世間に転がる意味不明:民主主義と雇用の安定と治安悪化(中国の事件と大企業の安易なリストラ)


「世界を支配する」という欲望は社会問題を拡大化させてしまう。

■安易な解説記事

エピソード的な記事がある。
あたかも中国の治安悪化を表面化する記事である。

○中国でまた社会報復性の大量殺人…「賃金未払いに不満」凶器事件で25人死傷
2024.11.18

16日、中国江蘇省宜興市のある実業系高校で、学校側と社会に不満を抱いたある卒業生が校内に乱入して凶器を振り回し、8人が亡くなり17人がけがをする惨事が発生した。これより5日前の11日、広東省珠海で62歳の男が運転するスポーツ用多目的車(SUV)が広場に突っ込み、35人が死亡して43人が負傷する大量殺人事件が発生していたばかりだった。今年に入って中国全域で社会報復性の惨事が繰り返され、中国の社会セーフティネットと治安システムが試験台に立たされている。

https://s.japanese.joins.com/Jarticle/326287

○中国・湖南省で車が複数児童らはねる 児童らに命の別条なし…現地報道 運転の男は現場で取り押さえ
2024年11月19日

中国国営テレビなどによりますと19日午前8時ごろ、湖南省常徳市の小学校の校門前で、車が歩行者に突っ込みました。SNS上の動画では学校前に複数の児童らが倒れ、児童が走って学校へ逃げる様子が確認できます。

複数の児童や保護者らがケガをして病院に搬送されましたが、中国メディアは児童らの命に別条はないと報じています。車を運転していた男は、現場で取り押さえられましたが、この学校の児童の親ではないということです。

https://news.ntv.co.jp/category/international/00e1ffbbd99c42c6a6f4c8365342f911

まるで中国に広くこのような事件が蔓延しているような表現である。
しかし、日本であっても池田小事件、秋葉原の事件、この他にも「死刑になっても良い」ということで無差別に人を殺す事件は発生している。

発生確率などは計算していないがもし同じ程度であれば、中国の人口が日本の15倍あるのであるから日本に比べて15倍になるだろう。もちろん報道されている以外にもあるかもしれないがそれほど多いとは言えないと考えている、

■犯罪の背景

単純な事ではないが、こうした一般の人を巻き込む事件が起きる背景としては社会全体として、経済的なストレス、社会的不満、セーフィティネットの欠落、孤立化などが蔓延していることが挙げられている、

これ以外にも指摘されるのが「民主主義」の欠落である。これは制度としての民主主義ではなく、人々が社会活動に参加するための情報の公開性の有無である。情報を隠し、「逆らうものは皆殺しだ」という発想の政治機構では、社会の不満を吸収するメカニズムは働かず、仮に盲従していたとしても「クーデター」の芽がそこかしこにあふれることになる。

○中国で相次ぐ「無敵の人」政府が恐れる”爆発の芽”
豊かな頃から一変、経済不安が渦巻く社会に
2024/11/25

中国で子どもが襲撃される事件が相次ぐ。容疑者はいずれも中高年の男性で、生活に困窮し自暴自棄になった中年の「社会的報復」という見方が少なくない。

氷河期世代の筆者は2010年代に中国に移住し、生まれて初めて「成長とはこういうものか」と実感すると同時に、経済的に豊かになると期待が持てれば人々は一党独裁も言論の制約も受け入れるのだと理解した。

だが、永遠に続くかに見えた中国経済の高揚感は急激にしぼみ、中国社会は日本のバブル崩壊後と似た空気が漂う。

https://toyokeizai.net/articles/-/841849

こうした記事はすべてをそのまま受け入れることはできないにしても、経済の不安定さが一般大衆をターゲットにした事件と無関係ではないと云う点では同意できる。

■経済の不安定さを招くリストラ

「完全失業率が上がれば、例えば職を失い貯金もなくやむにやまれず盗みをしてしまったなど、犯罪率も上がると考えるのが常識的であり、こうした関係は過去の研究からも確認されている」犯罪と社会経済情勢に関するシンプルな計量分析
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/r02pdf/202019302.pdf

失業率の計算は、国によって若干異なるだろうが、日本では概ね2.5%(有効求人倍率1.25バイ)であるのに対し、中国では5%を越えるという。その点だけでも不安定さは高いと考えられる。

(参考)
○10月の有効求人倍率、1.25倍に上昇 失業率は2.5%
2024年11月29日

厚生労働省が29日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.25倍と、前月から0.01ポイント上昇した。求人数が増えたほか、仕事を探す人が減少し、倍率が改善した。物価高で安定した収入の確保を求め転職活動を控える動きが広がった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA288Q00Y4A121C2000000/

従って、一定程度の雇用が確保されることがこうした犯罪を防止する一城になると考えられるが、これを阻害する要因への懸念があり、それが昨年来から続くリストラ(早期退職制度)が安易に行なわれていることだろう。

