世間に転がる意味不明:地域交通の問題点:何も変わらない世界(ライドシェアとワーキングプア)


世間に転がる意味不明:地域交通の問題点:何も変わらない世界(ライドシェアとワーキングプア)

いろいろな問題が交錯するので引用と話があちこちに飛ぶので長いよ。

■懸念される賃金問題

2024年問題において多くの産業で人手不足が指摘され、タクシー運転手の不足がいわゆるインバウンドによる観光客対応で表面化してライドシェアが一躍話題になった。
本来のライドシェアの利点は、完全予約制による安全管理の確保、自家用差の活用による参入障壁の撤廃、自由な働き方といった利点を挙げる一方、責任の所在の曖昧さ、犯罪への懸念、既存企業へのダメージなど負の側面なども指摘される。

その中で懸念されるのはワーキングプアの問題や、労働者としての彼らへの保護の希薄さであろう。

こうした問題はギグワーカーが働き方の一つとして登場した頃から問題視されていた。

○「実質時給286円も実在」急増するUber EATS配達員はワーキングプアか
2020/01/24

アメリカには専門的技術を持ち、高い報酬を得ているギグワーカーもいるが、ライドシェア運転手や宅配サービスのように比較的簡単な業務は収入が不安定になりやすい。そうした不満を持つギグワーカーがアメリカ各地で労働者の権利を求めて会社を提訴している。

アメリカではギグワーカーの労災補償と生活を保護する法律施行
実はこうしたギグワーカーの労災補償と生活を保護する画期的な法律が今年1月1日に施行された。

といっても日本ではない。アメリカのカリフォルニア州のギグワーク法(AB5法)と呼ばれる法律だ。最大のポイントはギグワーカーなどが一定の基準をクリアすればカリフォルニア州の最低賃金、残業代などの賃金の保護を受け、病気休暇、失業手当のほか、労災補償給付などが受けられる。

https://president.jp/articles/-/32469?page=2

当然、雇う側と雇われる側の軋轢は発生し、アメリカのような広域でビジネスを展開しているところでは企業の撤退という選択肢も生み出す。

○ライドシェア運転手、「給料2倍」条例が可決 Uber、米ミネアポリスから撤退か
Lyftも5月1日の撤退を示唆
2024年3月23日

米ミネソタ州ミネアポリスでこのほど、ライドシェアのドライバーの給与を2倍にするという新条例が可決された。米メディアが報じた。

この条例の可決を受け、UberとLyftは5月始めにもツインシティから撤退する方針を明らかにしている。Uberは「市議会は現実的な解決策を見出すにあたり、適切な最低所得基準を策定するために実際のデータを収集すべき」との要望書を提出したようだ。

ライドシェアドライバーの賃上げは2023年から議論されている。過去に開催された議会の公聴会には数十人のドライバーが押し寄せ、ガソリン価格の高騰とインフレが続くなかで日々の生活がいかに大変かを議員に訴えた。

ライドシェア運転手、「給料2倍」条例が可決 Uber、米ミネアポリスから撤退か

日本でも同様である。
事業として成り立たなければ企業は縮小し、報酬も十分には手当てできない。
収入が保証されないなら働き手は集まらず、人手不足問題は解決されない。
賃金問題は避けて通れない。

○【ライドシェア一部解禁】専門家が「うまくいかない」と主張するワケ、「需要もドライバーの収入も十分ではない」
2024.4.6

北陸新幹線の加賀温泉駅では、発着は上り、下りともに昼間で1時間に2〜3本。主な観光地としては著名な温泉街があります。その温泉街には、駅から旅館が運営する送迎バスと民間が運営する路線バスで行くことができます。足のない地域ではありません。

そこに一般人が自家用車で送迎するアプリ専用のライドシェアのサービスを行政主導で導入することに疑問を感じます。

京都府京丹後市で展開されているライドシェアでは、日本経済新聞によるとドライバーの数は現在16人*1。年間の利用は1100回程度、1日に3回ほど利用されている計算です。

非営利目的なら問題ないのかもしれませんが、これくらいの利用頻度では持続的に事業として成り立たせていくのは難しいのではないでしょうか。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/80287

