戦略人事:転職の思いを隠さない人々(人材の流動化に備える)


■転職の動機

転職に当たっての動機はよく分かっていない。一般的には、人間関係、待遇、将来への不安、会社への不満、居心地の良さなどが挙げられるが、こうした理由は後付で論じられるものの統計的なデータは見たことがない。当然、転職を扱うサイトでアンケートの結果は出てくるが、それは転職を「した」人であり、「しようとしている」人や「していない」人は含まれていない。

そうした中で分かってきているのは転職に対するハードルが下がってきており、人材の流動化と労働市場の活性化が転職する人々を後押ししているだろうと言うことである。

働く人々の意識の変化や、人材の流動化を前提とした企業側の姿勢の変化であろう。

■公言する人々

色々興味深いアンケート結果・調査結果に関する記事がある。

○会社員の3人に2人が「フリーランスになれるならなりたい」と回答 – 「今より稼ぎたい」を抑えた最多の理由は?
2024/12/20

「もしフリーランスになったら何を重視するか」を聞いたところ、昨年の調査では「収入(今より稼ぎたい)」がトップだったが、2024年の調査では「働く場所と時間を自由に選びたい」が49.4%で1位となった。

フリーランスとして独立する適正年齢については、昨年に続き「30代」が42.6%で最多になった。また「20代が適切」との回答が昨年は4.3%だったのに対し、今年は11.4%と大きく増加した。AIやデジタルツールの活用が若年層の独立を後押ししている可能性がある。

https://news.mynavi.jp/article/20241220-3090321/

かつて、転職と言えば。元いた会社が傾いた、あるいは処遇が悪いといった外的要因であり、同じ傾倒の会社に転職すると言ったことが多く、会社員である事を辞めるという選択肢はあまりなかった記憶している。当然、IT企業の関連で言えばSEとして独立する選択肢はあるが、「フリーランス」はかなり特殊な選択肢だった。

しかし、潜在的には会社に縛られない「フリーランス」に対する憧れはかなり以前からあったが、公言する人は少なかった気がする。

もう一つ興味深い記事が下記である。

○ 「昇進を断る」従業員が増加中、その影響と会社が取るべき対策
2025.02.25 09:00

従来、リーダーの役割を担うようになることは自然な昇進で、成功を示すものととらえられていた。組織は従業員が常に昇進を望んでいることを前提として階級を設け、昇進を受け入れることは地位の向上と給与の増加を意味していた。だが今日の労働者は昇進について異なる解釈をしている。最近のデータによると、従業員の42%が昇進を拒否している。是が非でも昇進したいと思っていたこれまでの世代とは真逆だ。

https://forbesjapan.com/articles/detail/77346

裏付けとなるデータが無いので真偽のほどは分からないが、日本の場合の管理者は「プレイイングマネージャー」の色彩が強く、マネージャーの仕事以上のこと(部下育成、業績確保など)を期待される。精神的・肉体的な負担の上に責任も多く、その割には報酬・見返りが期待できないと言う話は聞く。私自身の経験では、「管理」をしたくて会社に入ったのではなく「仕事」をしたいから会社に入った。従って、若くして「管理職」を求められれば「退職」も選択肢であったことは当然の帰結だったのだと思う。

こうした記事を見ると、社員は何考えておらず突然辞めるということではないことに気がつく。思いを内に秘めているのであるから会社は対話をする機会を設けなければならない。それを怠れば離職を止めることはできないだろう。

■企業側も人の入れ替えを前提とすべきである

こうした働く人の意識の変化には従来型の登用制度・昇格制度は限界に来ていると考えるべきなのだろう。

○まるで「罰ゲーム」、業務負担増える管理職なんかなりたくない…価値観一変に公募制導入も
2025/01/11

 パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員(41)は「管理職として働くことが、『罰ゲーム』のような状況になってしまっている」と指摘する。

経営層と社員の間に立ち、組織を動かす原動力となる管理職。どうやってその魅力を伝え、務めたいと思ってもらえるか。企業の模索が続いている。

プラント大手「日揮ホールディングス」(神奈川)は22年、一部部署で部長級3人制を導入した。業務を「ビジョンの策定」「人材育成」「プロジェクト管理」に分担。負担が軽減され、仕事の質が向上したという。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20250110-OYT1T50145/

マクロデータで見ると3年内離職率は変らない。その一方で辞めるとなったら1年で辞める人も増えてきている。将来の幹部候補生として期待しても定着しないのであれば、より懐を広くして採用を行なう必要も出てくるのだろう。

○第二新卒、求人2年で2倍 JTB・三菱電機など大手も拡大
2025年1月12日

新卒入社から数年以内で離職する「第二新卒」の求人が急増している。主要転職サイトの求人件数は2年で約2倍になった。少子化で新卒採用が難しくなる一方、ミスマッチなどで離職者は増えており、JTBなど大手が採用を拡大している。新卒一括採用を軸とした雇用慣行は崩れつつある。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC167NY0W4A211C2000000/

大卒一括採用に限界があるのであれば、それ以外の選択肢も考えるべきであろう。

2025/03/02