世間に転がる意味不明:慈善事業と福祉と経済の狭間(障害者雇用の問題に悩む)


世間に転がる意味不明:慈善事業と福祉と経済の狭間(障害者雇用の問題に悩む)

■気になるニュース

しばらく前に障害者雇用について投稿した。その時には、少数人数の障害者への対応をそれを抱える企業で対応することの難しさをテーマにした。障害者雇用の問題は人的資本開示の課題の一つだと認識しているのでニュースなどには注意を払っている。

そうした中で気になったニュースの一つである。

○1カ月前に突然「閉鎖します」。全国で障害者が次々解雇のなぜ、カギは「A型」 5000人、過去最多を5カ月で突破
2024/09/12

 まず、障害者が働く場所は大きく分けて二つある。一つは他の多くの人と同じように一般企業。もう一つは福祉のいわゆる「作業所」。
違いは企業で働く場合は雇用契約を結び、最低賃金など労働関係の法律が適用されることだ。一方、作業所は福祉の領域なので「労働者」ではなく、最低賃金も適用されない。傾向としては、企業で働く人は障害が軽く、作業所は重い人が多い。
この両者の中間的な存在として2006年に誕生したのが前述のA型事業所だ。「企業で働くのは難しいけど、作業所の仕事は簡単すぎる」。障害が軽めのそんな人を主な対象に、国が制度をつくった。
雇用契約を結び、最低賃金が適用される。働く人は福祉の利用者でもあり、労働者でもある。全国に約4600カ所あり、8万人強が働いている。障害の種別を見ると、精神障害の人が最も多く、半分を占める。次が知的障害者で約3割、残りが身体障害者だ。
なぜ「A型」と言うのかというと、いわゆる作業所のほうを「B型事業所」と名付け、区別したからだ。

https://nordot.app/1200972228808523932

これは行政の縦割りを招きかねない。
労働者の問題であれば、厚生労働省の「労働」を扱う部門で会ったり、公正取引委員会だったりの所管になるだろうし、福祉の問題であれば同じ更生労働省でも福祉事務所を扱う部門になるだろう。

扱う部門の錯誤や民間にどこまで任せるのかを明確にしていない今の政策では障害者本人がイニシアチブを取ることは難しい。結果として、いろいろなところにアプローチすることになる。

○障害者雇用を経済団体に要請
2024年9月11日

沖縄労働局によりますと県内の障害者の雇用率は去年、3.24%と過去最高を更新して全国で最も高かった一方で、障害者を雇用する義務がある県内企業のうち34.8%が1人も雇用していません。

https://www.fnn.jp/articles/OTV/757149

■障害者から見た利益団体

しかし、こうした交渉ごとは障害者自身が行なうわけではない。

○特別支援学校の生徒が経済団体に雇用促進を要請
2024年9月11日

社会貢献のためにチャンスを広げてほしいと障害者雇用への協力を求めました。企業に障害のある人の雇用を増やしてもらおうと、特別支援学校に通う生徒らが経済団体に要請しました。

この要請は、沖縄労働局や県、障害者職業センターが、県内の経営者協会などに対して障害者の雇用機会の拡大を求めたもので2024年9月11日那覇市で、関係者が要請書を手渡しました。

そのなかで、県内企業の障害者雇用数が2023年6月の時点で5462人と2年連続で全国一となったものの、雇用義務があるにも関わらず378社が、法定雇用率に達していないと指摘。

特別支援学校の生徒が経済団体に雇用促進を要請

特別支援学校は文部科学省初等中等教育局特別支援教育課が管轄することになり、厚生労働省とは別組織であり、これも視点の複雑化を招く。

上記の記事の中でも「社会貢献」という言葉が出てくる。こうした文脈では、慈善活動の一環としてしか訴えておらず、言葉は悪いが「施し」を求めることになる。企業にしても「やってやるのだからありがたいと思え」という思想を助長しかねない。

こうしたことを防ぐためには、それが何かしらのハンディキャップを持っていようが働く人の権利である労働三権(「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」)を担保させなけれならない。

これは彼ら自身、彼らを取り巻く人々、行政、企業の意識を替えてゆかなければならない。

■できることを基にしたビジネスモデルの構築

現在の障害者雇用の前提となる思想は「我々と同じ仕事ができないので、それができる様に補助をする」というものであろう。それは、肉体労働が中心であり、五感が使えること、他の人々と同じ発想を持つこと(これは協調性ではない)を当たり前としているものである。

しかし、彼らには彼らの世界観があり、創造力や発見力、感受性が健常者より劣っていると言うことはない。相互の意思伝達にはまだ障害があるものの徐々にIT技術で解決されてゆくだろう。

できないことではなくできることを中心に考えるべきであり、企業もそれを前提としたビジネスモデルを考えるべきである。重機の運転を車椅子の方が行なうことは可能な時代になっている。

2024/09/17