■会社は自分たちを守ろうとする

しかし、こうしたギグワーカーの対応問題は、本来企業が負うべきリスクを働き手に押しつけるビジネスモデルから発生するものである。

したがって、企業からすれば収益性の向上やコスト削減が目債の問題であり、社会問題などは二の次である。当然、政府の政策もこれに従ったものになる。

○ライドシェア、料金変動制で「運賃最大3倍」案 業界団体、国交省に意見
低所得層から反発必至か
2024年3月19日

国土交通省は2024年2月、地域の自家用車や一般ドライバーが有償運送サービスを提供する自家用車活用事業に関するパブリックコメントを実施した。

主な内容は、許可基準や許可に付する条件などだ。タクシー事業者ごとに使用可能な車両数やドライバーに課する義務、運送引受け時に発着地が確定していること、運賃は事前確定運賃により決定し、原則キャッシュレス決済であることなどだ。

このパブコメに対し提出された主な意見は次の通りだ。

・全国どこでもタクシー事業への新規参入を認め、ライドシェア事業者などが参入できるようにするべき。
・素人がドライバーとなることについては、安全面・車体トラブル・料金面での懸念がある。
・地域の状況により、タクシー車両数を超えて実施できるよう柔軟に取り扱うべき。
・ダイナミックプライシングを導入するべき。
・ダイナミックプライシングは低所得者をはじめとする真の移動困難者を生む。
・タクシーの営業区域制度に捕らわれると過疎地域やタクシーが不足している地域での利便性を低下させる。
・対象地域や時期、時間帯の特定に配車アプリなどのデータを使用すると、アプリが普及しておらずタクシーが不足している中核都市などが対象から外れてしまうのではないか。
・現在のタクシー供給では満たせない部分を補完し、需要に応え新たな労働力を生み出すことがライドシェアの利点。
・タクシー補完の観点ではなく、まずはタクシーの充実を行うべき。補完をする場合であっても、自家用有償旅客運送の制度拡充を行うべき。

賛否さまざまな意見が寄せられている。ダイナミックプライシングについても推奨派と反対派それぞれの意見が出されたようだ。

ライドシェア、料金変動制で「運賃最大3倍」案 業界団体、国交省に意見

当然、目新しい施策にはなるわけもなく、今までの制度を少しいじっただけなので大きな変化は望めないし、期待した成果も出るかどうかは分からない。

○4月解禁ライドシェア、料金はタクシーと同じ 地域や時間帯も制限…浸透には時間
2024/3/31

タクシー会社は採用したドライバーに対し、研修や勤務時間の管理、任意保険への加入などを行う。乗車前のアルコールチェックは自宅からなど遠隔でも可能とする。客を乗せるのは配車アプリを通じて発着地と運賃が事前に確定している場合のみで、運賃はタクシーと同じ。原則キャッシュレスでの支払いとなる。

利用者が車両を呼ぶ際は、既存のタクシー配車アプリがそのまま活用できるようになる見込みだ。配車アプリ大手のGO(東京都)やウーバージャパン(同)は、4月以降に対象区域で対象時間帯にアプリを利用する際には、タクシーに加えライドシェア車両も含めた選択肢を提示し、利用者が選べるようにする機能を加える方向で準備を進めている。「アプリでタクシーを呼ぶのと変わらない感覚で使えるようになる」(ウーバージャパン広報)という。

https://www.sankei.com/article/20240331-ZR56JNTP55L3VCW3R3PMUF7EUA/

■思惑のすれ違い

2024年問題で指摘されているタクシー運転手の不足は、残業規制の他にも少子化の影響もあると言われている。もちろん働き手が少ないことは課題ではあるが、一方でタクシードライバーのなり手が少ないことに対しては賃金問題もあると言われている。

すなわち長時間労働をしなければ生活できるほどの(満足できる)報酬が得られないと言うこともある。実際のデータを知らないが、何度かタクシーの乗車したときに運転手さんに聞いたが、当たり前の時間に普通に働いていては生活できないというのが本音のようだ。長時間あるいは深夜労働がなければやってゆけないというならそれは普通では無い。

○タクシー運転手を食い物にする「タクシー会社」 低賃金&人員不足はその結果に過ぎない そもそもメーター料金制度が時代遅れだ
2023.11.8

タクシー会社は、ありとあらゆる方法を駆使してドライバーの取り分をつまみ食いして、自らの利益を確保してきたのである。

・無秩序な台数拡大
・最低賃金でしか計算されない給料
・高額な制服の押し付け
・特定のガススタンド利用の強制
・タイヤやレシートのロール紙といった消耗品の自腹購入
・営業施策への協賛金の支出
・会社の懐が痛まない割引競争

