運行しているだけであれば運転手は一人でよい。運行路線が複数あっても、ハブアンドフォークのように工夫すればよい。いったい、何台のバスを管理しなければならないのかが分からない。

(2)平均乗客数
よく地方で、片道4時間と云ったバス路線がある。
その時の乗客は、最初は数人いても最後はゼロの場合が多い。(旅番組だとそういうケースがある)
およそ、利用客がいないバス路線に意味があるのかと感じてしまう。

(3)損益分岐点
したがって、現在の運行サービスを維持しようとするときの乗客数が担保できないのであれば、乗客数が少ない時間帯は減便せざるを得ない。しかし、固定の維持費がかかる以上減便の加減がある。すなわちこれ以上の減便をしても平均乗客数が変わらないのであれば売上は衰退するだけである。どこかで損益分岐点を下回る。それはいくらだ?

結局、いまいる運転手だけで利益を出せるほど乗客がいないというのであれば、利益が獲得できないのであるから廃線は当然であろう。

逆に何人いれば維持できるのかの数字が無ければ議論ができない。

■足りないと言う現状を受け入れる

これまでのバス運行会社の取り組みは成功していない。
運転手不足は解消される見込みがない。そうであれば運転手不足を前提とした取り組みにするしかない。

すなわち「運行できるところだけ運行する」であろう。
その上で「収益性」を担保させようと云うことであれば、いくつかの取り組みの方向性が見える。

(1)路線の可変化
どの時間帯でどのぐらいの利用客がいるのかを把握することで柔軟な路線計画を作成する。運行路線は可変として、曜日による偏り、時間のよる偏りがある場合には路線を変更する。

(2)路線の細分化
片道4時間と云った長距離路線を廃止する。基本は、ハブアンドフォークのように、中継点を多く設定して、乗り継ぎを前提とする。時間をずらすことや連続した運行なども前提として運転手に過度は負担がかからないようにする事が考えられる。

(3)自動車のミックス
通常のバス運転手は2種免許が必要と聞く。これに対していわゆるマイクロバスは普通免許で運行できる。
利用者の少ない区間ではマイクロバスの併用もあり得る。

(4)予約制の導入
利用者が少ない、あるいはトータルとしては利用客がいるはずなのだが時間帯がばらつくなどは、随時とは行かないまでも1時間単位での予約制を考える。マイクロバスにしても常に過疎地に配置しておくことは無理であれば、ライドシェアもしくはそれに近い形(例えば、専用駐車場に車だけ配置)での運用も考えられる。

といった様々なアイデアが考えられる。

■公共機関というならば

バスの減便・廃線問題は、民間の会社が運営している以上利益が出なければ辞めるという判断に帰着する点にある。したがって、公共交通機関であると言うならば、運営会社も納得できる赤字補てんを行政がすべきである。

○長崎の路面電車は108歳…「坂の街」に欠かせない生活の足です
2023/01/27

長崎電気軌道は1914年(大正3年)に創業し、15年(同4年)から築町―病院下(いずれも現在は移設により廃止)間の南北約3.7キロで運行を開始した。現在は、長崎市内の約11.5キロに及ぶ複数の経路で1日に816本を運行し、約3万1000人の乗客を運ぶ。

大浦天主堂やグラバー園、平和公園といった沿線の名所を結ぶ「長崎観光の足」というイメージが強いが、自家用車での移動が不便な坂の街に暮らす住民たちにとっても、欠かせない移動手段だ。

https://www.yomiuri.co.jp/hobby/travel/20230123-OYT8T50008/

当然、そこには行政としての判断基準(最低利用者数、存続の要請への対応基準、予算の上限)なども決定しなければならないだろう。ボランティアよろしく、運行会社に負担をかけておいて辞めるとなったら皆で非難するという姿勢は辞めた方が良い。

知恵を出すのは行政に携わる人であろう。

■見捨てるという考え方

「最大多数の最大幸福」がおそらくは公共サービスを提供するための基本的な考え方で弱者を見捨てないという意味ではまっとうな考え方である。

これも一定程度諦めると言う考え方も考えるべきである。サポートをしないというのではない。共通で使用するインフラを諦めると云うことである。交通機関であれば、ライドシェアのように、その時に調達できる手段で賄う。医療や教育、衣食住の支援などは「パーソナルサービス」という考え方で情報通信の積極的な活用を考える。

その時に費用負担を受益者負担という考え方ではなく、地域の共通の予算を確保してそこから充当する。

三流の役人は安易に公平・平等を謳うが、もっと考えると良い。

2024/07/25