○東芝、3000人超が早期退職 国内従業員の5%、成長事業集中
2024/11/29

早期退職は満50歳以上が対象。今年5月に公表した中期経営計画には最大4千人の削減を盛り込んでいた。応募者は11月末までに退職し、退職金と上乗せ分の特別加算金のほか、再就職支援を受ける。東芝は3千人超の早期退職に加え、数百人を成長が見込める部門に再配置する方針で、合わせて人員適正化の規模は約3500人になる。

https://nordot.app/1235117263591293017

■世界を支配するという欲望

利他主義の反対の言葉に利己主義が対峙する。
他との協調をしなければ紛争を招くと言うことは世界恐慌を機に保護主義に走った結果世界大戦が起きたことが知られているとおりである。現在、トランプ、習近平、プーチンは対話を拒絶し世界を支配しようとしている様に見える。いずれ、犯罪が闊歩する社会になりかねないと危惧している。

他の国は止めを向けてもきな臭い。自らの事業の身の丈を考えなければ無理をせざるを得ない。市場を世界に求めた瞬間に、身の丈を無視することになり、軌道修正は大きな影響をもたらす。

アメリカの自動車産業。

○米GM、千人規模を削減 EV収益化向けコスト削減(共同通信)
2024/11/16

 中西部ミシガン州の技術拠点の従業員約500人が含まれるという。GMは声明で「競争の激しい市場を勝ち抜くために最適化する必要がある」と強調し「少数のチームの削減を実施した」と説明した。

GMでは8月にもソフトウエア部門などの従業員、千人以上を削減する方針が明らかになっている。

https://nordot.app/1230265041272963557

ドイツの自動車産業

○ドイツ自動車業界に人員削減の波 VWも工場閉鎖検討、労組はストへ
2024年11月26日

ドイツの自動車産業で、人員削減の嵐が吹き荒れている。電気自動車(EV)の販売不振やコスト競争力の低下が背景にある。最大手のフォルクスワーゲン(VW)も、会社設立以来初となるドイツ国内の工場閉鎖を排除していない。労組側は大規模な人員削減に警戒を強め、12月にも大規模ストライキに踏み切る考えだ。

https://www.asahi.com/articles/ASSCT45HDSCTUHBI004M.html

こうした人々の受け皿は、伝統産業では支えきれないかもしれない。

○独ティッセンクルップ、鉄鋼部門で1万1000人の削減を提案-業況悪化
2024年11月25日

鉄鋼部門の取締役会が5000人の人員削減と、6000人の職務を外部委託に移行することを提案した。向こう数年間で人件費の平均10%カットを目指す。現在の従業員は約2万7000人。

ティッセンクルップは声明文で「過剰生産能力と、その結果として特にアジアから安価な輸入品が増加していることが、競争力に大きな影響を与えている」と述べた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-25/SNID6ADWX2PS00

ブルームバーグだけでなくロイターでも配信していることから、格別の注目があり、これが今後も波及すると危惧されていると考えている。

○独ティッセンクルップ、鉄鋼子会社の従業員4割を削減へ
2024年11月26日

ドイツの鉄鋼・エンジニアリング大手、ティッセンクルップ(TKAG.DE), opens new tabは25日、鉄鋼子会社のティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパ(TKSE)が従業員約2万7000人のうち約4割に当たる1万1000人を削減する経営再建策を発表した。2030年までに5000人を減らすほか、6000人を事業の分離・独立または売却を通じて削減する。

https://jp.reuters.com/markets/commodities/WCSUHPXGTBKSFBDKG5UORBT634-2024-11-26/

いったんリストラされた人々は新たな職場をえられるようなセーフティネットがあるかもしれない。それでも当事者には強いストレスがかかるだろう。

いずれ、他社に対して攻撃的になり多くの犯罪事件が起きることも懸念される。
企業が社会の公器であると言うならば、この点も考えて欲しい。

2024/11/30

【おまけ】

ChatGPTに「社会的不満を解消する効果的な政策は何か」と聞いてみた。

社会的不満を解消するためには、経済的、社会的、政治的な観点から総合的なアプローチが必要です。以下に、効果的とされる政策の例を挙げます:

1. 経済的不満の解消
・所得格差の是正
累進課税制度を強化し、低所得者層への直接的な支援を拡充する。
最低賃金を引き上げることで労働者の生活水準を向上させる。
・雇用機会の拡大
インフラ投資や新産業の振興により、雇用創出を促進する。
教育や職業訓練を通じて労働者のスキルを向上させ、経済活動への参加を促す。

2. 社会的不満の解消
・社会保障制度の充実
医療、年金、失業保険などの社会保障を拡充し、生活の安定を支える。
地域間の格差を是正するために、地方自治体への財政支援を増やす。
・住宅政策
公共住宅の建設や家賃補助を通じて、低所得者層の住宅問題を解決する。

3. 政治的不満の解消
・透明性の向上
政府の意思決定プロセスを透明化し、国民の信頼を得る。
汚職や不正行為の取り締まりを強化する。
・市民参加の促進
地域社会や政策形成における市民参加を拡大する。
意見交換の場や公聴会を設け、国民の声を政策に反映させる。

4. 心理的なサポート
・精神的な健康支援
メンタルヘルスのケアを拡充し、相談窓口の設置やカウンセリングの提供を行う。
・社会的孤立の解消
地域コミュニティやボランティア活動を活性化し、人々が孤立しない環境を作る。

石破さん、「安心、安全」というならこれらを考えてくれないかなぁ。