など、数えあげればきりがない。

https://merkmal-biz.jp/post/52269

当然、これが真実かは分からないが、こうした声が上がっていると云うことは何らかの実情を表しているのだろう。

こうした搾取が横行する業界に、何も知らない人が遊び感覚で入れば当然問題も起きる。

○ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」
稼働は週20時間以内、スポットワークも不可
2024年8月6日

・曜日や時間が限られているため、本業と都合を調整しながら業務しなければならず希望どおりに働けない。曜日、時間帯の制限を撤廃してほしい。

おそらく、多くのドライバーがこの意見に賛同するのではないか。東京エリアや京都エリアは、それぞれ時間は限られているものの月~日曜日全てでタクシーが不足する時間帯があるため比較的働きやすそうだが、神奈川エリア(京浜)は金土日、名古屋エリアは金土のみなど、稼働可能な時間帯・曜日が狭い。

・週に20時間以上働くと社会保険の対象となるため、タクシー会社が週20時間までしか働かせてくれない。このため十分な収入が得られず、ワーキングプアを強いる仕組みであり魅力がない。雇用契約のみならず業務委託契約による就業形態も可能としてほしい。
本業と副業を合わせた労働時間が週40時間を過ぎると残業代が発

制度上、週20時間まで――といった定めはないが、社会保険の兼ね合いなどを理由に多くのタクシー事業者が制限を課しているようだ。事務局が行った調査では、1週あたり20時間以内との制限を設けていないタクシー会社は見当たらなかったという。

また、本業と副業の合計労働時間が1日8時間、週40時間の法定労働時間を超過するケースは、割増賃金の支給対象となる。割増賃金は原則として後から労働契約を締結した方に支払義務が生じるため、敬遠されやすいようだ。

ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」

○ライドシェア、応募者の大半「途中離脱」!給与「期待はずれ」、稼働時間「短すぎ」
2024年8月2日

資料では、ドライバー採用における課題として「応募者の多くが、稼働条件が合わないなどの理由から、採用プロセスの途中で離脱」と記されている。2024年7月27日時点で、応募数は約2,000名に達するものの、内定者は約30名にとどまるという。

ライドシェアドライバーの採用に至るまでは、応募後に説明会や書類提出、面接、実技試験などを行い、その後内定となる。内定までに約98.5%が離脱しているということだ。

ライドシェア、応募者の大半「途中離脱」!給与「期待はずれ」、稼働時間「短すぎ」

こうした声が大半だとは言わないが、実体はパートタイマーなのに社員として働けると思っているならそこに齟齬が起きる。

○日本のライドシェアは、「タクシー会社で働く自家用車のパートタイマー」という表現が、最も現状に近いという気もする。

不安視されていた安全・安心の担保をタクシー事業者が行うことを目的に、タクシー会社主導で管理・運行や研修、採用活動などを実施している。例外なくタクシー事業者と同等の料金体系での利用となっており、この点が、主にダイナミックプライシングが適応されている海外のライドシェアとの違いでもある。日本のライドシェアは、「タクシー会社で働く自家用車のパートタイマー」という表現が、最も現状に近いという気もする。

https://toyokeizai.net/articles/-/752060?page=2

■何も変わらなければ問題も解決されない

新しい制度ではいくら頑張っても、運転手の労働環境は変わらない。従って、そこで働く新たな魅力なども生み出されることはない。生み出される魅力が無いのであれば、そこに人が集うことはない。

制度や運送という事業のメカニズムを変えなければならない。いわゆるトラフィックミックスや柔軟な運航システムを開発しなければ、いつまでたっても現状の中での収益性と報酬の話の堂々巡りになる。それはタクシー業界だけの問題ではない。

○理想ばかり語るな! 路線バス維持のために「ドライバーの給料を上げろ」は“机上の空論”である【連載】ホンネだらけの公共交通論(4)
2024.4.9

「2022年版交通政策白書」を見ると、そうとも簡単にいえないことがわかる。実際、2020年度には乗り合いバス会社の「99.6%」が赤字を計上している。同時に、廃止されるバス路線は1543kmで、2010(平成22)年度から2020年度までの累計は「1万3845km」となる。そんななか、2024年問題が顕在化し、バスの運行本数確保が難しくなった上、新型コロナによる在宅勤務の普及で、安定収入源だった定期券収入も難しくなった。

そのような状況下で、経済的制約を無視して「運行本数を確保するためには、バスドライバーの給料を上げるべきだ」と安易にいう識者もいる。さらに3月以降、このような議論が社会的にも活発になっている。

https://merkmal-biz.jp/post/63381

因果は巡る。

2024/08/07