■人手不足に苦しむ中小企業
2024年問題は、その前の年から問題視されており募集しても応募すらないという惨状は中小企業に対するインタビューなどでも実感する。特に建設土木などは現場監督を担う人がいなければ受注すらできない。運送業などは、ろくに訓練もしていない素人を使う「白トラ」問題さえ引き起こしかねない。
2025年になっても解決することはなく、寧ろ大手企業がこぞって賃上げする余波にさらされ、中小企業はますます苦境に立たされていることは下記に記事でも推察される。
苦しむ中小企業
○ 「無い袖は振れない」中小企業の淘汰進む “従業員退職型”倒産は過去最多に
2025年03月11日
人手不足が深刻化するなか、従業員を自社につなぎとめることができずに経営破たんするケースが急増しているという。調査では、2024年に判明した人手不足倒産342件のうち、従業員や経営幹部などの退職が直接・間接的に起因した従業員退職型の人手不足倒産は87件に上った。前年(67件)から約3割増加。多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年(71件)を大幅に上回って、集計可能な2013年以降で最多を更新している。
中小企業を中心に、満足に賃上げされないことや、待遇改善に消極的な経営に嫌気がさした役員や従業員が退職するなど、「待遇改善をしないことへのリスク」が高まっているという。
https://ascii.jp/elem/000/004/256/4256421/
中小企業は他に解決策はないのだろうか。
■中小企業のM&Aの状況
中小企業庁はその他のデータではM&Aに関して以下のような状況であることが示されている。
1. 中小企業のM&A件数の推移
中小企業庁の報告によれば、2018年から2020年にかけて、中小企業のM&A件数は増加しており、具体的な数値は以下のとおり。
2018年: 2,000件
2019年: 2,400件
2020年: 2,800件
この増加傾向は、少子高齢化や後継者不足などの課題に直面する中小企業が、事業承継の手段としてM&Aを選択するケースが増えていることが背景にあると思われる。
2. M&Aの主な理由
中小企業がM&Aを選択する主な理由として、以下が挙げられる。
①後継者不足: 経営者の高齢化に伴い、後継者が見つからないケースが増加している。
②事業拡大: 新たな市場や技術の獲得を目的として、他社との統合を図るケースがある。
③経営資源の強化: 人材や資金、技術力の強化を目的としてM&Aを行う企業もあります。
これに加え人手不足によるリスクに対応するためにM&Aを選択するという傾向も見て取れるとのことである。
①事業継続の困難化:
人手不足により、企業は業務運営やサービス提供に支障をきたすことが増えている。これにより、事業の継続が難しくなり、M&Aを通じて他社との統合や事業譲渡を検討する企業が増加している事がうかがえる。
②倒産リスクの増加:
人手不足は、過重労働や従業員の離職率増加を招き、最終的には企業の倒産リスクを高める。これを回避する手段として、M&Aが選択されるケースが増えている。
それでも、M&Aが人手不足倒産の切り札になっていないと思われるのは、こうした事例が少ないことや現実問題として簡単にM&Aが進まないという現状もあるようだ。
■経営の透明性
簡単にM&Aと言うがハードルはそう簡単では無い。買う方としては「売りっぱなし」は困るわけであり、買う方と売る方が同じ土俵に立つために以下が必要だと言われている。
(1) 財務の透明性を確保する
正確な決算書・帳簿を3年分以上整備する。
「キャッシュフロー」「利益率」「負債状況」などの財務情報を明確にする。「買収側が安心できる財務状況」を示せるようにする。
(2) 取引先・契約関係を整理する
主要な取引先との契約を文書化し、継続の可否を確認する。売却後も取引が維持できるよう、仕入れ先や販売先と事前調整を行う。「M&A後もスムーズに事業が継続できる」状態を作る。
(3) 知的財産やブランド資産を整理する
商標・特許などの知的財産権を適切に登録し、整理する。ブランドの価値を数値化し、M&Aの評価に反映させる。「売れる資産」を明確にする。
(4) 人事・労務の制度を整備する
就業規則、給与体系、雇用契約を明確にする。買収後の労務トラブルを防ぐため、社員とのコミュニケーションを強化する。「買収後の人材流出を防ぐ」ための対策をとる。
(5) 経営者の引退プランを決める
M&A後の「引き継ぎ期間」を決め、段階的に経営を移行する。社長の個人ネットワークに依存しない経営体制を整える。「M&A後のスムーズな経営移行」を設計する。
何のことはない、経営を見える化せよと言うことだ。
もっとも経営不振をもたらす原因の一つは上記ができていないこともある。
M&Aの前にすべきことは「当たり前」のことであろう。
2025/03/23